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【シェア街 新しい施設立ち上げノウハウ】ポテンシャルを開花させる:過疎化地域でのコミュニティ創りへの挑戦
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お客様が循環的に流れる場所を二居に創っていきたい
新潟県湯沢町の二居というエリアは、かつては江戸と越後地方を結ぶ街道の宿場町として栄え、参勤交代の行列や旅人などが行き交う場所でした。また現在でも、かぐらスキー場の田代ロープウェイまで徒歩7分という好立地で、温泉もあることから、ウィンターシーズンにはスキー・スノーボードのお客様で賑わいます。
しかし一方で過疎化が進んでおり、民宿は担い手不足により閉業し、空き家も増えているのが現状です。
そのような中、使われなくなった民宿をリノベーションし、2022年12月に宿泊施設として「Little Japan ECHIGO」がプレオープンしました。2023年4月1日には宿泊だけでなく、おしゃれなカフェや地域の新たなコミュニティ拠点としてグランドオープンしました。
なぜこの地域で拠点を立ち上げたのか、また地方での新たな宿泊施設の立ち上げのノウハウなどを、Little Japan ECHIGOの支配人であり、シェア街住民でもある大木さんに聞いてみました。
なぜ二居なのか?二居の高いポテンシャル
インバウンドの傾向として、かつては買い物やアニメの聖地巡礼などが主流でしたが、近年はコト消費・体験型に対する誘引力が高まりつつあります。スキー・スノーボードについては、新潟県が日本で一番誘引力があり、特にアジア系の割合は高く、リピーター率も高いという統計もあります。
二居という場所は、東京からのアクセスがよく、スノーリゾートに加えて、ロープウェイから眺める絶景や温泉など、オールシーズン楽しめる観光資源が充実した場所であり、非常にポテンシャルの高い地域だと思い、この地域での開業を決めました。
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地域の方々の暖かいサポート無くして立ち上げはできなかった
私は二居に来る前は、東京・浅草橋にあるLittle Japanというゲストハウスでスタッフとして働いていました。
食料の調達一つとっても東京と二居とではまったく環境が異なっています。当然コンビニなどはなく、スーパーも車で買いにいくしかありません。特にハイシーズンの冬は、お米や野菜などが食事で沢山必要なので、良いものを安く調達するのはとても大変でした。そんな中で、二居観光協会の方に色々なことを教えて頂きました。
DIYでLittle Japan ECHIGOをリノベーションする際には、地元の塗装業者の方から珪藻土の塗り方、おしゃれな塗装の仕方などを親切に教えて頂いたのも大変ありがたかったです。
また、やったことがなかった雪かきは苦労しました。朝、周りの住民の方々とほぼ同じ時間から雪かきをしても進みが悪く、もたもたしている姿を見かねて、手伝っていただいて本当にお世話になりました。近所の方々からスノーダンプなどの道具の購入や、除雪機の操作方法を教わることもありました。雪かきはかなりの重労働で、雪国育ちの方は我慢強いと言われていますが、雪かきを通して本当にそうだなと思いました。
若者世代の心強い仲間達がいた
地元の方々以外でも、越後湯沢で宿屋やハラルビジネスを進めている「SOUQ」の奥田将大さんや、十日町で全日本まくら投げ大会インストラクターをされている大塚眞さん、「とかとこ」のほんまさゆりさんなど同世代で地域を盛り上げようとしている仲間がいたのも、この事業を進める上で心の支えとなりました。
また「Little Japan ECHIGO」から徒歩3分の場所にある『宿場の湯』というサウナ付き温泉施設では地域おこし協力隊の方が活動されています。
SOUQの奥田将大さん
とかとこのほんまさゆりさん
地元の方々との交流
冬場のハイシーズンではなかなか交流ができなかった地元の方たちとも、7月に開催される二居神社のお祭りや、毎月第3日曜日に越後湯沢駅前で行われるあおぞらひろば縁日などの参加を通じて親睦を深めることができました。
今まで二居では、グリーンシーズンに開けている宿はなく、Little Japan ECHIGOは年中無休としていることについては近隣の方々にも喜んでもらっています。
周辺には、高山植物の花畑がきれいな平標山(たいらつぴょうやま)などがあり、地元の方と協力してリトリートツアーやマルシェなどのグリーンシーズンのイベントなどを企画、相談しています。
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泊食分離で旅館の稼働率の向上と地域を活性化させる
現状、二居にある宿泊施設は、宿泊客向けにスキー道具のレンタルをしたり、食事の提供や送迎などもしたりしているところが多いです。それらを一つの宿で全てをやることは負担が大きいと感じています。
そこで地域全体で、それぞれの特長を生かした協力体制をつくりたいです。例えば「楽しくお酒を飲める場所がない」という要望については、Little Japan ECHIGOで飲食を提供することで、宿泊客だけでなく地域の方に喜んでもらえるのではないかと思っています。
地域内で泊食分離することによって、宿舎だけではなく、お土産屋さん、カフェ、温泉などが増えます。お客様が地域内を循環してく状態を創っていきたい、二居で人が沢山歩いている景色が見たいと思っています。
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将来の展望
私は昔、オーストラリアのバイロンベイに長期で滞在していたことがありました。
都会ではなく、観光地のような見どころはあまり無かったですが、自然が多くてヨガやサーフィンを楽しむ人たちが多くいました。知らない人でも目が合ったら挨拶する文化が根付いていて、そこでの生活はとても居心地の良いものでした。
ある日、自転車で走っていたら、スケートボードにのった子供がすれ違いざまにハイタッチをしてくれました。その瞬間「あ、この土地に受け入れられたのだな」と感じました。そんな日常を二居で見てみたいです。
二居では、単なる移住者の受け入れにとどまらず、この地で新たな価値を生み出すプレイヤーの方々を歓迎しています。Little Japan ECHIGOは地元の方々と緊密な協力を図りながら、地域のパイプをより太く、より強固に構築していきたいと考えています。
新しいプレーヤーが二居に足を運んでくれることで、この地域が魅力ある場所としてさらに成長していくと確信しています。二居というポテンシャル豊かな地域で、スキーシーズンに限定されず、これまでになかった新しいアイディアや事業を、地元の方々と共に0から1を作り上げる活動を進めています。このような持続的な取り組みが続く限り、その地域に訪れるお客様が増え、魅力的な地域へと変貌していくのではないかと期待しています。
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写真:提供写真
執筆:つね(奥恒彦)
編集:はやかわ英明