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民主的なプラットフォーム運営のあり方「プラットフォーム・コーポラティズム」とはなにか?

コミュニティづくりの民主化のためのプラットフォーム『シェアビレッジ』は、「プラットフォーム・コーポラティズム」と呼ばれる概念に基づいて運営しています。

この概念は、これからの社会にとって重要なものになると私たちは考えています。ですが、プラットフォーム・コーポラティズムとはなにか?については、まだまだ日本語の情報が少ない状態。

今回は、プラットフォーム・コーポラティズムの潮流に触れながら、その可能性について紹介していきたいと思います。

巨大プラットフォームがもたらす不公平さへのアンチテーゼ

プラットフォーム・コーポラティズムが注目を集めるようになった背景には、シェアリングエコノミーの勃興があります。AirbnbやUberなど巨大なプラットフォームへと成長したサービスたちはシェアリングエコノミーと呼ばれ、世界中のユーザーに利便性をもたらしました。

一方で、プラットフォームを提供する企業と、プラットフォームを利用して働く個人の間には溝も生まれています。ケン・ローチ監督の社会派映画『家族を想うとき』のなかでは、あるプラットフォームで自営業者として配達業に従事する個人に降りかかる困難が描かれていました。

労働者が自分のスキルや時間を切り売りするプラットフォームがもたらす経済は、「ギグエコノミー」と呼ばれて社会に浸透。この流れはプラットフォームの成長を後押しつつも、新たな課題をもたらします。

「プラットフォームを通じて業務に携わる人々は自営業だ」というのがプラットフォーマーの主張でしたが、徐々に労働者の環境が問題視され、世界各地で争いが起きています。

プラットフォームの繁栄がもたらす弊害は、シェアリングエコノミーの領域に限りません。GAFAに代表されるように巨大なプラットフォームを構築し、莫大な利益を手にする企業は次々と登場しています。

もちろん、プラットフォームとして成長するからこそ、ユーザーやワーカーが得られる便益も向上します。ただ、その裏側には前述のような問題も生じている。次第に、プラットフォーマーに利益が集中し、プラットフォームに参加する人々が搾取されているような構造への疑問が投げかけられるようになりました。

「企業がプラットフォームを所有し、運営すると不公平が生じる。それなら、自分たちでプラットフォームを作って運営したらいいのではないか?」という考え方が登場してきています。プラットフォームをユーザーが自ら所有し、運営する「プラットフォーム・コーポラティズム」です。

民主的なプラットフォーム運営を行う「プラットフォーム・コーポラティズム」

プラットフォーム・コーポラティズムの啓蒙活動を行っているPlatform Cooperativism Consortium (PCC)によれば、「ウェブサイト、アプリ、商品やサービスを販売するビジネスを営むプラットフォームの共有所有権がワーカーとユーザーにあり、民主的な意思決定を行う」ものとして、同概念を説明しています。

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コーポラティズムという言葉は、日本語では「協同主義」「協調主義」などと訳されます。プラットフォーム・コーポラティズムはプラットフォーム・コープとも呼ばれることもあり、「協同組合型のプラットフォーム」と理解するのがわかりやすいかと思います。

ちなみに「プラットフォーム・コーポラティビズム」という表現も見られますが、これは「cooperativism」が「協同組合への組織化の実践」という意味を持つ言葉であるため、プラットフォームを協同組合化していくという意味を持つ言葉だといえます。

少しややこしいですが、プラットフォーム・コーポラティブは協同運営のプラットフォームのことを指し、プラットフォーム・コーポラティビズムはプラットフォームを協同化していく運動のことを指します。

企業が運営するプラットフォームに対して、参加者が所有し、運営する民主的なプラットフォームのあり方が注目されるようになっています。これは、シェアビレッジで継続して発信している「村」の再発明ともつながってきます。

既存サービスを民主的にリプレイス。プラットフォーム・コーポラティズムの実践例

メンバーがプラットフォームを共同で所有し、運営するのがプラットフォーム・コーポラティズム。海外では、こうしたプラットフォーム・コーポラティズムの実践例が登場しています。先述のPCCのサイトからいくつかの事例を見てみましょう。

Stocksy」は、2012年に「平等、リスペクト、公平な利益の分配」を掲げてスタートしたカナダのストックフォトサービス。登録している写真家は、販売された写真の売上の50%を受け取ることができ、Stocksyの決算時に余剰があった場合、その配当を受け取れます。

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スペインの「Mensakas」は、働く人たちが自分たちで運営するデリバリーサービス。2018年4月に立ち上がっていますが、その背景には2017年5月にDeliveroo、Glovo、UberEatsなどのプラットフォーム企業に対して、働く人たちが権利を守るために立ち上がった出来事がありました。ストライキの結果、仕事を解雇された人たちは、自らを雇用するコーポラティブなアプローチをとったのです。

FairBnB」は、名前からも伝わる通り、Airbnbの協同組合版で、部屋レンタルのプラットフォームをホストと近隣住民、地域の事業主などの協同組合により運営しています。ドイツのオンラインマーケットプレイス「Fairmondo」は、販売者と購入者、労働者、出資者の全員が運営に関わっています。

このように、既存のプラットフォームと提供する価値としては変わりませんが、ステークホルダーが協同で所有し、利益の配分などもどこかに偏ることなく、フェアに運営する事例が登場しています。

Savvy Cooperative」は、少しユニーク。Savvy Cooperativeは患者ファーストな環境を作り出すために、患者たちが集まった組合が運営しています。オンラインのプラットフォームを作って運営し、ヘルスケア関連のサービスやプロダクトを作る企業が調査を行うための患者とのマッチングの機会を提供したり、コンサルティングを行ったりしています。

このほか事例のなかには、分散型台帳と呼ばれる「ブロックチェーン」のような技術と合わせて語られるケースも。協同組合版Spotifyと呼ばれる「Resonate」では、ブロックチェーンを使用して支払いの追跡を行い、サービス上の個人データのやり取りを強化しています。

ブロックチェーンは特定の管理者がいなくても取引データの信頼性を保つことができ、非中央集権の仕組みとしても注目されているため、プラットフォーム・コーポラティズムの価値観と相性が良いと考えられます。

テクノロジーを活かしてオルタナティブな経済を社会実装する

日本では、まだプラットフォーム・コーポラティズムの実践例はほとんど存在しません。ただ、この先生まれてくる可能性は十分に考えられます。

日本にも生活協同組合(コープ)のような協同組合は存在し、人々の生活に根ざしています。最近では、働く人びとや市民がみんなで出資し、経営にみんなで参加して、民主的に事業を運営し、責任を分かち合う協同組合「ワーカーズコープ」も登場しました。テクノロジーとの合流は起きていなくとも、協同組合的なアプローチへの揺り戻しは起こり始めています。

この流れは、日本にとどまりません。行き過ぎた資本主義への課題意識や、画一的な価値基準等への違和感などから、これらの協同組合的なアプローチのようにオルタナティブな経済を作り出そうという動きは各地で起こり始めている。こうした消費者や労働者の自主的に運営する新たな経済は「社会的連帯経済」とも呼ばれ、世界中で実践が行われています。

こうしたオルタナティブな経済をつくっていこうとするムーブメントに、テクノロジーがかけ合わさることによって新たな可能性を拓いていこうとする流れのひとつがプラットフォーム・コーポラティズムであるとも言えます。

協同組合的なアプローチはすでに存在している日本では、こうした流れがテクノロジーと合流していくことで今後プラットフォーム・コーポラティズムの実践例は増えていくのではないでしょうか。

そして、その流れは私たちがアプローチしているコミュニティのあり方を再考し、テクノロジーが浸透した時代における村のあり方を捉え直すことにもつながっていくと考えています。

向き合うべきファイナンスやガバナンスの課題も

ただ、プラットフォーム・コーポラティズムは様々な壁があります。ビジネスにとって重要なファイナンスやガバナンスなどの面をどう乗り越えていくかが求められる。シェアビレッジは、初期のファイナンスを乗り越えるために「協同組合型株式会社」と称して、株式会社のルールに則りながらも、議決権を有する普通株式(一人一票)と、議決権を有しない優先株式の二種類の株式を発行しています。

本来であれば、ユーザー一人ひとりが所有者であり、運営者である状態を最初から作り出せるといいのですが、それでは立ち上がりの資金を集めるファイナンスが難しく、またスピードも重要になることも多いビジネス環境において意思決定をしていくことも困難です。そのため、私たちは参加する一人ひとりのオーナーシップを基盤としたプラットフォームの育成の実践を目指しながら、段階的に挑戦していこうとしています。

社会的連帯経済のようなムーブメントは、オルタナティブな経済として広まっていくべきだと考えます。ただ、現在のビジネス環境に合わせた運営の実践知はあまりにも少ないのが現状です。だからこそ、私たちはプレイフルにこの挑戦に取り組むことで、どのような課題や困難があるのかを確かめながら、その経験をシェアしていきたい。

シェアビレッジは、民主的なコミュニティをつくるためのプラットフォームです。そのため、プラットフォームの運営自体も民主的に行っていきたいと考えています。村をつくる村長、村に参加する村民と共に、プラットフォームをつくり、育てていきたい。だから、シェアビレッジでは、プラットフォーム・コーポラティズムの精神を持ち、機能の開発なども参加型で取り組んでいきたいと思います。

シェアビレッジは、日本のプラットフォーム・コーポラティズムの実践者として挑戦していきます。シェアビレッジの所有や運営に参加したいと考える方は、ぜひご一緒しましょう!

皆で持ち寄って育む、“村”のようなコミュニティをつくってみませんか? コミュニティをつくりたい方、コミュニティに参加したい方はホームページをご覧ください!


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