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シェアの「窓」を開けるには/二宮秀彰

こんにちは。シェアリングエコノミー協会事務局の二宮と申します。普段協会では、シェアリングエコノミー認証制度やISO規格の策定といった(どちらかというと小難しめの)ルール作りの業務に関わっています。

今回は、私がシェアリングエコノミーに関心を持った背景と、シェアリングエコノミーを巡るルール作りがなぜ大切なのかについて書きたいと思います。

シェアリングエコノミー=「窓」?

私が個人的にシェアリングエコノミーに興味を持ったきっかけは「地域の魅力の受信・発信に役立つはずだ」と思ったことでした。

突然ですが、私の趣味は国内外を旅行することです。そして、個人的な旅の成功法則のひとつに「現地の友だちにガイドしてもらう」ということがあります。

もちろん知らない土地を一人でぶらつくという楽しみ方もあります。ただ、どうしてもその土地の勝手が分からず、結果的にガイドブックに書いてあるような場所を何時間もかけて巡るということになりがちです。そんなとき、現地の友だちがいれば、宿泊費や移動費も安上がりに済みますし、ありきたりな観光名所巡りをする代わりに地元民しか知らない街の楽しみ方を知ることができます。

その街の楽しみ方は、やはりその街の人がよく知っているもの。地元の人が「普通」だと思っているものほど、旅人の目には面白く映ることが多いと感じています。有名なレストランよりも、地元の人が普段通っている食堂の方が味わい深いものです。

とはいえ、毎度都合よく旅行先に友だちがいるわけではありません。仮にいたとしても都合が合わないかもしれません。そんなときこそ、シェアリングエコノミーの出番です。

シェアリングエコノミーを活用すれば、インターネット上で色んな地元の人と繋がることで、家に泊めてもらったり、街の歴史を教わったり、車に乗せてもらったり、美味しいレストランを見つけてもらったりできます。最近も海外に行く機会がたまたまあったのですが、民泊やライドシェア、旅行ガイドのサービスを使うことで、楽しく、安上がりに過ごすことができました。

逆の視点から考えると、シェアリングエコノミーを通じて、自分たちの地元のことを旅人を紹介することもできます。つまり、自分がサービスの提供者になって、自分たちにとっての「普通」を発信することができるのです。

私自身、副業でゲストハウスで働いているのですが、やはり普段自分たちが使っている地元の居酒屋やカフェ、ご飯屋さんを案内してあげるときに一番楽しんでもらえると感じています。シェアリングエコノミーを使えば、自分の身の回りを小さな魅力を、日本、そして世界に向けて発信することができます。

シェアリングエコノミーとはいわば「窓」です。それを通じてこれまで知らなかった人たちに出会うこともできるし、逆に彼らを迎え入れることもできます。

シェアリングエコノミーはどこへ向かう?

ところで、「シェアリングエコノミー」と聞いて、みなさんはどんなイメージが思い浮かべるでしょうか。個人どうしが民泊などを通じて友達になるような、ポジティブなイメージでしょうか。それとも何らかのトラブルに巻き込まれてしまうような、ネガティブなイメージでしょうか。

実は海外を見たときに、特にヨーロッパでは「シェアリングエコノミー」という言葉が必ずしも肯定的に捉えられているわけではありません。というのも、サービスの運営会社が力が強くなりすぎて、そのユーザーが不利益を被るようなケースが出てきているからです(詳細は、協会の運営にも携わっていただいているマカイラ株式会社の藤井さんの記事に詳しいです)。

その中でも、特に労働問題の議論は苛烈です。イギリスでは、ライドシェアのサービスを使って記者が実際にドライバーをしてみるという潜入ルポが出版されています。正直、あまり楽しい内容ではありませんが、このような副作用もしっかり理解していくことが大切です。

「窓」であるシェアリングエコノミーのサービス。ただ、サービスがどんどん大きくなる中で、運営会社の力が強くなり、窓自身がユーザーをコントロールするようになる可能性に対して危機感が高まりつつあります。

そのような中、どのようなルールが作られるべきか、どのようにユーザーである個人にとって「安心・安全」な状況を作れるかについて色々な議論が進められています。

今後、日本では?

振り返って日本を見てみると、シェアリングエコノミーはまだまだ発展途上で、超巨大で独占的なサービスが存在するわけではありません。そのため、日本ではまだ大きな事故や論争が、少なくとも海外に比べると少ないと言えるのではないでしょうか。逆に言えば、今後の状況の変化によって、シェアリングエコノミーを巡る議論は、どんな方向にも向かう可能性があると言えます。

こうした状況の中、協会では「シェアリングエコノミー認証制度」を通じて、安心・安全なシェアリングエコノミーのサービスを認証する活動を行っています。

この認証制度では、プラットフォームとして備えるべきポイントを可視化し、プラットフォームを審査しています。どのサービスが安心・安全のための仕組みづくりに積極的なサービスなのか、客観的に判断できる環境づくりを進めています。

先日サンフランシスコで行われたビジネスカンファレンスでこの認証制度について紹介したところ、とても大きな反響がありました。アメリカでもプラットフォーム型のサービスへの批判や政府による締め付けが徐々に強まっており、ちょうどサービス運営会社の間で「自主的な規格の開発が必要だ」という機運が高まっていました。

さらに、今年から日本が幹事国となり、「ISO規格」の開発が始まります。これは国際組織であるISOの中で、シェアリングエコノミーに関する国を越えた規格を作るというものです。世界的にみても、シェアリングエコノミーを巡るルール作りは、今まさに加速しているといえるでしょう。

ルール作りは、ユーザー目線で

これを読んでいる方には、シェアリングエコノミーと聞いて「他人と何かをやりとりするのは怖い、怪しい」と考えている人も少なからずいらっしゃるのではと思います。また、漠然とした不安を感じて、何となくサービスの利用に踏み切れていない人もいるかもしれません。

どんな「窓」だったらみんなが安心して使えるようになるのでしょうか。それを支えるのは、まさに不安を感じているユーザーの皆さんの視点です。ルール作りには、ユーザーの目線から厳しくサービスを見る視点が大切になってきます。

今後ルール作りが進んでいく中で、きちんとユーザー個々人の声が反映されていかなければ、ルールも形だけのものになるでしょう。そのためには、個人個人がきちんとシェアリングエコノミーをしっかり理解するとともに、ユーザー同士が繋がり合い、意見を生み出す受け皿があることが大切です。

協会は、個人会員制度「SHARING NEIGHBORS」を開始しました。この制度では、シェアリングエコノミーの様々なサービスやその賢い使い方を紹介しています。まだまだ進化の途中にあるシェアリングエコノミー。しかし、確実に次の社会インフラになるポテンシャルを秘めているでしょう。

まずは、シェアリングエコノミーについてもっと詳しく知ってみませんか。そして、それがどのように自分の生活に取り入れられるのか、シェアリングエコノミーが今後どうあるべきなのか、一緒に考えていきませんか。

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