コミュニティを「ひらく」と「ひらかない」の間
コミュニティを「つくる」と「つくらない」の間、の続編。今回は、「ひらく」と「ひらかない」の間。
前回は、「「つくる」のも「つくらない」のも、どっちが正解だ!ってこともない。自分たちのあり方次第だ」「その「間」にある曖昧さを美味しく噛み締めていこう」というゆるふわ系結論だったが、先に言うと今回もそんな話だ。
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執筆:丑田俊輔(シェアビレッジ代表)
排除性と競合性の間のグレーゾーン
コモンズやコミュニティの話をする時、特にアカデミックで使われる二つの軸「排除性」と「競合性」。
ざっくりいうと、対象とする資源について、利用できる人を制限できるか?、誰かが利用すると他の人が使えなくなるか?という視点。
これに基づいた整理では、図の右上から、「私有財」「共有財」「公共財」「クラブ財」と定義される。(詳細はここでは割愛)
この「共有財」を狭義のコモンズとして捉え、誰もが限られた資源にアクセスできる状態において、時に倫理が働かず使い尽くしてしまう可能性がある=コモンズの悲劇、と言われたりする。牧草地の草を早い者勝ちで食べ尽くしてしまう事例は有名だ。
これに対して、より広義のコモンズ論、例えば日本的なコモンズとしての「入会地」は、集落の構成メンバーで共同利用・管理しているという点で、ある程度の排除性を前提としている。
(集落というコミュニティは、コモンズを自治するための膜のようなもの)
近年は、集落の構成メンバーの高齢化や、資源の私有化・民営化も進んできて、こうした領域は縮小してきてはいる。と同時に、住民票や従来の参加ルールにとどまらないメンバーシップ(明確なメンバーシップ化しないケースも含めて)へと拡張することで、排除性を緩和させていく変化も各地で起きている。
競合性については、からなずしも全てがゼロサムではなく、例えば山を手入れすることで資源が豊かになっていくような(リジェネラティブと呼ばれることも)こともある。短期的な利用の視点にとどまらず、コミュニティで中長期な眼差しをもって自治していくことは、コモンズの悲劇を引き起こさないキーワードでもある。
そう、この2つの軸でパキッと白黒つけた世界でなく、それぞれの間=グレーゾーンにこそ、まだまだ発明しがいのある面白さがあるのだ。
郷に入っては郷に従うか?
田舎などの地域では、既存のコミュニティに溶け込まなければとか、何かはじめる時はみんなの理解を求めなければとか、意識的にせよ無意識的にせよ、一定のプレッシャーがあったりする。郷に入っては郷に従え。
けど、それが排除性につながりすぎると、新しく人が入ってきにくくなったり、何かはじめるハードルが高くなったり、いつも周りの評判を気にしたり、村八分的な田舎像があらわれてくる。
地域コミュニティ側の視点に立つと、寛容さをもって異質なものを取り入れていく=ひらいていくことは、昨今の地域において重要なテーマだ。
郷に入る側も、長い時間軸の中で紡がれてきたものや、地域に暮らす人や自然との関係性へのリスペクト、そして共助や贈与的な感覚も大事だ。
一方で、はじめから多くの人を巻き込もうとしたり、共感や理解されようとしすぎずとも、小さな範囲での関係性からはじまって、少しずつ輪が広がっていくことも多々ある。
同時に、あえていうと、つながりすぎない自由だってある。
社交的かつ丁寧な暮らしを徹底する、人間力高めなニンゲンでないと生存できないのもちょっとマッチョすぎる気はする。
コミュニティのひらき具合についても、とにかくオープンにせよ!というのが唯一解でもなくて、とじているならではの面白さもある。
例えば、バスク地方のサンセバスチャンのまちなかにいくつもある「美食倶楽部」。メンバーシップに入るハードルは高く、それ故に信頼の土壌があり、遊び心に溢れた場が100年以上続いてきた。基本はメンバーのための場でありつつ、誰かが友人を連れてきたりと隙間は空いていたりもする。とじつつひらいている状態。
「ひらく」と「ひらかない」の間には、無限のグラデーションがある。
暮らしをつくるって、自由だ
世の中の様々な営みに置いて、どっちかの立場に立つと、どっちかを否定して自身のアイデンティティを確保したくなりがちだけれど、村とかコミュニティ、すなわち、みんなで暮らしをつくることって、もっと自由なものだと思う。
それに、一つだけじゃなくて、色んなコミュニティ、複数の経済圏を軽やかに行き来していくことだってできる時代。
最近、社会のシステムやSNSなどの評価経済から逸脱できることこそが、コミュニティなるものの何よりの面白さなんじゃないか?と感じている。
次回は、「評価されないという快感」について書こうと思う。
「コモンズの再発明」シリーズの過去記事も是非ご覧ください!
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