11/13_執筆制限時間10分小説_【327 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く
「正直、俺の方がふつーに生きていることに驚いているよ。学生時代はロクな死に方をしないって、自分でも分かっていたからな」
利喜はそう言って、墓石に手を伸ばし彫り込まれた字面を指で撫でた。墓石には彼の生家の名前が彫られ、横の壁面にはかつて生きていた親類縁者の名前が連なっている。
園生 利信(そのう としのぶ)――利喜の兄であり、園生 緑の父だ。彼の横に並ぶのは、園生 イザベル、園生 緑……福田は字面を眺めて、園生 緑の訃報が届いた三年前を思い出す。
届いた手紙には、葬式は内々ですますことが綴られて、福田を突き放すように、連絡用のメールアドレスが記載されている程度だった。
「緑君が、本当は殺されたって、本当なの?」
「あぁ、それな。なんの根拠があってか分からないけど、そうらしいな。ここが特定されたら、墓が暴かれるだけじゃ、すまされないだろうけど」
そう言って、しゃがみ込む利喜の思いつめた顔からは、暗い後悔が伝わってきて、福田は言いようのない苦しさを覚えた。
投稿時間:9分55秒