11/7_執筆制限時間10分小説_【319 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く
じょー。と、あたりに響く水音とアンモニア臭が、鼻をついた。
僕はハサミを東屋のテーブルに置いて、ペンチを手に持ち変える。五代くんはハサミ。園生くんはいつの間にか、カメラを持っていた。二人が動けなくなったことで、早瀬くんと大川くんも、二人を開放してカッターと彫刻刀を持って薄ら笑いを浮かべる。
「えぇか、あくまで軽めや。本格的にリンチするんには、それなりの場所を用意せなあかんのや」
そう言って、僕たちに自制を呼びかけようとする早瀬くんの声が、怒りと愉悦で震えている。
「わかっている。まぁ、そこそこの傷なら、私が手当てしてしまうけどね」
どこか五代くんの声は、うっとりとした湿った響きを帯びている。
「あーあ。シャベルで殴りたかったのに、これじゃあ、すぐ死んじゃうもんね。残念~」
心底がっかりしている園生くんは、黒い目を愉快に細めた。
「弱い奴をイジメるのは気が乗らないけど、お前らは別だ」
大川くんの低い声には、強い怒気を含が含まれていて、言い訳も許しも、受け付けない意志の強さが見えている。
「大丈夫、殺さないから。ただ、しばらく授業に出られないから覚悟してね」
ペンチをカチカチさせて笑う僕は、脅しではなく、本気で暴力を振るえることに喜んで、残酷な期待に胸を弾ませた。
こうして中学時代の僕たちは、二人の人間を廃人に追い込んだ。
投稿時間:9分53秒