【書き出し用】年単位で放置された18禁_二次創作の続きを書こう2_薄桜鬼_狂咲鬼哭_35日
「はぁ」
千鶴は宿の露天風呂に身を浸した。
雪が降り終えた早朝の空気は、冷たいながらもどこか清々しくて、昨日までの淫獄の日々の差に思わずため息が漏れる。
山稜が赤い朝日に縁どられていく光景を眺めながら、栗色に戻った瞳にまどろみが差し、ぱしゃりと湯を顔にかける。
夜通し風間と睦みあったのだ、肉体が休みたいを嘆くのも仕方がない。
はやく布団の戻ろうと腰をあげた千鶴の身体を、二本の腕が絡みつく。
「まったく、どこに行こうとするのだ。我が妻よ」
「あ、千景さん。おはようございます……ん」
千鶴がいないことで起きだしてきたのだろう。わずかに不機嫌を滲ませた風間の声を受け流し、朝の挨拶をする千鶴の口を風間は塞いだ。
もうどこにも行くな。そんな声が聞こえてくるのは、自分のうぬぼれだろうか。
いいえ、どこにもいきませんよ。と、千鶴も唇を吸うと、抱きしめている腕の力が緩んでいくのを感じる。
そう、もう自分たちはどこにも行かないし、どこにもいけない。
数刻後には、薫が沙汰を下しにやってい来るだろうから、それまでは僅かな自由時間を愉しもう。
これから生まれてくる、我が子の為に。
【了】
ED3「雪割の花、散りて」
「つづく」
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