わたしのゲストハウスのつくり方「ゲストハウスをデザインする(ハード)①」
「ゲストハウス」と呼ばれる施設の中でも、最近ではさまざまなタイプの施設が出てきています。
どんな場をデザインしたいのかを決めるために、たくさんの国のいろいろなゲストハウスに行き、その経験を活かしてLittle Japanをデザインしました。
今回は、どんなことを参考にしながらデザインしていったのかをお伝えしていきます。
また、実際に始めてみてから「こうしておけばよかった!」と思った点もありましたので、そのことも書き残しておきたいと思います。
Little Japanのゲストへのメッセージは「Come as a guest, go as a guest」
「Come as a guest, go as a guest」の意味は「来るときはゲスト。帰るときには友達」。
初めてバックパッカーとして乗った中国行きの船の中で知り合った「しげさん」の歌で、Little Japanからゲストへのメッセージです。
そして、「地域と世界をつなぐ」を目指すLittle Japanでは、ゲスト同士の交流だけでなく、地域の方とも交流できる場にしたいと思っていました。
私は、このテーマを実現するためにはどうしたらいいだろうか?と考えながら、デザインを決めていきました。
宿泊できる人数を決める
私の経験上、規模が大きなゲストハウスで「泊まっているゲスト全員が交流を楽しめているな」と感じられるゲストハウスはありませんでした。
スタッフの目が届かず、どうしても一部の人は隅っこで楽しくなさそうにしているという状態になってしまいます。
また、私自身シャイなタイプなので、交流は楽しみたいのですが、パーティーゲストハウスにはしたくありませんでした。
そこで、私は何人までならゲスト全員の顔を覚えてサービスができるのかを考えました。
まず、住み込みスタッフをしていた五条のゲストハウス。
住み込みをしていた間、ほとんどのゲストの名前と顔を覚えておりました。
五条のゲストハウスの規模は、本館と別館を合わせて約30ぐらいのベッド数でした。
また、それまでNPO等でイベントを頻繁に開催していたのですが、だいたい20人ぐらいの規模だと、ある程度全員と話をすることができると考えていました。
一方で、100人規模のような大きいイベントにすると、実は話せる人数が減ってしまうのではないかと考えています。たとえば2時間のイベントで、参加者が20人くらいだと他の19人と話をすることはできるのに、参加者が100人のイベントでは、話せる人数が5人〜10人ぐらいになる方が多いように思います。(ただし、名刺配りだけをする人は参加者が多い方が配れる人数が増えます)。
そんなようなことを踏まえた結果、最大で30ベッド前後にしたいと考えて物件を探し、今のLittle Japanができました。
ゲストハウスの場合は何日も宿泊することが多いので、だいたい1日にくる新しいゲストは10人ぐらいだろうという想定でこのベッド数になりました。
結果としては少し多すぎたと感じており、現在、実質的に新しいお客さんを迎えるベッド数を少し減らす方向を考えています。
個室が良いか、ドミトリーが良いか
ゲストハウスのお部屋のタイプは、ドミトリーと呼ばれる相部屋がメインとなっているところが多いです。
昔からのバックパッカーはドミトリーが大好きですが、近年ゲストハウスに宿泊する方が増えている中で、ドミトリーには抵抗がある方も多いのが現状だと感じていました。
そこで、Little Japanでは半分をドミトリー、半分を個室で運用することにしました。
また、お部屋の中にも、机などを置いてそこで交流できるようになっているところと、部屋の中は飲食禁止で、共用のラウンジでの交流を楽しめるようになっているところがあります。
個室では小さな机を用意しており、部屋の中でもゆっくり過ごせるようにしています。
一方で、ドミトリーの方は音や臭いの問題もあるため、机や椅子を置かず、ラウンジで交流をしてもらうようにデザインしました。交流せずに寝たい人でも快適に過ごせるようになっています。
ベッド
ベッドは全て、シングルの木製2段ベッドにしました。
一部の部屋にダブルベッドを入れることも検討しましたが、リネンが変わってしまうので入れないことにしました。
どこのゲストハウスにもだいたいありますが、各ベットの枕元に電源を2つ以上・電灯・プライベートが確保できるカーテン・ハンガーを設置しました。
また、シングルだとベッド空間がやや狭いため、ちょっとした荷物を置いたり、書き物やPC作業を行えたりするように小さな机をつくり、貴重品BOXも付けました。
本当は、アメリカの「Pod Share」さんのような、はしごではなく階段でベッドをつくるイメージを持っていましたが、予算とスペースの関係で断念しました。
この部分に関しては、もう少し検討すれば実現できていたかもしれないと思っております。
最近宿泊した福岡のスタンドバイミーさんのベッドは階段式で、ベッドの中も広くて個室感もあり、大変快適でした。
個人的に、竪穴式ベッド(ベッドの短辺から入るタイプの2段ベッド)が好きではないので、ベッドの長辺から入れるようにしました。
さらに、ベッドの配置を円を描くように配置しました。
交流スペース。ラウンジやカフェ・バーのデザイン
カフェやバーを併設しているゲストハウスはすごく増えています。
そのカフェ・バーも、宿泊者よりも一般の方のお客さんが多いような、まさに「飲食店」としてやっているところもあれば、あくまで宿泊者の「交流の場」という位置付けとして運営しているところもあります。
また、イベントなどをよく開催しているところもあれば、コワーキングスペースのように仕事で使われているところもあります。
Little Japanでは、3つのラウンジを作りました。
1階のカフェ・バー(テーブル席、カウンター席)
お昼の12時から夜の23時まで営業しており、宿泊のゲストとカフェ・バー利用のお客さんが交流できる場です。
このスペースは、清澄白川のブルーボトルコーヒーを参考にデザインしている箇所が多く存在しています。
座席の数は、テーブル席が12席とカウンター席が3席。
広すぎると話がしづらくなるため、規模感としてはちょうど良かったと思っています。
ここでは、イベントも多く開催しています。
プロジェクターを投影できる壁がないので、スクリーンかモニターの設置を検討したのですが、結局決めきれずに今も迷っているところです。
イベントを開催するためにはあった方がいいのですが、日本人が開催したイベントで、プロジェクターでばっちり日本語で話をしていると、海外のゲストが居づらいかもしれないな…というのが悩んでいるポイントです。
前面はガラス張りにし、外から中が見えやすいデザインにしています。
これは、地域の方との関係づくりを考えた時に、中を見てもらって安心してもらいたい、「ちょっと入ってみようかな?」と思ってくれた方が声をかけやすいようにしたい、という意味があります。
また、地域の方からは「ここだと外から丸見えだから、自分がお店にいることが他の人にバレるのがちょっと…」という声もあるため、奥のソファ席の方にお通しすることも多いです。
全体的になるべくシンプルにこだわり、これからいろいろな色に染まっていくことができるようになっています。
1階のソファラウンジ
前述のカフェ・バーの奥にあるソファラウンジ。
こちらは、カフェ・バーよりも少し落ち着いた雰囲気を目指しています。
また、カフェ・バースペースは、コンロ等もあるので23時で鍵を閉めてしまいますが、こちらのラウンジは24時間利用することができます。
さらに、1階には客室がないため、扉をしっかり閉めれば外にも客室にも音が漏れにくいようになっています。
2階の畳ラウンジ
ここは、ゲストのみが使えるラウンジです。
ラウンジの中で一番くつろげるように畳やクッションなどが置いてあり、ここで寝ていたり、読書していたり、旅の計画を立てたりと、長時間滞在しているゲストが多いです。
1階はイベントなどで騒がしい時もあるので、ゆっくりしてもらいたいということで別フロアに作りました。
本当はラウンジだけのフロアがあった方がいいのですが、10人ドミトリーと同じフロアになりました。
また、2階は10人ドミトリーとこのラウンジのみのため、10人ドミトリーを貸し切ってここで懇親会をしたり、合宿のようなことをする方もいらっしゃいます。
ゲストハウスの機能
ゲストハウスの原点の価値は「交流」だと思っています。
その上で、現在「ゲストハウス」と呼ばれる施設の中でも、さまざまなタイプの施設が出てきています。
私は、ゲストハウスを外と中の「接点」と捉えています。
海外の方から見ると「海外と日本の接点」。
ゲストハウスに来ることで、ツアーでは体験できない、日本のローカルな部分と接することができます。
地方のゲストハウスは、それ以外の地域から来る人にとっては「地域との接点」になります。例えば、東京から来た人が地域の人とつながる場です。
さらに、地方への移住を考えている人がお試し移住をする場になっていたり、あるいは地域おこし協力隊の人が集まる場になっていたり、まちづくりの拠点になっていたりと、もはや単なる「宿泊施設」とは呼べないような場になっていることも少なくありません。
最近おもしろいなと思ったのは「イワシビル」さん。
3階がホステルになっているのですが、2階にはイワシの加工品の製造工場があり、見学もできるそうです。
「イワシを発信する拠点」というイメージでしょうか。
Little Japanにもフライヤーがありました、イワシがかわいくて持っていく人が多いのか、いつの間にかなくなっていました…
デザインを手伝ってくれたマチナカ製図室さん
いかにも自分でやってきたかのように書いていましたが、Little Japanのデザインのほとんどはマチナカ製図室さんと協力してつくってきました。
もともと学生団体として活動をしている時から知っており、デザインも思想も好きだったので、ロゴなども含めてほとんどのデザインは一緒に考えてきました。
おかげで非常に素敵な仕上がりになったなと思っています。
まとめ
ここまで、Little Japanの客室や交流スペースについて、デザインする際に意識したことをご紹介してきました。
どのようなデザインがゲストにとって過ごしやすいか、そして自分が運営していきやすいかを考えることが大切です。
思いのほか長文になったので、シャワーや洗面所などの設備関係は「ゲストハウスをデザインする②」でお伝えしていきたいと思います。