
エストニアと日本の茅葺き古民家を比較してみた
みなさん、あけましておめでとうございます。築143年の茅葺き古民家、シェアビレッジ町村の家守をしている本田です。今年の年末年始は長いお休みだった方が多いかと思いますが、皆さまどのようにお過ごしになられたでしょうか。
私は、年末年始は2週間ほど、ヨーロッパ4カ国(スウェーデン、リトアニア、ラトビア、エストニア)を訪問していました。家守日記第4回目となる今回は、エストニアで見た欧風の茅葺き古民家と日本(シェアビレッジ町村)の茅葺き古民家を比較していきたいと思います。

元々、コロナウイルスが蔓延し始めた2020年にエストニアのタリン大学へ留学予定だったことがきっかけで、訪問したことないのに親近感のあったバルト三国。今回、ようやく足を踏み入れてみよう!と思い色々と調べていると、バルト三国のいくつかの野外博物館で茅葺き古民家を見ることができることが分かりました。
家守となり、ようやく茅葺き古民家を次世代へと残していく立場になったことの実感が湧き始め、他の茅葺き古民家も見てみたいという気持ちがちょうど強まっていた時期でした。
今回は旅の都合上、エストニアの首都タリンにあるエストニア野外博物館の1箇所のみを旅程に組み込むことにしました。

ヨーロッパ北東部のバルト三国の1つ。1991年に旧ソ連から独立した、まだ若い国です。世界最先端のIT大国としても知られており、Skypeを産んだ国として有名です。
エストニアの野外博物館には数多くの茅葺き古民家が残されていました。すべての情報は確認できませんでしたが、確認できたものはどれも1960年前後に他の地域から移設されたものでした。
これから紹介する古民家(複数棟あります)は18世紀後半から19世紀初頭にかけて建てられた茅葺き古民家です。正式には、1986年から1989年にかけて修復したもの。この博物館に移設された多くの茅葺き古民家は1984年に放火で一度焼失してしまったとのことでした。
今回見学したエストニアの茅葺き古民家をじっくり見てみると、シェアビレッジ町村との相違点が数多く見つかりました!

まずは外観。
上のように、壁が木材(丸太をそのまま活用)で作られているものもあれば、下のようなレンガと木材を組み合わせたものもありました。日本の茅葺古民家の多くは木材がベースで、その上から白の漆喰で塗られた壁が多いので、レンガを用いるのはとてもヨーロッパらしい作りだなと思いました。

そして、屋根の厚さもかなり薄く(だいたい3.40cmくらい)なのが印象的でした。シェアビレッジ町村の屋根は少なくともエストニアで見た古民家の2倍はあります。

次は内部を見ていきましょう。ネットで調べてもなかなかお目にかかれない内部。こちらも、シェアビレッジ町村とは違う点が多くあり、とても興味深かったです。

おそらく、私のように茅葺き古民家に日頃から関わっている方でないとなかなか気づかない点かもしれませんが、上記の写真だけで気になったところが4点ありました。
①屋根の木の骨組みがかなりシンプル。
→写真を見ると、エストニアの古民家は横軸の木の骨組みが大部分を占めていますが、シェアビレッジ町村は縦軸の木の骨組みが横軸と同じくらいの間隔であります。特にシェアビレッジ町村に関しては、明治時代から増改築を繰り返してきている家なので、茅葺き職人さん泣かせな屋根とも言われているようです(汗)(うまく言語化できないので、下の写真をご覧ください。)

②茅を平置きしてる?
→こちら、雪が降っていて屋根の外観が見れなかったのでなんとも言えませんが… 上の写真でも分かるように、シェアビレッジ町村だと、紐である程度の茅の束を縛り、さらに紐で茅を骨組みに巻き付けています。
③茅は穂の部分も多く使用している
→以下の写真を見てお分かりの通り、エストニアの茅葺き屋根は茅の穂の部分も多く使用しているようです。シェアビレッジ町村でも、軒の近くは使用しているところもあるようですが、穂は切断して太くてしっかりとした部分を利用してることが多い印象でした。

④茅の種類も違う
→種類までは何かわかりませんでしたが、シェアビレッジ町村よりも細い茅を使用していました。
最後に、おしゃれな装飾が施された茅葺き古民家の屋根も紹介させてください。

見れば見るほど、「こんなにも違うものなのか!」と思い、心の中がどんどんウキウキになっていく私。茅葺き古民家ヲタクになりそうな気配がしています。

正直、まだ白川郷などの日本の茅葺き古民家でさえも、実際に見たことがないので、これをきっかけに、国内外の様々な茅葺き古民家を見学に行く機会を少しずつ設けていきたいと考えています。また、次回は直接気になった点をどんどん質問できるような方がいらっしゃる茅葺き古民家に遊びにいきたいな…とも思います。エストニアの茅葺き古民家で聞きたいことが山ほど出てきてしまったので(笑)
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
もしよろしければ過去の記事もぜひお読みください。