映画「弁当の日」上映&講演会in茨木③
2日目は映画「弁当の日」に登場されている、九州大学比良松道一先生から「自炊塾」のエッセンスを学ばせていただきました。
以前、「いばらき自炊塾」で教えていただいたこと。
・子どもはチカラを持っている。出来ないのではなく、大人が環境を用意しないからやらないだけ。
・知識の前に体験。体験を繰り返す。
・人間の成長は暗記のみにあらず。
・レシピがあっても伝承できない。レシピは万能ではない。
例えば「しょう油 大さじ1杯」
しょう油も、甘いしょう油、甘くないしょう油、様々な味がある。
味の記憶は言語化できない。
・料理はスポーツと一緒。
上手になりたければ上手なプレーヤーを沢山見る。毎日繰り返す。
・つくるところを見せたら、つくることを伝承できる。
・食べる人が、つくる人の気持ちがわかるようになる。
・残された時のつらい気持ちがわかるようになるから、残食が減る。
・他者を気にする人が増える。
・大人がやっていないことを、子どもはやらない。
大人が楽しんでやることが大切。
・自分が出来ていないのに、子どもにやれ!は、説得力がない。
・お金で解決する世界を見せたら、お金で解決する世界が伝承される。
・自炊できる人が増えたら世界はよくなる。
今回は「いばらき自炊塾」特別講座を開いてくださいました。
まずは「単一だし」のテイスティング。
1~5番のだしを、それぞれの感性で言語化していきます。
そして出た言葉を分類していきます。
例えば「かつおぶしの味」と表現したとしても、「かつおぶし」の文化がない海外の方には通じません。
誰に話しても通じる言葉で言語化していきます。
皆さんから出た言葉たち。
1
しょっぱい 濃厚な感じ 魚 こげくさい すまし汁のような おいしい とろりとしている 最初に甘味がくる 煙・くんせいの香り まろやか 後味が残る うまみ それだけで美味しい こい うっすら甘い やさしい味
2
うす味 すっきりしている 軽い味わい あと味が野菜の味 いそくさい 魚の味 少ししょっぱい 魚市場 若干の苦み こうばしい かどがある 後から甘味がくる 油くささ オイリーなくささ 加工臭 (今日ははらわたをとっていないので苦み・塩分を含んでいる)
比良松先生いわく、分類を意識すると言葉が増えるので、
言葉出しの段階でこれだけ言葉が出るとだんだん表現できるようになるそうです。
食品メーカーも同じように言葉を選んでいくそうです。
さらに「合わせだし」4種類が加わり、難易度があがりました(;^ω^)
言葉の分類は以下のようにやっていきます。
ア 基本的な味 五味
イ 風味・香
ウ 舌触り 触感 オノマトペ
エ 濃淡 後味
オ イメージ 風景など
感じ方は人それぞれ。
個人で感じたことをグループでシェアして、さらにグループ単位で分類をつくっていきます。
例えば葉っぱも、1枚だけ見ても比較対象がないので何の葉っぱかわからないけれど、何枚もあれば違いがわかる。
区別がわからないのは葉っぱを1枚しか見ていないから。
いくつも比べることで、だしの特徴が見える。
そして一人で評価するのではなく沢山の人で評価するのが大事。
出てきた言葉を集めると、多くの人に共通して感じる味覚があることがわかります。
最後に答え合わせ!
意外だったのが、だしだけ飲み比べてみると、「5」を表現する言葉が全員に共通して、ほとんど出なかったことです。
その理由は「匂い」がないからだそうです。
私たちが「美味しい」と感じるには、匂いも重要だそうです。
「香で味を感じている」という先生の教えに「なるほど!」と思いました。
私たちが講座を受けている間にだしを用意してくださったのは、安定の茨木高校家庭科チーム。入交先生と村上先生。
さらに、茨木の農家さんから届いたお野菜とお米で「冷や汁」を準備してくださいました。
こうじの量が普通の2倍入っている味噌を使って水でつくる、冷たいお味噌汁です。だしを入れなくても、お味噌の味と香りで美味しくいただけます。
「自炊塾」のポイントは「Kサイクル」です。
K5 感じる
目 鼻 耳 舌 手
だしの効能を話しているうちに聞く耳がなくなるので先に体験する
↓
K? 比べる 考える
比べることが重要
2つのものがあると違いを確認したがるのが人間
人間が学びを深めるには「なぜ?」が大事
↓
K! 気付く、感動する、行動する
みんなで共有すると他の人の言葉に触発されて言葉が出てくる。
勉強と同じくらい「暮らしが大事」と思ってもらいたい。
トップリーダーになる人がそう思ってくれたら、政治や、企業が変わって社会が変わる。
暮らしを大切にすると自然と誰かのことを思いやれるようになる。
誰かを思いやる気持ちは食を通して伝えることができる。
若い人がなぜ自炊をしないか?
普段のスタイルで経験してこなかったから。
大人たちがやってみせることをしなかった。
教えることをしてこなかった。
文化は伝承。まずは先輩たちがやってみせないといけない。
協働して暮らさないと人間は生きていけない。
人間が火を手にいれたのは約20万年前。
今まで食べられなかった生ものを食べられるようになった。
個人で採って食べていた時代からみんなで採って加工する時代になった。
共同調理が人類の出発地点。
一緒に調理して食べることで人間になれた。
原点を忘れないようにするためには一緒に料理を囲んで食べること。
人間にしかできない営み。
共食を楽しむことは人間にしか作れなかった文化。
食を通して人とつながることが大切。
食べることは人との関わりを育てていく。
説明しなくても体験することで、行動変容が起こる。
これがわかるとどこでどんな素材で食育をやってもうまくいく。
参加者の感想が、まさにそれ!でした。
2日間にわたり大切な事を教えてくださった比良松先生、ありがとうございました。
18歳からの自炊塾
今回の企画は『チャレンジいばらき補助金(茨木市提案公募型公益活動支援事業補助制度)』を活用させていただいたため、市役所職員さんをはじめ、沢山の方に助けていただきました。
心から感謝いたします。
「勉強」と同じくらい「食」が大事。
そう思える大人が増えたら、100年先の未来が変わるかもしれません。
皆さんのアンケートをまとめた報告も、あわせてごらんください。
映画「弁当の日」上映&講演会 開催報告