見出し画像

主催者に集中しすぎて、大変にならないためには。【コミュニティ・NPO立ち上げあるある】

画像1

コミュニティやNPOを主催していると、いろいろと悩みに遭遇します。
特に、立ち上げた人へタスクが集中してしまい、力尽きてしまったり。やる気がみなぎっている分、ついつい多く抱え込みがちに。

自分の意思決定が中心で、組織の方向が決まってしまう違和感。...かといって、その人が動かないと、メンバーの反応が起きなかったり。

では、どうやったら参加者に割り振れるのか。
どうしたら自走する組織をつくれるのか。

コミュニティ運営にとって、鍵となるテーマを考えていきます。

どうやって、火を広げるか。

画像5

発起人である「わたし」は、もっとも火が点いている状態です。
ここからひとりで燃え尽きないように、どう火をうまく広げていくのか。

「わたし」以外のメンバーを見て、三つの点を意識します。

① 「なに」に火がつくか。
② 「だれ」に火がつきやすいか。
③ 「どんな」火がつきかかっているか。

ひとつひとつ、見ていきましょう。

① 「なに」に火がつくのか。

名称未設定-6

ひとつのコミュニティ・NPOといっても、メンバーのモチベーションはさまざま。なにが燃料(=やる気)となるかは、ひとりひとり異なってきます。

ある人は地域への愛から参加しているかもしれないし、ある人は自分の特定のスキルや経験を活かしたかったり。また、ただ単に人とのつながりを求めている人も。

「なんの燃料」を投下すれば、火が点くのか。メンバーの発火点がどこにあるのかを、敏感に感じ取っていくこと。個々のメンバーの価値観や興味・関心ごとを把握し、ベースにする必要があります。

よくあるコミュニティの失敗例は、組織図から作ってしまうことです。立ち上げ人として、整えたくなる気持ちが生じてしまう。必要な役割にこだわるあまり、ひとりひとりのメンバーが「何に燃えるか」より優先させてしまったり。押しつけすぎると、離れるかもしれない。そんな恐れを意識する必要もあります。

画像5

では、具体的にできることとして。
普段から、お互いの価値観を知る機会をつくることが望ましいです。

例えば、wevoxのバリューカードゲームがおすすめです。コロナの中でも、オンライン上で複数人が集まってプレイできるため、チームビルディングの一環としても注目を浴びています。

あるいは、1on1で話す機会を設けることも。直接熱意を伝えつつ、ひとりひとりの興味を知り、測り、伸ばしていくには、手っ取り早い方法です。

...ただ、メンバー全員と1on1をするのは、時間と労力が必要です。組織の規模が大きくなればなるほど、実施が困難にもなってきます。

② 「だれ」に火がつきやすいか。

画像6

そのため、火がつきやすいのが「だれ」なのかを、厳選します。メンバーの中でも、特に温度感が高く、行動につなげてくれそうな人。「一番の分岐点はこの人!」と言えるような存在。

組織論のひとつに、「フォロワーシップ理論」*1と呼ばれるものがあります。
リーダーがもたらす全体への影響は2割に過ぎず、残りの8割はそれに続くフォロワーによるもの、という考え方です。

ひとりの半裸姿の男性が、奇妙な踊りを始める。周りは訝しがります。が、それに続いたもう一人の男性がいたことで、「なにかおもしろそうなこと」と化し、やがて多くの人が気軽に参加できるように。「始めた人」よりも「それに続いた人」の重要性を訴えた、社会的な運動を起こす理論としても注目を集めたビデオです。

メンバー間で、特に動いてくれそうな人は「だれ」になりそうか。まずは見極めた上で、その人のもとへアプローチしに行きます。自身の熱意や夢を語り、伝播させていく。その過程で、自分以外のリーダーを組織内に生ませ、立ち上げ人がいなくなったとしても、自走していく可能性を見込めます。

*1 ... カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が1992年に出版した、「The Power of Followership(1992年)」にて概念化。リーダーシップ論が偏重されていた時代において、新たな発見となる。

③ 「どんな」火がつきかかっているか。

画像6

上記は、立ち上げ人側からはたらきかける、「口説く」タイプの切り口でした。一方、すでにやりたいことがある人を待ち受ける「フリーハグ」の視点もあります。

言い換えると、生じかけている火へさらに追い風を与えること。メンバーの中で、「こういうことをやってみたい」という人がいたら、その提案に全力で乗っかります。熱があるうちに、発案者を実行者にそのまま変化させていくことが肝心です。

何かひとつ、メンバーのアイデアを形にすれば、「動けばできる」という実感をもたらし、士気を高める契機とも。かつ、フィードバックを適切に与える(企画してくれてありがとう / おもしろい取り組みだった等)ことで、以後の主体的な行動を促していきます。*2

くすぶっている火種は、組織における活力の芽。敏感に捉えていくことが大切となります。

*2 ... 心理学の世界で、行動のあとに反応が帰ってくることを「行動随伴性」と呼ぶ。その反応(=フィードバック)に応じて、同様の行動頻度が増加する「強化」や、逆に減少する「弱化」が起こる。喫煙や禁酒、減量運動、子どもへの教育など、幅広く応用されている。

ゼロから火をつけるのは、ムズかしい?

画像7

そんな、すでに「やりたいこと」や「アイデア」を持っている人は、貴重です。
一方で、完全にゼロの状態から自分ひとりで動ける人は、そう多くはないかもしれません。

なのでその際は、ある程度の「お手本」を主催者側のほうから用意しておくことも必要となります。組織における役割であれ、企画であれ、遊び方であれ。何か「当たり前」となっている文化をつくることで、メンバーも動きやすくなるでしょう。

そのフォーマットに従っている中で、メンバーに眠る独自性が芽生えることも。「守・破・離」*3のプロセスを辿り、やがてその人なりの主体的な参加の形が見えてくれば、主催者から役目を委ねられていきます。

ゼロから火をつけるよりも、多少とも既に暖まっている環境下でのほうが、発火はしやすい。そんな状況を事前に創ることもまた、立ち上げ人の火起こしに必要といえます。

*3 ... 武道や芸道において使われる指導の考え方。最初は指導者が教えたことを着実に守り、実践していく(守)。その後、教わる人が独自に試行錯誤をし(破)、やがてその人独自のやり方を体得する(離)。

------------
コミュニティラボとは...
コミュニティづくりの理論と実践を研究する会です。リアルとオンラインにある仮想のまち「シェア街」における定期イベント(毎週月曜日21:00-22:00)として開催しています。住民も募集中なため、詳細は下記リンクからどうぞ!

「コミュニティ」「まちづくり」「ひととのつながりを生む」といったキーワードに関心がある方のご参加を、ぜひお待ちしています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?