2024 CES探訪
研究開発本部 伊藤、山本、海老原
はじめに
皆さん、新年おめでとうございます。本連載は今年も勢力的に続けますので、よろしくお願いいたします。
さて、シャープのAIチームの一部は今アメリカにおります。そう、CES(Consumer Electronics Show)に参加しているのです。
CES概況
CESについては、すでに多くの記事でその詳細が日本でも報道されていると思いますので、重要な発表などは皆さんも把握されていると思います。同じ内容を共有してもしょうがないので、他の記事であまり触れられてない内容をお伝えしたいと思います。
人:ものすごい人です。マスクをしている人もあまりいません。日本人もかなり来ている印象ですが、韓国、中国も負けず劣らずという感じです。
会場:LasVegasの会議場やホテルを使っています。あちこちに分散しており、移動が大変ですが、従来のモノレール、バスに加え、今年はVegas Loopというトンネルを走行する電気自動車が一部使えるようです。(Vegas Loop — The Boring Company)
CESにおけるAI
今年のCESはEVとAIが大きなウェイトをしめているのはご承知の通りです。
特に、クラウドGPTの代表格であるChatGPTに加え、年末にはGemini Proが加わり競争が一層激しくなっています。
CESでChatGPTを使ったサービスや機器がどのくらい出展されているか、
きっと多くて見るのが大変だと思っていたのですが、予想に反してGPTで代表されるクラウドLLMを活用したものはBMWとAmazonが開発したのAlexa-LLM(ウェイクアップワードを「Alexa」ではなく「BMW」って言っていました)やポータブル要約機などを除き、あまり見られませんでした。どちらかというと、様々な機器にAIを組み込むエッジを意識したものが多かったという印象です。以下に簡単にご紹介します。
まず、PC関係ですが、今年は、小型やノートPCでLLMが動くようになると思われる展示が多かったと思います。nVidia、AMDに加え、Intelも昨年末に発表された「インテルCore Ultraプロセッサー」を搭載したAIをPCの世界にもたらそうとしています。
更に、スマホなどのモバイル機器でもその動きは進んでいます。
Qualcomm:SnapdragonでStable Diffusionを動かすデモを実施。サイズは不明ですが、数秒で絵が生成されておりました。
KNERON社:独自のAIチップを開発する米国のベンチャー企業。これを複数使いした小型のAIサーバを開発中で、GPT3.5相当のLLMがエッジで動いています。速度は少しもっさりする感じですがこのサイズでGPT3.5が動いているのは驚きです。また、AIと組み合わせ可能なカメラも販売しているそうです。
Neuchips:同じく独自のAIチップを開発する台湾の半導体企業。このAIチップを組み込んだPCIeのボードを開発し、Linux環境でLlama2を動作させるデモを行っていました。速度は会話程度の印象です。
その他エッジAIボード:独自のAIボードを開発している企業もそこらで見かけました。(DEEPX, Axerera AI, Panmnesia等) LLMが動くレベルではありませんが、カメラに搭載された画像処理などに搭載されると思われます。
Rabbit R1:実物を見ることができなかったのですが、新しいガジェットの発表があったようです。会話もできて画像も取り込めて、これだけのサイズのものがここまでできる。驚きですし、発売が楽しみです。詳しくは下記リンクの動画をご確認ください。https://youtu.be/nPAcoZplLC4
その他
脳波:AAVAA社が脳波を計測可能なヘッドバンド型のインタフェースデバイスの実演をしていました。頭の角度でマウス移動をし、瞬きでクリックができ、ハンズフリーで画面上のマウス操作をすることができます。また、デモ動画では照明器具の点灯も同様の操作でできていたことから、家電の操作の新たなインタフェースとして「脳波」が実用化される日が近いかもしれないと感じました。
眼鏡インターフェース:Amazonがメガネフレームを使ったAlexaのインターフェースデバイスを出しましたが、これも盛況でした。眼鏡型デバイスは他にもいろいろ展示されていましたが、会話と連動させるには良いデバイスかと思います。
映像センサー:イメージセンサー内に対象の動きなどを追跡できる機能を組み込むことで、低消費電力化できるイメージセンサーを開発。エッジでも画像入力が増えるので、こういう低消費電力のセンサー技術は大事だなと思いました。
SHARP
手前味噌ですが、シャープもAIアバターとLLMを組み合わせたAI展示をしています。昨年のTech Dayで公開したものに、英語対応したものです。多くの方にCE-LLMを知って頂くことができました。
まとめ
CESにおけるAI関連展示について、ご紹介させて頂きました。エッジで動くハードウェアも徐々にそろってきており、2024年にAIはまた一段先に進む気がします。身の回りにAIが搭載される日もそれほど遠くはない、と感じられる展示会でした。