悪逆 黒川博行 読書感想 ネタバレ有
面白い。これに尽きる。
600ページ近くあるけど、グイグイ読ませる作品。
さすが黒川作品としか言いようがない。
テンポ良い関西弁の捜査官2人。
コンビが飯を食う描写というのは、この作者の作品には欠かせない描写。
ヤクザも刑事も男女も飯を食べる回数を重ねる事でお互いを理解していく。
酒を飲むだけでお互いを分かってはいけない。
元キレ者刑事で退職し、今は探偵社の社長が綿密に計画を練って
行動確認をして悪い金を稼いだマルチの親玉や過払い請求弁護士事務所を
計画破産させた絵図を描いた奴、新興カルト宗教の宗務総長を殺害した上
金塊や大量の現金を奪う。何故ここまで金を集めるのかの理由付け描写は
無かった気もするし、執着する理由も無かった気がする。
バレないように監視カメラや指紋掌紋に気を配って、印字の無い金塊の
売却金を道具屋から買い取ったトバシの口座へ入金して、それぞれを
また別の口座へ送金して、コンビニATMから引き出す段階でボロボロと
ボロが出てきたり、偽装ナンバーで使用した車の売却からメクれたりと
何故その段階での詰めの荒さが出てくるのかと、やや不思議でもある。
大金を目の前にしてしまった興奮なのか、元来の性分なのか…。
また、血迷ったのか客観的に周りが見えなくなってしまったのか
更に殺人を重ねてしまう愚行に出てしまうのも、何かこの犯人の
精神性に異変が起きてしまったのかと考えてしまう。
とは言え、そこまで追い詰める刑事達の行動や推理というのも
ちゃんと描かれており、納得の出来る結果になっていくのも面白い。
すわ逃亡成功か、という場面での気持ちを逸らせる描写は流石の
臨場感としか言いようがない。この追い込まれた、追い詰めた時の描写が
黒川作品の醍醐味ではないかと個人的に思ってる。
非常に面白い作品なので文庫サイズが出たら本棚に置きたい作品である。