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【2/13まで!】バレエ《くるみ割り人形》 | 英国ロイヤル・バレエ in シネマ


英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ

 『英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ』は、ロンドンの名門劇場ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されるバレエやオペラの公演を、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で楽しめる企画です。舞台裏でのインタビューや特別映像も交え、ライブ観劇とは一味違う体験を提供します。
ロイヤル・オペラ・ハウスは、ロンドンのコヴェント・ガーデンに位置する世界最高峰の歌劇場で、4階建ての円形観客席を有し、席数は2,256席です。ここを本拠地とするロイヤル・バレエとロイヤル・オペラは、いずれも世界的に名高いカンパニーです。

ロイヤル・バレエ

 ロイヤル・バレエは、パリ・オペラ座バレエ団やロシアのマリインスキー・バレエ団などと並び、世界トップクラスのバレエ団の一つとされています。そのレパートリーは、古典バレエの大作から現代の振付家による新作まで幅広く、ロイヤル・オペラ・ハウスでの公演のみならず、テレビや映画館、野外でのパフォーマンスなど多岐にわたります。

ロイヤル・オペラ

 ロイヤル・オペラは、伝統的なオペラ作品の卓越したレパートリーに加え、現代を代表する作曲家たちの新作オペラの上演でも高い評価を得ています。2001年に創設された「ジェット・パーカー ヤングアーティストプログラム」は、才能ある若手音楽家の育成と発表の場を提供し、多くの卒業生が国際的な舞台で活躍しています。

2024/25シーズン

 英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25シーズンのラインナップは以下の通りとなっています。(公式サイト)
各上映期間は基本的に1週間限定です。

1/23までは《不思議の国のアリス》が上映されていました。(TOHO日本橋のみ1/30まで上映延長)
現在は2/7からは2/13まで《くるみ割り人形》(ピーター・ライト版)の上映が行われています。

バレエ《くるみ割り人形》

概要

バレエ《くるみ割り人形》は、全2幕のバレエです。
第1幕は、クララのクリスマスパーティーから始まり、くるみ割り人形との出会い、そしてネズミの王との戦いまでを描きます。
第2幕は、くるみ割り人形が王子に変身し、クララを夢の世界へと連れて行く場面から始まります。

バレエ《くるみ割り人形》は、チャイコフスキーの音楽とホフマンの物語に基づいており、ロシアのバレエダンサー、マリウス・プティパとレフ・イワノフによって振付されました。

あらすじ

クリスマス・イブの夜、シュタールバウム家の賑やかなパーティーが開かれます。

第一幕

第1場:クリスマス・イブの夜

  • シュタールバウム家のクリスマスパーティーが開かれる。

  • 子供たちは、おもちゃやプレゼントに大喜びする。

  • ドロッセルマイヤーおじさんが、子供たちに様々な人形やおもちゃをプレゼントする。

  • ドロッセルマイヤーは、クララにくるみ割り人形をプレゼントする。

  • クララはくるみ割り人形に夢中になるが、兄のフリッツが人形を壊してしまう。

  • ドロッセルマイヤーは壊れた人形を修理し、クララに人形と一緒に眠るように言う。

第2場:クララの夢

  • クララは眠りの中、くるみ割り人形が巨大なネズミの王と戦う夢を見る。

  • くるみ割り人形はネズミの王を倒し、王子に変身する。

  • クララは王子と一緒に、雪の妖精や花の精たちの住む魔法の国へ旅立つ。

第二幕

第1場:お菓子の国

  • クララと王子は、お菓子の国に到着する。

  • 砂糖菓子の妖精やチョコレートの兵隊たちが、クララと王子を歓迎する。

  • クララは、お菓子の国で様々な踊りを楽しむ。

  • 中国の踊り、スペインの踊り、アラビアの踊りなど、各国の踊りが披露される。

第2場:ワルツ

  • 美しいワルツの音楽が流れ、お菓子の国の人々が華麗なワルツを踊る。

  • クララと王子もワルツを踊り、幸せな時間を過ごす。

第3場:グラン・パ・ド・ドゥ

  • クララと王子は、美しいグラン・パ・ド・ドゥを踊る。

  • 2人の愛と喜びが、華麗なダンスで表現される。

フィナーレ

  • クララは夢から覚め、外に出ると見覚えのある若者とすれ違う。

  • その後、ドロッセルマイヤーの部屋にハンス・ピーターが元の姿で帰ってきて、二人は喜びに包まれる。

主な登場人物

  • クララ: 物語の主人公。好奇心旺盛で夢見る少女。

  • くるみ割り人形/王子: クララがもらった人形。ねずみの王と戦い、王子に変身する。

  • ドロッセルマイヤー: クララの叔父。魔法使いのような人物で、クララにくるみ割り人形をプレゼントする。

  • ねずみの王: くるみ割り人形と戦う悪役。

  • お菓子の精: お菓子の国を統治する妖精。

音楽チャイコフスキーの音楽は、バレエのストーリーを鮮やかに表現し、それぞれの場面に合った美しいメロディーが特徴です。特に、花のワルツや雪の精の踊り、スペインの踊り、中国の踊りなど、各国のダンスは、その国の文化を反映した音楽と振り付けで表現されています。

ピーター・ライト版

バレエ《くるみ割り人形》には、さまざまな振付家による多様な演出が存在します。その中でも、ピーター・ライト(Peter Wright)版は、ロイヤル・バレエ団とバーミンガム・ロイヤル・バレエで定番となっている代表的なバージョンです。

特徴

ピーター・ライト版《くるみ割り人形》は、1984年にバーミンガム・ロイヤル・バレエのために初演され、1990年にはロイヤル・バレエ団でも新たに制作されました。

1. 現代的な解釈と幻想的な要素の融合

  • 従来のロマンチックな雰囲気を保ちつつ、視覚的に華やかな舞台美術と衣装を採用。

  • 舞台美術はジュリア・トレヴェルヤン・オーマン(Julia Trevelyan Oman)による19世紀の豪華なデザインだが、演出にはより現代的な視点が取り入れられている。

  • ドロッセルマイヤーがより謎めいた存在として描かれ、魔法的な要素が強調される。

2. クララの成長を重視したストーリーテリング

  • クララが夢の世界で王子と踊るという解釈を採用し、物語全体の主軸をクララの成長に置いている。

  • 伝統的なバージョンでは、クララは子役ダンサーが演じ、第2幕で「金平糖の精」が主役となるが、ライト版ではクララ自身がバレリーナとして踊る。

  • クララの自立した女性像を強調し、より主体的に物語を動かすキャラクターとして描かれる。

3. 振付の革新

  • 従来の古典的なバレエの振付を基本としながらも、より劇的でダイナミックな動きを取り入れている。

  • 特に群舞の場面では、エネルギッシュな振付が特徴。

  • ねずみの王との戦いの場面がリアルで迫力があり、ドラマ性が強化されている。

4. 音楽の活用

  • チャイコフスキーのオリジナル音楽を忠実に使用。

  • 一部の場面では、楽曲のテンポやニュアンスに微調整が加えられ、物語の流れにより合うように演出されている。

他の版

《くるみ割り人形》は、様々な振付家によって様々なバージョンが制作されています。有名なものとしては、以下のものが挙げられます。

1. マリウス・プティパ & レフ・イワノフ版(1892, 初演版)

  • 最も古典的なバージョンで、現在の多くの演出の基礎となっている。

  • 第1幕で子役のクララが登場し、第2幕で「金平糖の精」と王子が主役となる。

  • ストーリーよりも美しいディヴェルティスマン(各国の踊り)を重視。

2. ワシーリー・ワイノーネン版(1934, キーロフ・バレエ / マリインスキー・バレエ)

  • ロシアで最も一般的なバージョン

  • ねずみの王との戦いが短縮され、ディヴェルティスマンが強調される。

  • クララは基本的に子役が演じる。

3. ジョージ・バランシン版(1954, ニューヨーク・シティ・バレエ)

  • アメリカで最も有名なバージョン

  • クララとくるみ割り人形は子役が演じ、夢の世界では「金平糖の精」が主役となる。

  • 第2幕は華やかなディヴェルティスマンが中心。

4. ルドルフ・ヌレエフ版(1967, ロイヤル・スウェーデン・バレエ / 1979, パリ・オペラ座バレエ)

  • 心理的要素を強調した独特の解釈。

  • ドロッセルマイヤーと王子を同一人物として描き、クララの夢の世界と現実の関係をより曖昧にする。

  • クララと王子のロマンスがより強調される。

5. ミハイル・フォーキン版(1919)

  • 人形と人間の境界が曖昧になるような演出が特徴。

  • クララの幻想的な成長と変化がより抽象的に描かれる。

6. アレクセイ・ラトマンスキー版(2010, アメリカン・バレエ・シアター)

  • オリジナル版の楽譜に基づく復元版

  • より速いテンポと軽やかな動きが特徴。

  • コミカルな要素が加えられている。

7. バーバラ・カーンズ版(1994)

  • 現代的なデザインとバレエの融合

  • 舞台美術や衣装にモダンなデザインを採用。

まとめ

ピーター・ライト版《くるみ割り人形》は、原作の幻想的な雰囲気を大切にしながら、クララの成長や物語の流れを重視した演出が特徴です。クララが夢の中で王子と踊るという構成は、従来の「金平糖の精が主役」のバージョンと異なり、より一貫したストーリーテリングを可能にしています。

また、他の版と比較すると、クラシックな要素を残しつつ、現代的な振付や演出を取り入れたバランスの取れた作品となっています。他にも、伝統的なプティパ&イワノフ版、バランシン版(アメリカ向け)、ヌレエフ版(心理的アプローチ)、ラトマンスキー版(復元的アプローチ)など、さまざまな解釈が存在し、それぞれ異なる魅力を持っています。


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