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年始の病院が通勤電車だった。

2025年の年明け早々、妻がインフルエンザになった。

元旦に私の実家に2人で出掛けて、気疲れもあってか帰宅後ぐったりとしていたが、翌2日の夕方には38℃の熱が出てしまった。新型コロナウイルスの簡易検査キットがたまたま家にあったので試したところ、陰性。

その時間に空いている病院はなかったので、翌3日に、近くで唯一やっていた発熱外来へタクシーで向かうことに。

行列が人気ラーメン店

クリニックの前にタクシーをつけてもらって仰天。長蛇の列が、外にまで伸びている。ざっと20人くらいは並んでいて、よく見えないが院内まで続いているようだ。

さらに、自動ドアの隣のガラス戸には、「発熱外来の受付は200名までとさせていただきます」の赤い文字。

9時診療開始のところ、私たちがやってきたのは10時過ぎ。診察を受けられるのか、もはやギリギリのラインなのではと不安になりながら列に並ぶ。風が強くてかなり寒い。隣では妻が、ガタガタと震えている。

10分くらい経って、ようやく院内に入ることができた。どうやらこれは、受付待ちの列だったらしい。前には10人くらいの人がいるが、案外早めにいけるかもしれない。

思ったとおり、そこから程なくして受付はできた。保険証を出し、問診票を書いて番号札をもらう。110番台で、安心する。

院内は満員電車

新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に判別できる抗原検査をまずは実施するということで、奥でお待ち下さいと言われる。エントランスからは見えなかったスペースだ。

受付待ちの行列をかき分け、奥へと進んでまた驚く。とんでもない数の人が、うつむき加減でびっしりと座っている。椅子に座れず立っている人も多い。

そこにいる全員がマスクをして苦しそうに咳き込んでいる様は、見るに堪えない。

たまたま空いている席があったので、妻には座ってもらい、私は一旦外に出る。かなり待ちそうだったのと、立っているスペースもほとんどなかったからだ。

やさしい世界

それから50分ほど経過して、名前を呼ばれる。鼻に綿棒のような物を突っ込まれるタイプの検査だ。ほんの1分程度で終了した。

今度は診察まで待機。ところが、先ほどまで座っていた椅子はすでに埋まっている。諦めて立って待とうとすると、外の行列で私たちのすぐ後ろに並んでいた男性が、「俺、次検査だからここ座ってよ」と声をかけてくれる。歩きながら声をかけられたので、咄嗟に固辞してしまった。

そのまま進んで、エントランスに近いところで2人で並んで立っていると、今度は隣の女性が、「あそこ空いたよ!」と教えてくれる。今度は逃すまい。お礼を言い、妻に座ってもらう。

そこにいるほとんどの人が、体調を崩しているはずなのに、明らかに具合が悪そうな妻を見かねてか、親切にしてくれる。まさに優先席を譲ってもらうような感じ。幸先の悪い新年のスタートだと思っていたが、なんだか朗らかな気持ちになった。

妊婦は重症化しやすい

そして診察の結果は、やはりインフルエンザ。妊婦の場合も治療薬であるタミフルは飲んでも問題ないということにはなっているが、医師の先生曰く「自分の家族だったら飲ませない」とのこと。

それ以上の深掘りはしなかったが、そういう見解を持つ人がいる以上、念の為やめておくことに。ロキソニンなどの強い薬や、インフルエンザ特有の体の痛みに対して湿布薬も使えないので、頼れるのはアセトアミノフェン(カロナールという薬)のみ。

胎児への影響や胃への負担が少ないとされる一方、薬の効果としては穏やかであり、妻の場合は持続時間も3時間程度と短かった。高熱、悪寒、全身の痛み、咳、鼻水、頭痛、吐き気など、考えられるあらゆる不調が襲いかかってくるが、カロナールという薄い盾1枚で耐えるしかない。

ピークは3日間ほどで、妻は「人生の体調不良の中で1番辛かった」という。

そこに座ってる人全員インフルです

また案の定、私にも感染した。4日の昼頃に体がだるくなり始め、夜には発熱。2人揃って寝込むことになってしまった。

例のごとく、私も翌朝同じクリニックへ向かう。日曜日ということもあり、近くで診療しているのはこの病院しかなかった。

2日前は結局トータルで4時間ほどかかっていたので、9時の診療開始前に行って並ぼうと思っていたのだが、失敗。またしても到着は10時を過ぎてしまったが、今回は外に伸びる行列はない。

今日は休診だったかとも思ったが、ちゃんとやっていた。ただ、受付の列がたまたま短かっただけで、院内には咳き込む人がこれまたわんさか、所狭しと存在していた。

診察してくれた医師の方によると、「前に並んでいる方、ほぼインフルです」とのこと。例に漏れず、私も陽性。ただし、タミフルや他の薬も飲めるので、思いのほか治りは早く、6日には在宅で仕事ができるようになるまで回復した。

最後の砦

近くの発熱外来は結構リサーチしたが、結局年末年始に開いていたのは今回行ったクリニックのみ。地域の病院同士の持ち回りで、その年の担当が決まっているのかもしれないが、それでも年末年始に体調を崩した人たちのセーフティーネットであることは間違いない。

医師や医療従事者の方々も、ゆっくりと年末年始を過ごしたいはずなのに、スピーディーに、それでいて丁寧に多くの患者に対応してくれていた。本当に感謝しかない。

誰かの仕事や優しさによって人は支えられていることを痛感した、2025年の始まり。

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