ガチガチに固めてはつまらない!コミュニティの中で大事な「余白」
前回、コミュニティ内での「仕組み」づくりについて考えました。https://note.com/sharemachi/n/n45ca8511bb93
メンバー間の交流を活発にするために仕組みづくりは重要ですが、一方で個々のメンバーが考えたり工夫できる「余白」を残しておくことも忘れてはいけません。同じ組織でも「コミュニティ」と「会社」では様々な違いがあります。今回は、その2つの違いや「余白」のつくり方について考えます。
成果を出し続けるための組織である会社
会社は、社長や上層部が決めたことが末端の社員に伝えられ、それをもとに業務が進みます。組織のイニシアチブを一部の人が持っている中央集権型でトップダウンの構造です。この構造のメリットは、組織の動きが迅速になること、一つの目標に向かいやすいことです。
会社は利益を追求する組織です。そのためには個々人の気持ちよりも会社全体でどのように動いて行くかが優先されます。多くの人が力を合わせることで、様々なことができますし、得られるパワーもとても大きいです。そして会社員として会社に所属することは、給料を得るというメリットがあることは言うまでもありません。
基本的には会社というのは、継続的に利益を出していくために、人が入れ替わっても滞りなく業務が進められるようにするために、人によって解釈が分かれるような余白を埋めていき、マニュアルを作り上げていくものです。もちろん現実には、会社の仕事でも、人間関係なども含めて、その人にしかできない仕事はあると思います。しかし基本的には、会社で自分がしている仕事は、他の人もできることになります。
人が楽しむための場であるコミュニティ
会社が、利益などの目的のために人を組織する集団だとすれば、一方でコミュニティは、人が集まることが第一の目的となります。コミュニティには様々な種類があり、集まるテーマもそれぞれですが、それらはあくまでも人を集めるためのツールといっていいと思います。そこで友達などの人間関係を作ることができるというのが、コミュニティの重要な要素です。
当然ですが友人関係は、他の人で代替できるものではありません。会社に所属する社員のように、辞めた人のポストに別の人を入れるとか、能力の有無によって部署や配置を変えるなどといった単純なものではありません。人間関係をつくることが目的なので、ガチガチに規則などで縛る必要はありません。最低限、マナーなどは守られるように認識を合わせておく必要くらいはあるかもしれませんが。
コミュニティは余白を残しておくことが大事!
前回、「仕組み化」という話をしました。始めましての人が右往左往しないように、ある程度の道筋を示すことは必要なのですが、完全に仕組化してしまって、「こういう風に楽しんでください!」という型を押し付けてしまうのは違うと思います。
コミュニティの楽しさの一つは、新しい物事を作り上げていくことにあります。メンバー同士の何気ない会話の中で、「〇〇を一緒にしよう!」「こんなイベントを開催してみんなを集めたら面白そう!」といったアイディアが出されて、自発的にアクションが起こっていくような雰囲気があると、コミュニティの動きが活発になります。
会社や仕事で新しいことを始めるとしたら、どうしても「それは利益が出るのか?」ということを考えなければいけません。コミュニティ内で声を出せば、一緒にやりたいと言ってくれる人がいたり、アドバイスをくれる人がいたりします。そうした気持ちを持った人が動きやすいように、「余白」をつくっておくことが大事になります。
シェア街のきょてんの一つ、東京の浅草橋にあるゲストハウス・Little Japanのリノベーションをイベント化したということを前回取り上げました。
完成したゲストハウスに来てもらうのではなく、壁塗りやベッドづくりにボランティアを集めて作業してもらうというのは、「余白」づくりとも言えます。
「自律分散型コミュニティ」のシェア街
シェア街は、何もない広大な空き地のスペースに、街をつくっていくことをイメージしています。2020年の秋にシェア街が立ち上がった当初、「きょてん」はコミュニティを研究する「コミュニティラボ」や、雑談をする「フレンドパーク」など、5個くらいしかありませんでした。「余白」どころか「真っ白」です(笑)。
しかしその後、「オンライン上でバーのようにおしゃべりできる場が欲しい!」という声から「くうそうCafe&Bar engawa」ができたり、「好きな音楽をシェアしたり、おすすめし合う場がをつくりたい!」という声から「音街ろまん館」ができたり、「スポーツやサウナを一緒に楽しむ仲間が欲しい!」という声から「汗活Studium」ができたりしました。それらはみんな、住民の皆の声から生まれたものです。シェア街の住民には、街内外の両方で、コミュニティづくりに携わっている人が何人もいます。「こんな”きょてん”をつくりたい!」「こんなことをやってみたい!」という想いを面白がってくれたり、アドバイスをくれたりする人が人もたくさんいます。そうした想いが連鎖してきたことによって、何もない更地だったところに新しい建物がどんどん建って、だんだんと街っぽくなってきたように感じます。
「余白」と「仕組み」がちょうどいい100人カイギ
「100人カイギ」をご存じでしょうか?
以前、このシェア街のnoteでも、100人カイギを分析したり、創立者の高嶋 大介さんにお話を伺ったりしたときの記事を書きました。
100人カイギの概要は以下の通りです。
「100人カイギ」は、街で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、
都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティです。
ルールは簡単。
毎回、身近で面白い活動をしている5名のゲストの話を聞く
ゲストが100名に達したら解散する
100人100様の生き方に触れることで、いつもの景色が少し違って見えてきます。
「台東区100人カイギ」とか「看護師100人カイギ」など、様々な地域やテーマで開催されています。この100人カイギは、イベントのプロではない有志メンバーたちが運営者になるのですが、イベントを継続的に行うために「徹底的なフォーマット化」がなされています。例えば、イベント当日に使う、進行スライドやマニュアルなどは公式サイトに公開されています。
イベントというのは、「やりたい!」と思う人が数人集まれば、簡単にできてしまうのですが、それを続けるのはとても難しいです。
このフォーマットのお陰で、イベントでの悩みとなる部分はほとんど既に決められているので、続けることへのハードルがかなり低くなっています。
一方で、「どんなテーマで開催するか?」「どの地域で行うか?」「誰をゲストに呼ぶか?」など、それぞれが決められる「余白」もしっかり作ってあります。これによって、上から指示されたタスクをただ処理していくのではなく、「自分たちでやりたいことを、しっかりとやれている」という感覚が生まれます。
コミュニティでは余白や不測の事態を楽しむ
会社の創業時もそうですが、立ち上げ当初は何も無い状態から始まります。そこから「こんなものがあると業務が円滑になるね!」といった社員の声によって、業務体制や社内制度が整っていきます。
会社だと失敗はネガティブに捉えられてしまいます。一方でコミュニティでの活動では、金銭をはじめとした成果に強くこだわる必要はありません。「余白をどうやって埋めよう?」という風に考える過程も楽しんだり、「上手くいかないかもしれないけど、面白そうだからやってみよう」という様な挑戦ができたりします。
コミュニティの中では皆が生産者になれる?
繰り返しになってしまいますが、コミュニティには様々な種類があります。中には、リーダー格の人たちが、そのコミュニティ内での楽しみ方を決めていて、他のメンバーはそれを受け取ることが主というところもあります。ファンコミュニティや強いコンテンツ提供者がいるコミュニティなどはその要素が強いかもしれません。そこでは、コミュニティに参加しているほとんどの人は消費者となります。
自律分散型のコミュニティではコミュニティに参加する全員が、生産者にも消費者にもなることができます。各々が持っているスキルや経験、知識などが掛け合わさって、思いもよらないアイディアが生まれたり、活動に発展していくのが、コミュニティの面白さになるのではないでしょうか。
■シェア街とは?
シェア街はリアルとオンラインで新しい経済圏をつくるバーチャル都市です。誰でも住民になって仮想のまちづくりを楽しめます。
リアルな「きょてん」として、東京浅草橋にあるゲストハウス「Little Japan」やその周辺のシェアハウス。新潟県の越後湯沢にある「Little Japan Echigo」があります。オンラインの「きょてん」では、コミュニティづくりの研究や実践をする「コミュニティラボ」、好きな音楽をシェアする「音街ろまん館」、みんなで体を動かしてサウナで整う「汗活studium」、バーチャル空間での街づくりに取り組む「バーチャルシェア街」などがあります。
住民募集も随時行っているので、下のリンクやSNSもチェックしてみてくださいね!
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