《夏の牧歌》(オネゲル) #ショート解説
今回から新たに #ショート解説 というシリーズを作りました。
このシリーズでは曲の魅力とおもしろさを短時間で読みやすいよう、ぎゅぎゅっと短くまとめてお送りします。
今回解説する曲は、
オネゲル 交響詩《夏の牧歌》
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交響詩《夏の牧歌》
交響詩《夏の牧歌》(Pastorale d'été)はフランス六人組の一人、アルテュール・オネゲル(Arthur Honegger)によって1920年の夏に書かれた曲。この曲が好評を博し、オネゲルは作曲家としての地位を確立しました。
作曲の背景として、オネゲルは詩人アルテュール・ランボーの散文詩集『イリュミナシオン』の「夜明け」という詩の一節「僕は夏の夜明けを抱きしめた」にインスピレーションを受けてこの曲を作曲しています。しかしオネゲルは、この曲を自然描写や文学的な表題音楽ではなく、あくまで純粋な音楽作品として作曲しています。
曲の献呈は、友人であり「六人組の七人目」と言われたロラン=マニュエルにされています。
曲のおもしろいとこ厳選2点
《夏の牧歌》のおもしろポイントを絞るとするなら、
調性(キー)
旋律(メロディー)
の2つです。
調性(キー) 神秘的で厳かな響きの正体
この曲の調性(キー)は何になるでしょうか?
スコアを見てみましょう。
スコアはこちら→ 夏の牧歌スコア(IMSLP)
調号を見てみると#が3つなので、A dur(イ長調, A Major)か?と思いきや違います。
実はこの曲の中心音はA(ラ)ではなくE(ミ)となります。
そして、調性もA dur(イ長調)ではなくEのミクソリディア旋法という、教会旋法というものが使われています。
ホルンのメロディーはA(ラ)の音ではなくE(ミ)の音の音に向かっている。
コントラバスが冒頭から執拗にE(ミ)を弾き続けている。
A(ラ)の長3和音(ラ-ド#-ミ)に解決しない。
ことで、A durではなくEミクソリディア旋法であることがわかります。
ここの詳しい解説は別のショート解説として公開するので、もっと知りたい方はそちらを参照ください。
ここではミクソリディア旋法を
長調っぽい響きをもつ、長調・短調とは別の音階
程度にとらえて頂ければOKです。
このミクソリディア旋法のちょっと聴き慣れない響きのおかげで、曲全体に神秘的で厳かな雰囲気が出ています。
旋律(メロディー) ベト6 《田園》のオマージュ
曲中に出てくるクラリネットのメロディー(譜例1)はベートーヴェン交響曲第6番《田園》のメロディー(譜例2)をオマージュしたものと考えられます。
言われないと分からないレベルですが、たしかに両者を見比べると少し似ています。
調性ではなくメロディーをオマージュしているところがおもしろい
通常、「田園」や「牧歌」のような曲はベト6《田園》以来、F dur(ヘ長調)=《田園》というイメージが定着していますが、オネゲルは調性ではなくメロディーでオマージュしているところがおもしろいですね。
より詳しい解説を読みたい方へ
全音の夏の牧歌のスタディスコアは解説も充実しています。
薄いし安いし、オススメです。
参考・引用
オネゲル《夏の牧歌》 スコア付属解説 (全音楽譜出版社)
ランボー全詩集 (ちくま文庫 宇佐美斉訳)
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