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サヤちゃんのリスカ

この話は続きものです。
前回はこちら↓

サヤちゃんは中学2年になっても店に来てくれる。
中学生になり、友だちも出来たようだが、
「siネ!」の連語をLINEで送られたりして、
うまくはいってないようだ。

そんなサヤちゃん、店に来るなり、
「おっちゃん、リスカやってもた」
と言って来たことがあった。

「どうした? なんかあったんか?」
「別に何もないねんけどな。ちょっとイライラと言うかなんかモヤモヤしてたから」
「もう何回もやってんのか?」
「うん、3回目」
「そうか。でもリスカくらいじゃ死なれへんぞ。痛いだけやぞ」
「うん、知ってる。死にたいわけじゃないねん」
「ほんならなんでしたん?」
「教えてもらってん」
「教えてもらった?」
「うん。スマホアプリの友だち」

ほんと、スマホアプリとかネットとかでこういうのを拡散する人って困ったもんだと私は思う。

「おっちゃん、リスカする子、怖い?」
「おっちゃん、全然怖ないねん。リスカする人もいっぱい見て来たし、
死にたい、死にたいって言うやつもたくさん見て来たし、
だから怖くはないけど、実際に自殺した友だちもおるから、
死ぬのはやめて欲しいねんな。そやからか、リスカしてるって言う人には、
ほどほどにしとけよ、くらいを言ってる。
そやからサヤちゃんもほどほどにしとけよ」
「わかった。ほんなら、私が死んだら、おっちゃんどう思う?」
「サヤちゃんが死んだら泣くわ。友だちとして泣く!」

サヤちゃん、数秒黙ってしまった。
一呼吸おいて、

「おっちゃん、ありがとう」
小さい声で言った。

帰り際、自転車に跨って店から遠ざかっていくサヤちゃんに、
「サヤちゃん死んだら、ほんまに泣くからな。そやから死ぬなよ!」
と叫ぶと、
立ち漕ぎで振り返り、私に大きく手を降った。
私も大きく手を振り返した。

(らおばん)

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古本喫茶店主らおばん
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