1300冊の本を読んだ結果、人間の特性とは何か①
ヒトは人間になったがゆえに、ここまで繁栄することができた。ただ、このような繁栄につながった人間の性質にこそ、やはり人間特有の苦しみや悩みが表裏一体で存在するのではないだろうか。
意外とこの人間が獲得した性質のデメリット部分は見落とされがちなのではなかろうか。
もし、人間の性質のデメリットも把握し、対処することができたならば、より自分らしく幸福に過ごせるヒントになるのではと思い、改めて人間とは何なのか、読書を参考に考察していきたいと思います。
まず考えていきたいのは、最も人間を人間たらしめているの性質は何かということ。
それは、
強い共感により、物事を交換できる性質
であると考えます。
どういうことか。
例えば、返報の法則(返報性の原理)をご存知でしょうか。
返報の法則とは、相手から何かを受け取ったときに「こちらも同じようにお返しをしないと申し訳ない」という気持ちになる心理効果 のことです。
これは、みなさんも実感として感じているのではないでしょうか。
例えば、職場の同僚からお土産をもらったとき、“何となく自分も次に旅行に行ったときに覚えておかないと”、という風に、時にはちょっと焦ったりすることもあるのではないでしょうか。
または、よくテレビアニメで、「借りは返したぜ」と、普段、一匹狼で行動しているはずのキャラクターでも忘れずに恩を返しているシーンがありますよね(笑)
あとは、鶴の恩返しの昔話もなぜか強く記憶に残りますよね。
このように人間は、物事を交換し合う性質があるように思います。
このことを学んだのは、NHKスペシャル取材班が制作した著書「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」を読んだことがきっかけです。
この本は、いったい人間はどこから来たのか、そして人間特有の性質とは何なのかを、世界的な研究者などを取材しながら迫っていくストーリーとなっています。
この中で、チンパンジーの研究などで世界的権威である京都大学霊長類研究所を取材したときのエピソードが非常に興味深いものでした。
なぜなら、チンパンジーは人間と最も近い種と言われてるからこそ逆に、チンパンジーと人間の差が浮き彫りになることがあるからです。
どのようなことか。それはチンパンジーの利他性に関する研究です。
実験内容としては、チンパンジーがそれぞれに入った隣り合う2つのブースでジュースが用意されており、そのジュースを飲むために、お互いが持つ道具を受け渡ししないといけないというものでした。
チンパンジーが隣りのチンパンジーのために道具を貸す“利他行動”をするのかという検証です。
結果としては、全体の59%で道具の受け渡しが見られたとのことでした。また、その受け渡しの約75%は、相手から要求があって、受け渡しされたとのことです。つまり、相手の状況を見て理解(共感)したというよりは、ダイレクトな要求が行動(受け渡し)につながっている傾向がありそうです。
次に、片方しか道具をもってない状況でも実験を行ったそうです。この場合は、道具を相手に貸しても自分にはメリットがない。そのような状況でも受け渡しがあるかどうかである。
結果としては先の実験と同様に、要求があれば、受け渡しはされたそうです。
しかし、この後の受け渡しされた方のチンパンジーの態度が特徴的だったといいます。
人間であれば、道具を貸してもらったのだから、それによって得られたジュースを相手に分けてもいいんじゃないかと考えると思いますが、チンパンジーにおいては、実際にジュースを分ける行動は一度も見られず、道具を渡してくれた方のチンパンジーを全く気にすることなく飲み干したとのこと。しかも、道具を貸した方は、特にジュースを得られないが、実験を連続しても特に気にすることなく、道具の受け渡しは続いたという。「ジュースを分けてくれないなら、もう道具は貸さない」といったような行動は見られなかったというのだ。
このあたりは、やはり人間とは違う感じがする。
本文より
“じゃあ、全然、状況が分かっていないかというと、決してそうじゃないんです」 状況が分かっているのは明らかだという。もし自分の側に、手の届かないところに食べ物があってステッキを持っていたら、間違いなくすぐにステッキを使って引き寄せる。だから、ステッキがものを引き寄せる便利な道具だということはよく分かっているわけだ。そして、じつは相手が困っているというのもよく分かっている。なぜなら、その困っている側が、「それ、ちょうだい」というように手を差し伸ばして要求すると、「はい、どうぞ」と言わんばかりにステッキを渡すからだ。”
“チンパンジーは、相手が困っているっていうことは分かっていても、「人は人、自分は自分」なのだ。だから、お礼がなくてもいい。借りたほうも「お礼をしなくてはいけない」と思わないし、もらえないほうもジュースを欲しそうな顔はしても、怒ることはない。”
この不思議を追究するために、さらに“500枚のコインの実験”を行ったそうだ。
これは先程と同じブースの実験だが、コインを入れると、相手のブースにリンゴが出るという仕掛けだ。
1枚ずつコインを渡したときは、交互にコインを入れる行動が続いたという。
しかし、500枚のコインをいっぺんに渡すと、続くかなくなってしまったという。
“たいていの場合は、先に入れたほうが積極的なのか、次も入れて相手が再び取る。そこで「あれ?」という感じになる。それでも我慢してもう一度入れるけど、やっぱり相手が取る。相手が返してくれないと、4回目か5回目ぐらいで止まってしまうのだ”そうだ。
交互のことが成立しないというのだ。
これは、最初に述べた、返報性の原理が、チンパンジーには働いていないということを示唆しているのはないか。
つまり、別の言い方をすると、チンパンジーは、恩返しの気持ちがない、相手に共感することができないということではないか。
本文より
“「傍からその状況を見ると、すごく変なんです。だって、チンパンジーってすごく賢いわけでしょう。ほかの課題でも、記憶の課題でも素晴らしい能力を持っている。ルールも十分に理解できるものです。こちらで入れるとあちらで出るっていうだけのことですから。でも、その500枚ずつ持ったチンパンジーが、そこで両竦みになっちゃう」”
これが、最も人間に近い種と言われながら決定的に人間とチンパンジーを分かつ性質ではないか。
次回は、この続きと、なぜこの交換性(専門的には互恵性というらしい)があると人類はこんなにも発展できたのかを考察していきたいと思います。
ここまで閲覧ありがとうございました✨
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