見出し画像

プレイフルな社会的インパクト創出を考える。シェアビレッジが挑戦する多様な幸せに向き合う評価モデルの発明

こんにちは。シェアビレッジ COOの小原祥嵩です。

これまで10年近く、東南アジアやアフリカの新興国をフィールドにリーダー育成や組織変革を生業にしてきました。今は各地を飛び回っていた暮らしを一休みし、シェアビレッジ本社のある秋田県は五城目町を根城に、シェアビレッジの立ち上げに注力しています。

「村つくろう!」の掛け声で走り始めたばかりのシェアビレッジですが、休眠預金等活用制度「地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業」として採択していただき、3年間の支援をいただくこととなりました。

本稿ではシェアビレッジが事業を通じて創出を目指す社会的インパクトについて、お話ししたいと思います。

画像5

シェアビレッジの拠点のある五城目町のシンボル「森山」をのぞむ

シェアビレッジが創出する社会的インパクトとは?

休眠預金等活用制度「地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業」への採択の結果が出たあと、同制度の資金分配団体であり我々に伴走してくださるSIIF | 一般財団法人 社会変革推進財団のみなさんと、シェアビレッジの事業を通じた社会的インパクトは何か?を議論してきました。

事業を通じて解決に取り組む社会の痛みは何か、痛みが癒された時に受益者となるのは誰か、そのために何をするのかを言語化する作業でした。結果、以下のような整理に辿り着きました。

画像1

この整理を土台に、シェアビレッジの事業が本当にこの設定した社会課題の解決につながるのか?その結果、立ち現れてくる未来とはどんな姿なのか?といった未来への道筋も整理していきました。

社会的インパクトを評価する際に用いられる「ロジックモデル」というツールを使って、シェアビレッジの社会に対する影響、未来の姿を明文化しました。まだ、一旦形になった段階ですが、それでも今後の事業のいわばコンパスや地図を手に入れることができたのです。

画像2

ロジックモデル

シェアビレッジのロジックモデルでは、村長をはじめとしたさまざまな人々が各地にある遊休資産の利活用に主体的、自律的に関わっていくことで、関わる人々が自らの遊び心を発揮できる生き方とその仲間を得られる。

そして、そんな人々の遊び心が伝搬し、また遊休化していた資産がまたいきいきと人々をつなぎ、その土地を生かしていく。そんな物語を描いています。今後は描いたロジックに基づいて、目指す状態を測る定量的・定性的な指標を置き、継続してモニタしていくことになります。

Not イシュードリブン、 But プレイフルドリブンな僕ら

と、ロジックモデルについてお伝えしたものの、シェアビレッジの成り立ちとこの社会課題解決によってインパクトを創出するというアプローチは、正直なところ「後付け」と言えるものでした。

一般的に社会課題解決、社会的インパクト創出の文脈では、看過できない社会や人々の痛みや問題を見つけ、それを解決しよう、痛みをいやそうという思いに掻き立てられた人が主体となってアクションを起こしていきます。

ところが、シェアビレッジはそもそも「地方をなんとかせねば」「町中で目に付く遊休資産に心を痛め居ても立っても居られない」という動機で立ち上がったわけではありません(もちろん、課題だとは思っていますが、それが主な動機ではありませんでした)。

むしろ、目の前にある空き家や、手付かずに放置されている野山を好きに使っていいんだとしたら、「めちゃくちゃ遊べるやん!」「こんな使い方したい!」という、内側から湧き上がってくる衝動、ある意味自己中心的かつ遊びたいという一心で事業がスタートしています。

画像3

メンバーで渓流釣りに行ったときの写真

従来の社会課題起点のアプローチをイシュードリブンと言うならば、遊び心から始まる我々はプレイフルドリブンです。遊び心全開で声をあげてみると、いろんな方が集まって力を貸してくれたり、一緒に"遊んだり"してくれました。その結果、実は社会にあった痛みも癒されるのではないか、と発見するという順番でした。

従来の社会課題解決、社会的インパクト創出の文脈とは異なるシェアビレッジのアプローチ。国内外を問わずさまざまな社会課題の解決や国際開発の前線に従事されてきたSIIFのみなさんからも「解決しようとしている課題は何ですか?」と何度も聞かれました。ですが、先のような出自の私たちにとっては当初はなかなかピンとこない問いでした。

しかし、繰り返し議論してくことで、我々のスタンスがプレイフルドリブンであるということに共感いただきました。また、我々も遊びを突き抜けることで生み出すことのできる、社会にとってのインパクトを認識できたことは大きな成果でした。

多様な幸せの形を測る、新たなインパクト評価モデルを作れるか

シェアビレッジ、そしてプレイフルドリブンな社会的インパクトの創出。これらの挑戦は、これからの社会にとって必要なインパクト評価モデルを考えることにもつながります。

プレイフルドリブンでスタートしたシェアビレッジが目指すゴールは、一人ひとりが共感でつながったコミュニティに属し、「幸せに生きる」ということ。

「どんな状態が幸せか?」というのは一意には決められませんよね。シェアビレッジが生み出すインパクトというのは、村によって評価指標が変わる可能性がある。というか、変わって然るべきです。

今の時代、「GDPが何%上がった」と言われて、「幸せになった」「暮らしが豊かになった」と感じる人は、少なくとも日本にはいませんよね。そんな白々しい指標ではなく、遊び心を持って、人々の幸せが表出してくる、あるいは実感が伴うようなプレイフルなインパクト評価を生み出していければと思っています。

イシュードリブンでもなく、評価の仕方も多様な幸福のあり方を前提とする社会的インパクトの創出。これは日本だけでなく、もともと自分が活動していた東南アジアやアフリカの新興国においても価値のある取り組みになると考えています。

本稿の冒頭でも触れましたが、私は10年ほど新興国で活動してきました。10年の間に、どの国も変化し、今やどこに行ってもスマホもあるし、コンビニもある。ショッピングセンターに行けば出店しているブランドもだいたい同じ。ベトナムでもカンボジアでもフィリピンでも。同じようなものを食べ、同じようなものを買う。グローバル化によって世界が標準化され、それぞれがもっていた豊かな物語が失われていくように感じています。

画像4

ラオスの未電化地域の農村を訪問した際の一幕

先進国に追いつけ追い越せと死ぬ気で頑張って、車を手に入れた、家を手に入れたとしゃにむに生きていく。そうして手に入れた暮らしは、どこかで見たことのある焼き増し的な暮らし、色のない社会になっていくような気がするんです。それは、本当に彼ら、彼女らが求めていた幸せだったのでしょうか。

今、経済成長を経て、人口減少高齢化社会のフロンティア日本に生きる我々だからこそ、一様な幸せを嵌め込むのではない、新たなモデルや社会への眼差しを投げかけられるに違いないと思っています。

そして、そのプロセスが私たち自身のあり方を見つめ直す機会にもなると思います。

プレイフルドリブンな社会的インパクトの創出を世界に広げていく

事業をスタートするタイミングで、社会的インパクトにつながるロジックモデルを構築できました。これにより、自分たちの活動を評価し対外的に成果を発信していくツールになると同時に、自分たちは当初描いた世界に近づけているか?と問い直すためのリフレクションツールになるだろうと考えています。

今後、シェアビレッジの事業を通したプレイフルドリブンな社会的インパクト創出について継続して発信していきます。そして、国内あるいは国境を超えたさまざまな地域で学び合っていきたいと思っています。様々な地域で、この取り組みが広がっていけば、どういうあり方が幸せだと思っているのかなど、いろんなあり方が創発されることでしょう。

すでに新興国にも貨幣的価値を蓄えることだけが幸せではないという世代が生まれていきます。シェアビレッジの取り組みが、そういう人たちとポストコロナの時代のあり方について対話する入り口になればと思います。

まずは、シェアビレッジで遊んでみよう、村に参加してみよう、と思ってくださった方は、ぜひこちらのURLから参加してみてください!


いいなと思ったら応援しよう!