開催内容 2024年10月26日(土)
ごきげんさんです。拡がる読書会の文鳥さんです。
曇り空でまだ少し暑さも感じる今日このごろ。
秋ってこんなんでしたっけ?みたいな疑いたくなる気候になっていますねw
今回も常連さん、お久しぶりさん、初めてさんもバランスよく来てくださって嬉しかったです。
本も色んな本が出てきました。いつもありがとうございます。
僕がある画家さんのツイートを見かけまして。
あ、この人の絵をみたことあるぞ。
思い起こしたのはあるテレビコマーシャル。懐かしい方もいるのでは?
ノエビアCM 鶴田一郎
鶴田一郎さんという美人画家のイラストをつかった化粧品メーカーのCMを学生時代によく見てたんです。1990年代に流れていたそうです。
涼し気な目元の女性の絵が次々出てきて、音楽は当時でもちょっと懐メロになっている曲を渋い歌手の方がカバーしているCMでした。
絵も歌も印象的ですごく良く覚えてたんですよ。
で、ネットで色々と鶴田さんの絵を探してみてたんですが、好きな絵だなぁと思って。
澄ました表情なのに憂いや微笑、色んな表情が読み取れる美人絵。
淡い肌色にハッキリした色の衣装。色数はあんまり多くなくてフラットな色彩ですが、精密さが滲み出ている。
思わず、ネットで画集を買ってしまいました。
ネットでも色々見れますけど、やっぱり手にとって観るとええもんですよー。これが手書きかぁー。
鶴田一郎 ミューズ達の祈り
世阿弥最後の花
「風姿花伝」などの著作で芸術論を体系化したことで知られる世阿弥は能楽を大成し、華やかな時代を経験しましたが、晩年には政治的な圧力や家族内の権力争いに巻き込まれ、72歳で佐渡へと島流しにされてしまいます。
実際の歴史にある話なのですが、その時代をフィクション小説にしたもの。
佐渡の民との関わりや自然の中で「人間・世阿弥」としての自己を見つめ直し、芸術家の老境における孤独と崇高な探求していく小説です。
芸道への真摯な姿勢や、彼が抱える孤独が浮き彫りになったり、特に島の民との心温かくなる交流がよく描かれています。
短歌がいくつものシーンで出てきてその時の心情や風情をうまく説明しています。学があると人生が豊かになるなぁと思わせる一作でした。
夢なし先生の進路指導
こちら最近、売れているという漫画です。
元キャリアコンサルタントの高校教師・高梨先生は進路相談で華やかな職業を目指す生徒たちに厳しい現実を突きつけます。そのため「夢なし先生」とあだ名されています。
一話目は声優を目指す女性の人生が描かれます。
業界の実情を知らずに飛び込んだため、端役ばかりで苦しむ日々を送ります。さらに、業界内での枕営業を拒否した結果、他人にチャンスを奪われ、精神的に追い詰められていきますが、「夢なし先生」は夢を見直すきっかけを与えます。
いろんな職業を綿密に取材した上で物語を作っているとのこと。
その厳しい一面ばかりを読んでいると夢がなくなる気がしてきますが、ちゃんと人生は道はひとつだけではなく、力強く続けることができることを描かれています。
「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
最近、好きなこと、好きなものを「推し」とよくいいますが、それを的確に、そして独自の言葉で伝えるスキルを養うための指南書です。
まずは自分の感情を細かく分解して、なぜ好きなのか?どこに心が動かされたのかを探るところから始まります。
推しとのエピソードや魅力を自分なりにイメージすることからシンプルな言葉から脱却し、個性的で印象的な感想を生み出せるようになります。
そして、伝える方向や人たちへの配慮もちゃんと考えることを記しているのがつい喋りすぎちゃうオタク気質には響くところもあります。
好きなものを語る語彙力を増やすのに新たな視点や表現方法が得られる実用的なガイドブック。
チワワ・シンドローム
「弱さ」をテーマにしたミステリー小説。
ある日突然、全国の800人以上が気づかないうちに「チワワのピンバッジ」を身に着けさせられるという謎の事件、通称「チワワテロ」が発生。
主人公の女性は失踪した恋人がこの事件の被害者であることを知り、親友とともにその行方を追います。
表面的な「弱さ」のアピールがいかに人間関係に影響を与え、現実と理想のはざまで揺れる登場人物たちの姿を描き、社会全体で「共感」や「弱さ」をどのように扱っているかという現代的なテーマをあぶり出しています。
信仰
「コンビニ人間」などで有名な村田沙耶香さんの8編の短編とエッセイで構成された作品集。
作品全体では、個々の登場人物が抱える孤独や自己矛盾が強調されており、カルト的な「信仰」と現実の間に潜む違和感や、信じることの危うさを探求しています。
表題作「信仰」では、現実主義者の永岡ミキが、同級生の石毛から「新しいカルトを始めよう」と持ちかけられるところから物語が展開されます。
日常的に信じられている価値観や社会のルールさえも一種の信仰であるとし、読者に「信じること」自体の意味を問いかけます。また、信仰の対象が現実的であっても不安定で変わりやすい性質を持っていることを描き、信じることの本質や現代社会での危険性を示しています。
くるまの娘
17歳の少女・かんこを中心に、壊れかけた家族関係の現実を描く作品です。物語は、かんこ一家が祖母の葬儀に向かうために車中泊の旅をするところから始まります。この旅は家族の思い出を掘り起こすものであると同時に、各人が抱える問題と向き合うきっかけとなります。
暴力的で支配的な父親と、病の影響で精神的に不安定な母親。家庭内の「見て見ぬふり」の習慣は、家族全員にとって安らぎを遠ざけ、もはや修復不可能な状態へと追い込んでいます。それでも、かんこは車という閉ざされた空間で、両親との過去を思い返しながら家族の絆に何かしらの救いを見出そうとします。
家族愛や依存がもたらす重さを問いかける内容になっています。
伝え方図鑑 当てはめるだけで「結果」が変わる!コミュニケーション・フレーム73
日常生活やビジネスシーンに役立つ73の「伝え方の型」を紹介し、コミュニケーションをより効果的にすることを目指した実践的な本です。
他者に共感や安心感を与える「わかりやすく伝える型」。
相手に自分のこととして感じさせ「相手の行動を変える型」。
具体的な情報を用いて説得力を高める「言葉を強くする型」など。
特に紹介者の方は「俯瞰」して全体像から伝えていく型が特に感銘を受けたとして、再読した際にはすごく腑に落ちたそうです。
本ってその時の心境だったり環境が違ったりするだけで見え方がちがったりしますね。
対人関係が豊かになり、自己表現や交渉に自信を持てるようになりたい方はいかがでしょうか。
数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問
数学的思考を日常の問題解決に応用するための方法を紹介した本。
「数学」と「数学的思考」を区別して、数学が単なる計算や数式の解法ではなく事実を分析し、パターンや構造を見抜く考え方であり、数学の授業で行う単純な計算とは違って「数学的な考え方」を活用することの重要性を説き、具体的なトレーニングを通じてそのスキルを鍛えられるよう工夫されています。
「問題の定義」「分析」が重要で、物事を明確に定義する方法が強調されており、何が「問題」で何が「問題ではないか」を把握するためのフレームワークが示されていて、それは効果的な意思決定を導くためのスキルを身につけられるよう設計されています。
以下3冊はハロウィンの時期とだということで、ホラーの作品、ハロウィンの文化についてまとめて紹介してくださいました。
吸血鬼ドラキュラ
1897年に発表されたブラム・ストーカーによるゴシックホラー小説で、吸血鬼ドラキュラ伯爵とそれに立ち向かう人々の戦いが描かれています。
ドラキュラはロンドンへの移住を計画し、その手続きにきた青年は伯爵が恐ろしい吸血鬼であることに気付き、命からがら逃亡しますが、ドラキュラはすでにロンドンへ向かっており、ジョナサンの身の回りの人たちを襲っていきます。
登場人物の多様な視点から語られる手記や日記形式が、臨場感を高め、吸血鬼の恐怖とその独特な美しさを深く印象づけられる作品で現代のホラー文学に多大な影響を与え続けています。
ラブクラフト全集
アメリカの怪奇小説作家H.P.ラヴクラフトが創造した「クトゥルフ神話」を中心に構成された作品集。
未知の恐怖や古代からの神々といった、現代の人類の理解を超えた力が描かれる点が特徴です。
中でも「インスマウスの影」では、奇妙な村インスマウスを調査する主人公が、村人たちの異様な特徴や、海底都市に封印されている古代神の存在を知るにつれ、次第に恐怖にとりつかれていきます。このような展開で読者は物語の中で少しずつ恐怖を理解し、進展する謎に引き込まれます。
紹介者の方が東京創元社創立70周年記念企画で作られた特別カバー版を購入したそうです。↓こんなシンプルかつ渋い表紙。
ハロウィーンの文化誌
ハロウィンの文化的・歴史的な起源と変遷を詳細に解説した書籍です。
行事として定着するまでの過程を、豊富な図版や資料とともに紹介しています。
元はケルト文化での検証から始まり、季節の節目を祝うものであったり、死者を敬う行事だったことがわかります。キリスト教と結びついて変容し、アメリカに渡ってから、子供たちが「トリック・オア・トリート」をし、かぼちゃをくり抜いた「ジャックオーランタン」を飾る文化になり、商業的で大規模な祭りにしていく過程が興味深く解説されています。
また、ハロウィンのシンボルである黒猫や魔女のイメージについても説明があり、これらがどのように定着し、祭りの象徴として使われるようになったかが解説されていたりと、ハロウィンとは色んな文化が混じり合って出来上がったものってことがこの本でよく分かるそうです。
ドキュメント民営刑務所: 潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス
あるジャーナリストが刑務官としてアメリカの民営刑務所に潜入し、その実態を克明に記録したノンフィクションです。
民営刑務所の世界は、州政府から業務を委託された株式会社によって運営され、利益を最優先にする運営方針が囚人と刑務官に多大な影響を及ぼしています。
コストカットのために刑務所の職員には低賃金が支払われるため、質の高い人材の確保が難しく、職員のモチベーションや倫理観が低下。また、囚人の食事や医療など、基本的なケアすら最低限に抑えられ、囚人たちが適切な治療や食事を受けられない状況が多く発生しています。
刑務所の本来の目的である「更生」よりも「経費削減」を重視する構造が浮き彫りとなっており、営利主義が人間の基本的な権利や安全を脅かしている実態を訴えると同時に、刑務所ビジネスの問題が司法制度全体にまで及ぶ深刻な影響を示唆しています。
紹介者の方が↑の本があまりにも厳しい内容だったので、箸休めの気分で手に取ったという短歌集。
月のうた
現代の歌人100人による短歌アンソロジーで、月をテーマに詠んだ作品が100首収められています。
月は単に美しい風景としてだけでなく、さまざまな象徴として表現されており夜空に浮かぶ月や、四季折々の情景に溶け込む月、そして時には孤独や希望の象徴として、歌人たちの感情を反映しているそうで、紹介者の方曰く、小説のように読むとすぐ終わっちゃうので、一首ずつゆっくりと大切に読むようにしているとのことw
次は人類のおける貧困の差であったり文明の発達の差はなぜ起こったかを考えるに良い本を2冊紹介してくださいました。
アメリカの進化生物学者、生理学者、地理学者であるジャレド・ダイアモンドはニューギニア人の政治家から「なぜヨーロッパ人が我々ニューギニア人を征服したのか?」と問いを受けました。
単に「ヨーロッパ人が優秀だから」と片づけるのではなく、地理的条件や環境要因の差にあると考えたダイアモンドの思索の出発点となりました。
で、それを考察した結果が↓
銃・病原菌・鉄
環境と地理的要因が人類社会の発展や文明間の格差に与えた影響を考察した壮大な人類史です。タイトルの「銃・病原菌・鉄」は、ヨーロッパ諸国が他の地域を征服した際に優位に立った三大要素を象徴しており、ユーラシア大陸の「農耕と家畜化の拡大」「技術の発展」「病原菌に対する免疫」の影響力が文明の発展に寄与したと説明しています。
ユーラシア大陸が東西に広がる構造上、似た緯度により気候や農業が安定しやすく、農耕と家畜の発展に適した地域であり、家畜が広く飼育されたことにより、風土病や伝染病への耐性が形成されたとしています。
新大陸での征服に大きく影響し、免疫を持たない先住民はヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘などの病原菌により大量に命を落としました。この「病原菌」の要因が、ヨーロッパ人の征服を大きく助長した歴史を記しています。
今や、色んな方面で突っ込まれている説だったりするんですが、文章表現も上手く物語性もあるので、実に面白い本です。
この本で近年あたりまでの文明差の理由は分かってくるんですが、交通手段も発達した現代ではどうやって差がついているのか?を説明しているのが下記の本です。
国家はなぜ衰退するのか
経済学者ダロン・アセモグルと政治学者ジェイムズ・ロビンソンが、国家の繁栄や衰退の理由を「制度」の違いに求めた画期的な研究を記した本です。
彼らは、国家が経済的に発展するかどうかを決定する要因は、地理や文化、人種ではなく、政治・経済制度の在り方であると主張します。
政治や経済への参加を広く促進し、個人が創造性や経済的利益を追求できる環境を整える仕組みがある国家では、公正な法制度や財産権の保護、公共サービスの提供などが整っており、市民が自らの努力で生活を向上させることが可能です。これが長期的な経済成長の基盤となり、持続的な繁栄をもたらします。
一方、権力者が市民を抑圧し、富を搾取するためのシステムの国家は一部のエリート層のみが富と権力を独占し、多くの人々には機会が提供されません。腐敗が蔓延し、公共サービスや教育、医療の質が低下します。これは貧困の連鎖を生み、国全体が衰退の道を辿る原因となります。
国家の成長と衰退を決定づける制度の重要性を強調し、政治的な参加や法の支配を尊重することが、国家の繁栄を支える鍵だと述べています。
以上が今回紹介された作品でした。
拡がる読書会はお題がジャンルフリーで、お互いのおすすめ本を紹介し合う形式です。
他に面白く話せる内容があれば普通の文庫本と海外に絵本・漫画・写真集・雑誌・チラシ・パンフレットなどなんでもどうぞなのです。
みなさんのおもしろかったー!をぜひ教えてください。
ゆるーい会なので、「読書会ってどんなの?」っていう初心者の方にもオススメです。お気に入りの一冊を持って、好きなように話してくださればOK。話せなくてもて、みんなで一生懸命聞きますw
次回開催概要は↓
ご参加お待ちしております。
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