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8/15_執筆制限時間10分小説【198 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く
「なにがなんでも、どんな手を使っても、転校したほうがいいよ。だけど転校した先でも、イジメられるかどうかは熊谷次第だと思うね」
お前はどこまで行っても、いじめられ続けていろ。自殺なんて許さない。お前は周囲から嫌われて爪弾きにされて、常に辱められて、生まれてきたことを後悔すればいい。
醜いお前が生きているのは、本来許されないんだ。殺されない限りお前は死ぬことを許容されない。苦しめ、苦しめ、苦しめ、苦しみ抜いて生きていけ。
……ぐるぐると渦巻く、呪いの言葉が、すべて自分にはね返っていくのを感じながら、僕はいじのわるいこと思いついた。
「僕に対して謝罪したいのなら、ちょっと僕の言うことを聞いて」
これは命令だ。拒否権なんてない。
熊谷は神妙にうなだれて、ぎゅっと目をつぶって首を縦に振る。どうして、いまさらそんな素直になるんだよ。と叫びそうになるのを堪えながら、僕は母に頼んだ。
「ねぇ、母さん。僕にしたように熊谷にお化粧をして」
「え!」
母は驚いた顔で僕を見るが、僕は真剣そのものだ。
熊谷も驚いて僕を見て、不安げに母を見る。
母は戸惑った様子ながら、熊谷を見ると、そっと白い手が熊谷に伸ばされて、毛むくじゃらの頬を優しく包み込んだ。
恐らく、母にとって無意識の行動だった。
投稿時間:9分54秒