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【シェアエコ論点解説】 資金決済法 × シェアリングエコノミー
こんにちは。シェアリングエコノミー認証制度統括ディレクターの石原です。弁護士として、規制などシェアリングエコノミーに関する法的な問題を扱っています。
今回は、シェアリングエコノミー界隈で最近話題となった「資金決済法」について解説をしたいと思います。シェアリングエコノミーのビジネスモデルとは切っても切れない関係にある「決済」。そこにどんな論点があるのか、ご理解の一助になれば幸いです。
シェアリングエコノミーが絶滅の危機?
5月末、ある報告書のドラフト(「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫ (案)」)が金融審査会の「金融制度スタディ・グループ」から公表されました。
その内容は、シェアリングエコノミーやメルカリなどのフリマアプリを含むEC、クラウドファンディングや投げ銭等、多くのスタートアップに取って非常に大きなインパクトのあるものでした。
C2C型のシェアリングエコノミーのプラットフォームでは、いわゆる「収納代行モデル」によるエスクロー決済により役務等の提供と利用料の支払いの両方をプラットフォームが担保する仕組みを導入しているケースがほとんどです。
今回の報告書ドラフトでは、「プラットフォームが、資金決済法による規制の適用を受ける可能性がある」(より正確には「資金移動業として規制の対象とすることが適当であると考えられる」という文言を踏まえると「規制すべき」という方向性で議論を進める)ことが明らかになった訳です。
仮にシェアリングエコノミーのビジネスが資金決済法の適用を受ける場合、資金移動業登録などが必要になります。しかし、供託金を積む義務などが厳しく課されるため、事実上スタートアップにおいてはビジネス自体を諦めざるを得ない状況に陥る危険性がありました。
経緯と現状は?
そんな中、各種団体の方々から、報告書ドラフトの公表前に、「シェアエコ業界も含まれる大きな論点になりそうなので、実態を聴かせてほしい」とお声掛けいただきました。規制が入った時の影響の大きさや、「エスクロー決済が役務等の提供と利用料の支払いの両方をプラットフォームが担保し、利用者の安全・安心のための方策になっている」ことなどについて意見交換をさせていただきました。
その後、関係者の皆さんのご尽力もあって、自民党金融調査会などでもこの論点が大きくフォーカスされ、結果として、ドラフトの内容が大きく修正されました。
債権者が一般消費者である場合については、一般消費者が「収納代行」業者の信用リスクを負担することとなり、上述のような実質的に個人間送金に該当するようなものは資金移動業として規制対象とすることが適当である。他方で、その他の個人間の「収納代行」については、今後、実態について把握を行い、資金移動業の規制の潜脱と評価されるものはどのようなものかについて、きめ細かに検討していくことが重要である。
その際には、とりわけ、いわゆるエスクローサービスのように、例えば、フリマアプリやシェアリングサービスなどにおいて、利用者保護上、重要な役割を果たしているものについては、そのエコシステムに支障が生じることのないよう特に留意すべきである。
「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告 ≪基本的な考え方≫ (案)
一旦はこれで落ち着いたのですが、金融庁が近年当該事業者が破産等の手続に至った場合の資金保護について懸念を示していたこともまた事実です。
現状の規制の枠組みではなく、新たな届出制による規制のあり方をデザインする等の方法によって、何らかのモニタリングについて今後議論を重ねていく必要があると考えます。
今後の見通しは?
実際のところ、金融庁もイノベーション自体を規制したいという訳ではないと思いますし、今後は現場の意見を丁寧にヒアリングするなど、適切なプロセスを踏みながら進めていただくようお願いする予定です。
今回の議論に協会が関わるきっかけを頂けたのも、きちんと業界ルールを定め、シェアリングエコノミー認証制度を運用してきたからこそだと思います。引き続き、まずはシェアサービスを行う事業者に対して、安心・安全施策の普及啓発を並行して行っていきます。
今後、官民で連携してルールメイクする「共同規制」を行うべく、現場の実態や声を金融庁にお伝えしながら一緒に適切なルールをつくっていきたいと考えています。今後も、動向にご注目いただければ幸いです。