年アド3級 過去問解説 2021年10月 問‐43.44
こんにちは! うっちーです。
こちらでは、年アド3級の技能・応用編の過去問について、図解もまじえながら話し言葉で解説していきます。用語等の厳密な正確さよりも、ざっくりとしたわかりやすさを重視しております。
あくまでも過去問の解説であり、次回の試験でも同じ論点の問題が出題されるとは限りませんのでご了承ください。
なお、ご購入後にも記事のレイアウトの見直しや内容の追記等の更新を行うことがございます。
2021年10月 問‐43
G子さんおよび子が受給できる遺族給付について、誤っているものを選択する問題です。
(1)寡婦年金の問題ですね。『寡婦』という単語がとっつきにくい感じがするので、ここでは『かふ年金』と書いちゃいます。
例年は「『かふ年金』が受給できるかどうか?」という論点だったのですが…今回は、「遺族基礎年金からすぐに『かふ年金』に切り替わるのか?」ということを聞かれていますね。
これはおそらく、「遺族基礎年金と中高齢寡婦加算の関係」とのひっかけと思われます。『かふ年金』と中高齢寡婦加算はこんがらがりやすいですからね。
まず、遺族基礎年金の受給権が消滅するのは、長男が満20歳に達したときです。((3)の解説で説明します。)
長男(障害等級2級)は平成19年5月生まれで現在14歳ですから、あと6年ほどで20歳になります。
そのときにG子さんが60歳以上になっているのであれば、遺族基礎年金が終了した後にすぐ『かふ年金』の受給がはじまります。
昭和48年6月生まれのG子さんは、令和3年10月試験当時48歳です。(R3+93→S96-S48=48)60歳になるにはまだ12年ほどあります。
今回のケースでは下の図☟のように、すべての子が子の要件から外れて遺族基礎年金が終了(受給権が消滅)した後に、しばらく空白期間があってから『かふ年金』の受給が始まることになりますね。
よって(1)の選択肢は誤りです。
仮に、妻が60歳以上になってから遺族基礎年金の受給権が消滅した場合は、他の要件がそろっていれば設問のように遺族基礎年金の終了月の翌月分から『かふ年金』を受給できます。
(1)は ✕
(2)死亡一時金は、国民年金のかけすて防止のようなものです。そして遺族基礎年金が支給されるときには、死亡一時金は支給されません←重要!!
G子さんに遺族基礎年金が支給されないと問題が成立しないので、G子さんには3名の子がいて、夫の死亡によって遺族基礎年金が支給されます。
ということは、問題の設計上この設問で死亡一時金が支給されることはありえないと考えることができます。
そのため、選択肢は次の処理でさくっと処理できます!!
今回は「支給されない」と書いてあるので正しいですね
(2)は ○
(3)すべての子が子の要件から外れると、遺族基礎年金の受給権は消滅します。そしてG子さんには3名の子がいます。
長男と次男、「子の要件から外れるのはどちらが後か」が判断できれば答えられます。
長男が20歳に達する時期の方が後なので、問題文は正しいです。
(3)は ○
(4)G子さんが遺族基礎年金を受給できる場合、子に対する遺族基礎年金はどうなるのか?という問いですね。
子の加算額について、「約22万が上の子に、約22万が2番目の子に支給される…」というイメージでとらえてしまいがちになるのですが、そうではなくて、基本部分(約78万)+子の加算額がまるっと配偶者に支給されます。
子にも受給権はあるのですが、配偶者が受給している間は、子に対する遺族基礎年金は全額が支給停止されている状態です。
(4)は ○
(5)G子さんが再婚すると、G子さんが遺族基礎年金を受給する権利は失権するのですが、子の遺族基礎年金は失権しません。
(5)は ○
下の図でまとめておきます。年アド3級の対策としては、妻(夫)が再婚した場合、遺族基礎年金の受給権について「妻(夫)は失権するが、子は失権しない」ところまで押さえておけばOKです。
問43の正解は(1)です。
2021年10月 問‐44
G子さんおよび子が受給できる遺族厚生年金に関するアドバイスついて、正しいものを選択する問題です。
(1)”遺族”基礎年金と”遺族”厚生年金のように、同じ支給事由の年金は併給されます。
(1)は ✕
(2)遺族厚生年金の年金額が300月みなしで計算されるかどうかという問題。これは、死亡した夫の要件が『短期要件』に該当するかどうかが問われています。
短期要件を確認しましょう☟
事例を見ると夫の死亡日は令和3年9月30日です。このとき夫は国民年金なので、①には該当しません。
夫の病気の初診日は令和元年2月8日で、このとき夫は厚生年金に加入しています。ということは、死亡したのがその日から5年以内であれば、②に該当します。
死亡日である令和3年9月30日は、令和元年2月8日から数えて5年以内ですので、②の要件にあてはまっています。
よって短期要件に該当し、遺族厚生年金は300月みなしで計算されます。
(2)は ○
(3)中高齢寡婦加算の問題です。単語が長くて字面が硬いので、ここでは略して『かふ加算』と呼びます。
この選択肢、例年は「かふ加算が加算されるかどうか?」だけが論点だったのですが、今回は「かふ加算の額」まで問われています。新傾向の論点ですし、ちょっと難しかったです。
まずは、そもそも今回の事例で『かふ加算』が加算されるかどうかを見てみましょう。
遺族厚生年金が短期要件ですので、夫の厚生年金保険の被保険者期間の月数に関わらず『かふ加算』が加算されます。
次に、『かふ加算』の額を確認します。
780,900円(令和3年度価額) × 3/4 = 585,675円
かふ加算は100円未満を四捨五入→ 585,700円
586,300円という加算額は誤りです。
R3年度の『かふ加算』の金額を暗記していなくても、『×3/4』がわかっていればその場で計算することでなんとか解ける問題です。
仮にこの選択肢が解けなかったとしても、他の4つの選択肢を確実に正誤判断していけば解ける設問になっていました。
(3)は ✕
(4)G子さんが厚生年金に加入して働いたとしても、遺族厚生年金は支給停止されません!障害厚生年金の問題でも似た問題が出ます。年アドはこの論点が好きみたいです。
支給停止関係では、「遺族厚生年金が妻に支給されている間は、子に対する遺族厚生年金は全額支給停止される」というのもよく出ますので、合わせて押さえておくといいですよ。
「G子さんに対する遺族厚生年金が支給停止される」というのは誤りです。
(4)は ✕
(5)『かふ加算』の支給期間は65歳に達するまでの間です。65歳になると老齢基礎年金の支給がはじまるため、『かふ加算』は加算されなくなります。
G子さんの事例に似たパターンがこちら☟
全体の流れを見ていくと、夫の死亡時に妻が40歳以上で、なおかつ子がいて遺族基礎年金が支給される場合は、遺族基礎年金が支給されている間は『かふ加算』は支給停止。その後、年月を経て子が子の要件から外れたときに『かふ加算』がはじまります。
そして、妻が65歳になって自分の老齢基礎年金の受給がはじまるときに『かふ加算』は終了となります。
よって「中高齢寡婦加算が加算された遺族厚生年金を生涯受給できる」というのは誤りです。
ちなみに、遺族厚生年金本体は基本的に生涯受給できます(妻の年齢によって例外もあります)。
(5)は ✕
問44の正解は(2)ですね!
まとめ
遺族年金関係の問題では、寡婦年金と中高齢寡婦加算がごっちゃにならないようにしっかり押さえ分けしておくといいですよ。字面が難しく感じたら、今回の解説のように自分なりの呼び方で呼んじゃいましょう!
また、遺族厚生年金については、障害厚生年金とちがって短期要件・長期要件によって扱いが変わります。技能・応用編では次の押さえ分けで対処できます。
以上、問‐43・44の解説でした。
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