【展評】寺沢美遊「BREATH, LIE DOWN EXCEPT FOR DYING IT’S JUST A SCAR」（2025.1.24-2.9｜CALM & PUNK GALLERY）

　傷つき壊れた車の写真だ。痛ましい状態だけれど、妙に色気がある。艶やかでメタリックな外装が破れて中身が見えてしまっている。塗装がこすれて本来見ることがない地肌が出ている。圧倒的な暴力が振るわれたことがあらわになっている。しかし、この傷が他の車にはない唯一無二の個性になっているのだ。この美しさを知ってしまうと本来のキレイな状態の車が画一的でつまらなく感じてしまう。

　けれどこの美しさは危険だ。自分の傷や病気をアイデンティティにしてSNSのプロフィールに載せてしまうような危うさがある。そこから闇落ちした若人を何人見たことか…。壊れた車は早く直すのが本道で、ボロボロがカッコいいからといってそのまま乗り続ければ重大事故になりかねない。人間も似たようなものだろう。治せるうちに治さないと取り返しがつかなくなる。生還した後に傷跡を自慢するために記録を残しておくのはいいかもしれないけどね。生き残っていればそれは勲章になるのだから。

レビュアー：飯島モトハ

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寺沢美遊「BREATH, LIE DOWN EXCEPT FOR DYING IT’S JUST A SCAR」
会期：2025年1月24日（金）〜2月9日（日）
会場：CALM & PUNK GALLERY
関連リンク：https://calmandpunk.com/exhibition/miyuterasawa「breath-lie-down-except-for-dying-its-just-a-scar」/

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