「みんなでつくるプラットフォーム」ってなんだ?猫でもわかる!プラットフォーム・コーポラティズム超入門!
シェアビレッジは「プラットフォーム・コーポラティズム」のモデルケースになっていくことを志向しており、2020年4月のリリースからその実践を重ねてきました。
他方、「プラットフォーム」も「コーポラティズム」も日本語になじんでおらず、ほぐしながら発信していく必要性を感じています。
そこで今回は、澤正輝と丑田俊輔の2人で語りあいながら、猫でもわかるように「プラットフォーム・コーポラティズム」のことを翻訳していこうと思います。
シェアビレッジの葛藤とオリジンへの回帰
澤正輝(以下、澤):今日は「プラットフォーム・コーポラティズム」について、猫でもわかるように翻訳していこうと思います。
シェアビレッジは日本発「プラットフォーム・コーポラティズムの実践モデルケース」を掲げており、noteでも「村づくり民主化宣言」(2020年12月)や「民主的なプラットフォーム運営のあり方『プラットフォーム・コーポラティズム』とはなにか?」(2021年3月)といった記事でレポートしてきました。とはいえ日本語での情報や議論は少なく、「まだまだこれから」という印象です。
プラットフォーム・コーポラティズムと出会うまでの背景をあらためて聞かせてもらえますか?
丑田俊輔(以下、丑田):「村のようなコミュニティをつくろう」。これを合言葉に、秋田の辺境からシェアビレッジは始まりました。
茅葺古民家を舞台に、五城目に住んでいる人もいない人も参加してもらいながら、これまでの共同体の概念を拡張することにチャレンジしてきたんです。
当時から、会員によりよいサービスを提供しようというスタンスではなく、身体を持ち寄りながら茅葺をふきかえたり、知恵をしぼり、おもしろいことをしかけたりしながら、よりよい暮らしを共につくろうとしてきました。
澤:順調な中で出会った感じですか?それとも、ひっかかりやもやもやを感じる中での出会いだったんですか?
丑田:オリジンはそうでしたが、香川県に拠点ができ、会員数が増えたりする中で、もっと会員数を増やし、事業としても伸びていくような取り組みにしたいという思いが自分たちの頭の中で膨らんできました。
事業を持続させるためにお金をめぐらせていくのはもちろん大事です。でも、そこに意識が向かい過ぎると、大切にしていた小さなコミュニティの手触り感は薄れ、会員との関係も生産者と消費者に分かれていってしまう。
葛藤を感じながら、この殻を破らないと、本当に実現したいものにたどりつけないと思うようになり、オリジンにもどってきた感じです。
▷当時の葛藤はこの対談で詳しく語られています。
澤:そこで海外に目を向けたって感じですか?
丑田:中村真広さん(ツクルバ創業者)や塩田元規さん(アカツキ創業者)と話をしていく中で、「資本主義の枠組みに留まらず、創業者が何かを手放してこそおもしろいものが生まれそうだよね」という話になったんです。
eumoの新井和宏さんが協同組合型の株式会社を志向していることを知ったりと、意識を向ければ情報が集まるようになり、咀嚼が進んでいきました。
シェアビレッジを、小さなコミュニティが自律分散的に生まれていくようなプラットフォームにしていくなら、「確かにそっちにふりきったほうがおもしろそうだ」と定めていきました。
澤:自信があった感じです?
丑田:めちゃくちゃあったわけじゃないけど笑。色んな人に壁打ちしてもらう中で、「ふりきっちゃおう」と決めました。
澤:「決めた」って感じだったんですね。
丑田:そっちのほうがおもしろそうというか、わくわくするものがあったんですよね。
海外で話題になりはじめた概念を輸入しよう、というよりは、ありたい姿に忠実になった時に、それがグローバルでも使われてる「プラットフォーム・コーポラティズム」に近かったという感じです。
「プラットフォーム・コーポラティズム」を掲げつつ、それすらも手放していく
澤:「プラットフォーム・コーポラティズム」をどのようなものとして捉えているんですか?
丑田:「みんなでつくるプラットフォーム」。「村」と同じようなもので、それぞれが持ち寄りながら育んでいくものだと思っています。
澤:もうちょっと具体的に言うとしたら?
丑田:すでに使ってくれているコミュニティ・オーナー同士の話し合いはこれからも続いていくといいですよね。シェアビレッジ を一緒に育てていくような関係性がユーザーとの間で続いてほしい。
それぞれの小さなコミュニティの中で起きている物語がシェアされたり、例えばエンジニアが「これ作ってみたんで、みんなで使いましょう!」という感じで、あるコミュニティのナレッジを他のコミュニティでも活用しあい、環境をよりよくしていく。そんなシーンを想像しています。
澤:新しい関係性づくりのようであり、昔ながらのものを思い出すようでもありますね。両方ある感じがしています。
丑田:共同で自治していく感覚は、かつての集落の中ではふつうにあったんでしょうね。
でも、ITのプラットフォームにおいては、自分たちでつくるというよりは、大きなプレイヤーがつくったものを消費者として取捨選択していくほうが強かったんだと思います。そこで働く人もあくまでワーカーであり、みんなで一緒に育てていく感覚も薄かったのかもしれない。
「みんなでつくろう」という気持ちの部分も大事ですが、同じくらい、仕組みの部分も大事。プラットフォームの共有所有権がワーカーとユーザーにもある仕組みとか、システムのAPIを活かして独自の進化をさせるなど、関わる余白がふんだんにあるとか。
両者をつなぎ直していけたらおもしろいかなと思っています。
澤:つなぎ直したその先に、どんな未来が待っていると思いますか?
丑田:それぞれのコミュニティで何が生まれ、プラットフォームで何が実装されていくかの未来予測はしなくてもいい。でも、「あったらいいな」と思ったものは自分たちでつくっていく。それぞれが何かを持ち寄りながら一緒に育てていく。そんな感覚をもった人が増えていけばいいですよね。
そのためのハウとして、協同組合型株式会社としての実践があるかもしれないし、その先に、そうした活動がもっとやりやすくなるような法律ができるかもしれない。
インターネット上の資源や資産をコモンズとして解放する動きは、インターネット社会のひとつの発明だったりするので、いずれはプラットフォームも解放されて、誰のものでもないけど存在している感じになっていけたらいいですよね。
とはいえ、最初からそこまではいかないから、まずは株式会社という、制度をちょっとハックしたような感じで実践を重ねつつ、どこかのタイミングでそれすらも手放していくんだと思います。
澤:そういう意味では、いまも過渡期なんですね。
丑田:そうそう!そうなんですよ!
澤:「プラットフォーム・コーポラティズム」を掲げつつ、いつしかそれすらも手放していく。
再び「ふりきっちゃおう」があるんですね。それを見据えながら、小さな物語や具体的なシーンを一緒につくっていく。
丑田:まさに。
日本発の新しい物語を発信していくために
丑田:「プラットフォーム・コーポラティズム」って、言葉だけで難しいんですよね。
澤:そうなんですよ!「プラットフォーム」も「コーポラティズム」も難しいんですよね。
丑田:生協や組合はよく使うけど、コーポラティズムは日本語に慣れてないんですよね。デジタル・プラットフォームを協同組合型でつくろうとしているだけなんだけど、あんまり慣れないですね。
澤:生協は生協、組合は組合でイメージが固まってますよね。
丑田:海外ほどシェアリング・エコノミーに市場が解放されていないというのもあるんでしょうね。プラットフォームに搾取されていると訴える運動も日本では薄い気がする。だから、アンチテーゼも生まれづらい。
日本の弱みともとれるけど、実は強みでもありますよね。
澤:アンチテーゼではない、二項対立をこえた新しい物語を日本発で出せる可能性を秘めてますよね。それをアジェンダセッティングできるかは問われている気がしますが。
丑田:「そっちのほうが楽しいじゃん」って感じでいきたいですよね。会社経営も、経営者が孤独に向き合いながらよりも、使ってくれる人たちと一緒に育んだほうが、パワーも出てくるし、何より楽しいよねって感じになっていくといいですよね。
澤:「そのほうがいいじゃん」っていうのを浸透させていくのも大事ですよね。
丑田:フルスイングしている人たちがどんどん仲間に加わってくれると、帰納法的に近づいていくと思います。
日本的スタイルなんですよね。つくっていきたいのは。
澤:今日の対話からわかったのは、シェアビレッジはプラットフォーム・コーポラティズムを掲げてはいるけれど、それすらも超越しながら日本的スタイルを発信していこうという運動体なんですね。
こうした大きな流れも意識しつつ、「今日もプレイフルにやろうぜ」って感じがいいですね。
丑田:そうそう。“猫でもわかる“に戻ると、シンプルに「楽しく暮らそう」って感じですね。
皆で持ち寄って育む、“村”のようなコミュニティをつくってみませんか? コミュニティをつくりたい方、コミュニティに参加したい方はホームページをご覧ください!