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プレイフルなコミュニティの運営に大事なことは?「シェアビレッジ」の家守が語る村づくりの心得

はじめまして、共創型コミュニティづくりをすすめるプラットフォーム「シェアビレッジ」でCommunity Organizerを務める半田理人です。

2015年に秋田県五城目町でスタートした、シェアビレッジ。私は、シェアビレッジ町村の家守として、オンラインとオフラインを混ぜたコミュニティを運営してきました。

この5年で経験してきたことを振り返りながら、コミュニティ運営におけるヒントを共有できたらと思います。

地域にダイブして全力でコミュニティを運営

シェアビレッジが始まった2015年、私は栃木県で地域医療の人材育成に特化した教育機関において、人事部門に所属していました。「へき地医療」の担い手として総合医を育成し、地域に派遣するための事務とコーディネートを仕事にしていました。今思えば、当時の自分の視点は「中央」から「地方」を見ていたのだと思います。

視点が変わったのは、SNSで丑田さんの活動を知ったことがきっかけでした。地域に入り込んで、地方からインパクトを出す活動のあり方に興味を持つようになりました。五城目町の隣町である井川町の出身だった自分が、地元との関わり方を考えてみたいなと思っていた時に、シェアビレッジが立ち上がりました。

シェアビレッジは会費である「年貢」を納めることで「村民」になれたので、ラッキーなことに接点を持ちやすかったのです。村民になった後、イベントで丑田さんに初めてお会いして会話していくなかで、「そうか、地元で働くことを考える時に、自分たちで仕事をつくるという選択肢もあるな」と視野が広がりました。

シェアビレッジが始まって3ヶ月ほど経った2015年8月。ご縁が繋がり、五城目町の町村集落に移住して、拠点である古民家に住みながらコミュニティ運営を担当するシェアビレッジの家守(※家の番をすること。 また、その人)になりました。家守を目指していたというより、そのとき自分に合う仕事がそれだったから、というのが大きいです。

集落での古民家暮らしが始まり、かつこれまでと全く違う仕事に就きました。暮らしの土台をつくりつつ、地域コミュニティとの関わり方を考える。古民家のご近所のみなさんに顔を覚えてもらうことも大切でした。まずは、生活することでいっぱいいっぱいでした。

慣れない環境の中、家守の仕事であるコミュニティ運営もしなければなりません。当時、クラウドファンディングをきっかけに集まった村民は約800人。五城目にあるリアルな場所である古民家の運営・管理と、インターネットでつながったオンラインのコミュニティ運営の両立に戸惑いました。

特に苦労したのが、オンラインでのコミュニティ運営。800人を超える村民の方々のうち、リアルでお会いしたことがある方のほうが少数。自分が関係を築けていない特定多数に向けて情報発信することに対して、「本当にこれが求められているのだろうか?これでいいのか?」と敏感になっていました。

正直、今思い出してみても、初期は特に、うまくコミュニティ運営できていた自信はありません。このとき、自分を苦しめていたのは「自分がなんとかしないと」と、背負い込んでしまうマインドセットだったように思います。

また、山間の古民家を舞台としていると自然とのやりとりも難しく、「村民の人たちに楽しんでもらおう!」と頑張ってイベントを企画しても、天候が優れなくて中止になってしまうことも多くありました。「せっかく五城目までお越しいただいたのに、何もお届けできなかった」と、自分を責めたこともありました。

点から線へ。提供から共創へ。変化していった運営の姿勢

五城目の拠点を中心としたコミュニティ運営に割けるリソースは基本的に自分1人。最初は、自分1人で村民と地域からの期待それぞれに100%応えないといけない、と力んでいましたが、次第に、制約のなかで自分の気持ちを大切にしながら、どうプレイフルに運営していくかを考えるようになりました。

イベントや情報発信の考え方も変わりました。主催するイベントだけで村民に楽しんでもらうのではなく、訪れた人の興味関心や季節に合わせて、滞在をコーディネートするスタイルに変更したんです。

周辺の散歩をしながら集落の歴史を話したり、ご近所さんとのお茶会に混ぜてもらったり、同年代の仲間との飲み会に連れて行ったり。産直や五城目町の朝市での買い出しから郷土料理作り体験を行うなどもしました。

主催するイベントは、お祭りや酒造の蔵開きといった、地域のハレの日のタイミングに合わせて企画することと、地域内での困りごとへ助太刀する形で企画することを意識しました。

お神輿助太刀

具体的な助太刀企画としては、高齢化で引き手が足りなくて存続できない状態だった集落のお神輿行事の引き手を村民から募って賑やかしたり、手間がかかる山菜の下ごしらえや野菜の収穫を手伝うなど。地域と無理なく関わりながら、共に体験を創るようなあり方を模索しました。

自分1人で提供出来ることの限界を認めて、頑張りすぎず、周りの人や営み、風土に適度に依存していくことが、シェアビレッジのコンテンツを耕していく。頭では理解してはいてもなかなかできていなかったのですが、一人ではどうしようもないことばかりだった中で、自然とそうなっていきました。こうして自分の弱さを認めたり、それを共有することは、元々村民が主体的に参加するコミュニティとして立ち上がっていたからこそできたアプローチかもしれません。

情報発信もしっかりと準備した「点」の情報を届けるよりも、たわいないことでも発信していく「線」の情報発信を心がけるようになりました。なにかニュースがあったときにだけ発信していたところを、地域の方々とのなにげないやりとりや、古民家での暮らしなど日常を共有するような発信にシフトしていきました。

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プレイフルに向き合うようになって、周囲の環境を頼るようになってからは、随分と楽になりました。ただ、自分が勝手になんとしても期待に応えないといけない、と思い込んでいただけで、元々シェアビレッジは、「相互扶助」の考え方がのベースになっていたんです。

小さな集落や自治体において、相互扶助の精神で助け合う「結(ゆい)」というものがあります。「年貢を納めて村民になろう」から始まるシェアビレッジの仕組みは、この「結」がベースにある。これを体感できてからは、結が機能している状態をつくり出すために、シェアビレッジの体験を考えるようになっていきました。

村づくりに必要な4つのマインドセット

シェアビレッジでの自身の経験を振り返って、コミュニティ運営を担当する人間が持つと良いだろうマインドセットを4つにまとめました。

・森を見すぎない
・余白をつくる
・資産を管理する
・変化を恐れない

まず、1つめの「森を見すぎない」は、コミュニティ全員に対して一律での対応をするのではなく、興味関心によって関わり方を少しずつ変えていくこと。

最終的に2,000人以上になったシェアビレッジの村民は、興味関心や参加動機は異なります。秋田に訪れる村民のなかでも、古民家が好きなのか、地域の活動に関心があるのか、秋田と関わりがあるのかでも変わってきます。

「全体」のように捉えて、一律で企画立案やコミュニケーションをするのではなく、村民の興味関心を把握しつつ、それぞれに合わせて良い体験を届けられるようにすること。ただ、完全に個別化するのも大変なので、コミュニティの中に存在しているまとまりを捉えて、関わっていくのが良いと思います。

2つめの「余白をつくる」は、おもてなしをしすぎないと言い換えてもいいかもしれません。先述の通り、肩の荷を下ろし、適度に周辺環境に依存することができるようになりました。それ以降、むしろできない自分を表に出して「しょうがないな」と相手が手を差し伸べたくなるような「隙」をつくれるかを意識していました。

完璧な場を用意するのではなく、場づくりをする上で「余白」を残す意識を持つこと。場の運営者ができないことをできないと受け入れつつも、場のメリハリをつけながら外部からの「関わりしろ」をつくる。地域の外から関わる村民が多いシェアビレッジにとっては、これがすごく重要な点でした。

3つめは、「資産を管理する」。シェアビレッジの家守として、古民家を管理すること、地域の情報を把握し、近隣の方々との関係を適度に良好に保つことは欠かさず実施していました。これらが村民の体験に影響する、シェアビレッジの資産だからです。コミュニティにとっての資産を把握してメンテナンスを行い、コミュニティの参加者と適切にマッチングしていくことも管理者にとって大切なこと。

4つめは、「変化を恐れない」こと。これはコミュニティもそうですが、なにより自分自身。家守になってからの5年間は絶えず変化を続けていたと思います。五城目という地域とシェアビレッジというコミュニティが変わりゆく流れのなかに自分の身を置き、眺めて、関わり方のバランスを取る。この対応力が問われた日々でした。変化を続けるコミュニティを管理するためには、自分自身もまた変化を続けなければなりません。そのためには、変化を恐れないこと。

この4つはシェアビレッジの家守として経験したことをまとめたものではありますが、人々が主体的に参加するコミュニティをオーガナイズするためには必要なことだと考えています。

これらのマインドセットを持っていたとしても、様々なことに対応しなければならないコミュニティマネージャーの負担は非常に大きいものです。

「民主的な村のようなコミュニティをつくるための型を提供できないか」

そんな考えのもと、共創型コミュニティづくりをすすめるプラットフォームとして新しくなったシェアビレッジは、民主的なコミュニティを運営する人間にとって必要な機能を提供します。

コミュニティの民主化のために必要な機能を共有したい

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シェアビレッジは、「メンバー募集・管理機能」「サブスクリプション決済機能」「コミュニティウォレット機能」「コミュニティコイン発行機能」「村と村をつなぐ“姉妹村”機能」などを提供する予定です。

コミュニティをつくる上で最もコアな機能になると考えているのが、「メンバー募集・管理機能」です。それぞれの村長となる人が「こんな村をつくりたい」と意思表明し、そこに共感する人が村民として集まるための場所をつくり、集まってきた人たちとスムーズに連絡をとるための機能。

クラウドファンディングのようなサイトがイメージに近いかもしれません。運営でも、実行者をフォローするキュレーターのような役割を設け、募集のランディングページをどう設計するか、どのような参加プランを用意するか、どう拡散するかといったことを村長と一緒に考えながら伴走していくイメージです。

「サブスクリプション決済機能」は、シェアビレッジでいう「年貢」のように村に参加した際に支払う会費を決済するための機能です。これまでは「メンバー募集・管理機能」「サブスクリプション決済機能」を別のサービスを組み合わせて使用していたため、それだけでも一苦労でした。一つのプラットフォームでまとめて対応できるようになることで、管理者の負担はかなり減ると思います。

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プラットフォームの機能として注目なのは、「コミュニティウォレット機能」「コミュニティコイン発行機能」です。集めてきたお金の支出を可視化して、それぞれのコミュニティで使えるコインを自由に発行し、コミュニティ内での贈与経済を回すために使える仕組みになります。コミュニティへの参加費を支払っていると、コインが付与され、そのコインを使って共同資産である「コモンズ」の利用などに充当できます。

たとえば、コミュニティでシェアしているキッチンや山などのコモンズを利用する際はコインで支払ったり、コミュニティの活動に貢献してくれた人にお礼として贈与したりできます。コインは蓄積はできず、一定期間内に使用しなければなりません。そうすることで、コインはコミュニティのなかで循環し、関係を耕すために使われていきます。

また、ひとつの村だけでいろんなコモンズを持ち、参加者を増やそうとすると、拡大しなければいけません。ただ、そうすると手触り感のある、顔の見えるコミュニティの状態を維持することは難しくなります。コミュニティの核となる価値を大事にしながら、それ以外の価値を他のコミュニティと交換するための機能が「村と村をつなぐ“姉妹村”機能」です。ひとつの村内だけでなく、姉妹村になったところでは相手のコミュニティのメンバーが閲覧できたり、村を超えてコインをプレゼントできたりします。

これらの機能を使って、村的なコミュニティが増えていくことで、複数のコミュニティに属して、それぞれのコインを活用しながら自分の暮らしを形作っていく感覚が育まれていくのではないかと期待しています。

これらの機能は、ほんの一部。今後、運営をしていくなかで、様々な機能が必要になると思います。ただ、僕たちはシェアビレッジのプラットフォーム自体も、余白を持って参加型で運営していきたいと考えています。今後、シェアビレッジに誕生する村を運営する人たちと共に、新しい機能も作っていきたいと思います。

全国に村的なコミュニティを増やすために

私は、家守としてコミュニティ運営に従事しながら、時折孤独を感じていました。新しくなったシェアビレッジでは、機能の提供はもちろん、実際に場を運営する人どうしが場づくりの知見を分かち合えて、運営に必要な感覚を一緒に養えるようにしていきたいと考えています。

シェアビレッジのリニューアルは、村的なコミュニティを日本各地に増やしていくための新たなスタートです。共創型コミュニティに関するアイデアを持っている人は、ぜひご連絡ください。

皆で持ち寄って育む、“村”のようなコミュニティをつくってみませんか?

コミュニティをつくりたい方、コミュニティに参加したい方はホームページをご覧ください!


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