ドラマストア - 手向け
ドラマストアが解散した。
「君を主人公にする音楽」を掲げた大阪発の4人組ポップロックバンドで、出会った2018年から彼らはずっとわたしの側にいた。オープンキャンパスでひとり東北から関西へ向かう夜行バス、不安な心に寄り添ってくれたのは紛れもなくドラマストアだ。大阪に着いて降り立った瞬間の明け方の空と聴いていたあの曲を忘れることはないだろう。
SNSの更新、新譜のリリース、ツアー、YouTubeへの楽曲のアップ。心地良い温度の循環がずっと続くと思っていた。
ここで一つ、どうしても吐き出しておきたい後悔がある。ドラマストアへの愛だけを語って綺麗にまとめては、心がつかえたままだから。
わたしは、2022年の9月まで彼らのライブを観たことがなかった。言い訳をすれば落選が続いていたのだけれど、お金がないから、会場が遠いから、同行者がいないからなどと様々に理由をつけて納得していた。
いつでも会いに行けるし、と心の奥で思っていたから。
だから、【大事なお知らせ】を見た時に動悸がしてすぐにラストツアーの申し込みをした。同じように動いた人が多くて呆気なく落ちた。エゴなのは分かっていたけど、最後にどうしても会いたくて大阪のとある野外フェスに行くことにした。
バンドも、ファンも、最後だと分かっている中でのライブ。彼らの本拠地大阪で、何年も出続けていた大切なフェスで、ドラマストアのタオルを掲げた多くのファンに囲まれて涙を流す彼らを見て、わたしは初めて実感として彼らがどれだけ多くの人に愛されているかを知った。初めて生で観たドラマストアのライブは、悔やんでも悔やみきれないほど楽しく美しく温かいものだった。
ひとつのバンドが終わるということは連載が完結するようなもので、物語に区切りをつけるのは紡いできた彼ら自身で。
完結した一冊の本を大切に手元に残してときどき読み返すように、わたしも彼らと共にありたい。解散しても無くなることはないのだ、と思う。
彼らの決断に対して、納得できなかったり認めたくなかったりする人もいるだろう。それでも、わたしたちはそれぞれの感情を抱えてゆっくり前に進むしかないのだ。だからせめて、イヤホンの中では鳴っていてほしい。ときどきでもいいから、わたしを主人公にしてほしい。
大好きだよ、これからも。
今までありがとう、ドラマストア。
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