こども家庭庁設置準備室視察
私たちの活動は大阪府茨木市を拠点としていますが、人に境界線を引くことはできないので、市町村を越えた他機関との連携も得意としています。
今、子ども・若者の世界で起こっていることを知るために、こども家庭庁設置準備室の職員さんたちが、大阪の現場を視察しに来てくれました。
認定NPO法人 D×P
もともとLINEを使った10代の進路相談「ユキサキチャット」で若者のサポートをしていましたが、コロナ後は、アルバイトに入れない若者の生活相談と、心の相談が増えました。
そこで始めた食料支援と、現金給付。
親に頼れない若者の現状が見えてきました。
政府の支援は「世帯単位」で行われるため、世帯主を頼れない若者には、国の支援が届いていませんでした。
未成年者は契約行為に保護者の同意が必要なため、虐待などを行政が把握して公的なサポートがされていないと、一人では社会で生きていけません。
・コロナの影響でアルバイトのシフトに入れなくなった。
・オンライン授業が増えたことにより、人と会えずに心が弱っていった。
そんな課題も見えました。
生活が苦しくなっていくのと同時に、心も苦しくなっていき、状況がどんどん悪くなっていく… 一人では解決しないことばかりでした。
「傾聴」だけではなく、「解決」が必要なケースが増えました。
若者の賃金の低さ
奨学金という名の借金の負担
役所が稼働している時間は若者も稼働しているため手続きに行けない
書類の負担が大きく制度に辿り着かない
世帯単位では届かない
若者に届くわかりやすい啓発が必要(文字だけでは伝わらない)
若者とつながるためのツールの見直し(紙やFAXが基本ではなくSNSが基本)
改善に向けて、課題をいくつも伝えさせていただきました。
ミナミ (グリ下)
お金がないと生きていけないので、仕事を求めて繁華街に人が集まります。
安心して過ごせる家があればいいですが、家賃が払えずネットカフェを転々としていたり、家で虐待やDVを受けていると路上で過ごすことになります。
折しも、そんな若年母子からSOSが入りました。
すぐにオムツと離乳食、赤ちゃんと一緒に過ごせるホテルを手配。
これからどうしていくか、一緒に考えていきます。
さくま診療所
月間、約150件の人工妊娠中絶に対応しているさくま診療所。
その多くが20代です。
性教育が行き渡っていないことによる、妊娠。
女性だけが痛みを負う、中絶。
中絶は保険適用されないので、約10万円(妊娠初期の場合)の金銭的な負担も大きいです。
知識のなさによる悲しい結果は、防ぐことができます。
【大阪府だけ】で、年間約200件の未受診・飛び込み出産があります。
理由の1位は「知識の欠如」
妊婦さんの平均年齢は約26.3歳です。
厚生労働省によると、虐待死で一番多いのは「予期しない妊娠」です。
未来を守るためにも、性教育は急務です。
スマルナステーション
若者が性の悩みを気軽に話せる場所がユースクリニックです。
スウェーデンには250カ所以上あります。
関西初のユースクリニック、スマルナステーションは、無料で相談できます。LINE相談もあります。
2階がさくま診療所。
3階がスマルナステーションです。
婦人科の診察は他人に「性」にまつわる話をするので、
大人でもハードルが高いです。
まして家の近所だと、病院に入るのを誰かに見られるのも困る時があります。
さくま診療所とスマルナステーションは、大阪の繁華街ミナミのど真ん中にあるので、「遊びに行ってきた」と、言いやすい場所にあります。
同じビルに Cafe NooNe も入っています。
(若者は、親子や恋人同士で位置情報をアプリで共有しているケースも多いので、診療所に行ったことがバレてしまうと困る)
お金がかかると、相談へのハードルがぐっと上がります。
一人で書類を揃えるのも、ハードルがぐっと上がります。
まずはユースクリニックで無料相談。
一緒に書類を揃えて、さくま診療所に行く。
そんなやさしい流れができているから、相談に来てくれます。
自分が困っていることすら、わからない状況の人もいます。
「何かお困りですか?」と聞かれても、家族のこと、お金のこと、体のこと、心のこと…何からどこまで話をしたらいいかわからないから、相談できない人もいます。
気づくためのツールを用意したり、相談しやすい雰囲気づくりを工夫されていました。
にしなり☆こども食堂
こども食堂を10年やって見えた課題は、親も、そのまた親から「暮らし」を学んでいないということでした。
子どもだけではなく、親にもケアが必要でした。
そのために必要なことは、言葉による「指導」ではなく、一緒に暮らして、見て・学んでもらう、実家のような関わりでした。
市営住宅が手狭になってきたので、すぐ近くの老人憩いの家を寄付を募って改装中です。
サービスハブ西成
「再チャレンジできるまち」を合言葉に、若年層を対象とした、西成版サービスハブ構築・運営事業です。
長年、西成で子育て支援、居住支援、就労支援…様々な支援に携わってきた力量のあるスタッフさんたちが集まってできたので、学ぶところだらけです。
NPO法人釜ヶ崎支援機構
小林大悟さん(写真左から2人目)が、お話を聞かせてくれました。
子どもだけではなく、親もしんどい。そのまた親もしんどい。
親しか見ていないから、それ以外の大人のイメージができない。
職業のイメージも限られてくる。
遊びの中で想像力が養われるのに、遊ぶ機会も少ない。
親が子どもと関われないからスマホを持たせる。スマホを初めて持つ年齢が低い。
人と関わるリアルな遊びの機会が失われる。
イメージ力や、見通しを立てる力が弱くなる。
遊びの中で、勝った・負けたの経験が乏しいから、失敗した時に次のチャレンジをおそれる。
子どもの頃に、もっと豊かな体験をしてほしい。
親にもいろんな価値観を知ってもらいたい。
そのために、制度ではなく、地域の多様な関わりが必要。
ボ・ドーム大念仏
一つの場所で、母子が必要とする全ての機能を持っている施設です。
特筆すべきは、「大阪市産前・産後母子支援事業」です。
「予期しない妊娠」が虐待死の一番の原因だと前述しました。
虐待死ゼロを掲げるなら、妊婦が安心して相談・生活ができて、ケアを受けられる場所が必要です。
約1年間で、18人が無事に出産しました。
約1年半で、171名を支援されました。
予期しない妊娠で悩んでいる女性が、どれだけ多いことか…。
利用者理解が大切。
リスクではなく、その人の出来ることを見つけて、いいところを伝える。
「〇〇が出来ていない」と、リスクだけを指摘されたら人は支援を受けたいと思わない。
改善したところ、良いところをアセスメントシートに書いていく。
当事者不在で話をすすめない。本人に必ず確認をする。
原体験がないことはできなくて当たり前。指導ではなく、一緒にやる。
だから生活を共にする場が必要。
親子一緒に支えていく。
ここでも「実家のような場所が必要」という話が出ました。
産前・産後は、親も甘えさせてもらえる場所が必要です。
ボ・ドームの取り組みは、クローズアップ現代で紹介されました。
NHKクローズアップ現代
孤立する母子を救えるか 増加する“特定妊婦”
大阪市の子ども・若者政策
最後は、大阪市の子ども・若者政策の推進に尽力されている、港区長の山口照美さんからお話を伺いました。
(もちろん、子ども・若者政策だけではなく、まちづくり全般に精通されています)
住民の願いをカタチにするのが行政の役割ですが、出来る事・出来ない事がもちろんあります。
いわゆる「支援者」と呼ばれる人の思いが強ければ強いほど、「なぜ、出来ないの!?」と、憤りを感じることがありますが、同じゴールを目指す者同士。
お互いの得意分野を活かしながら、制度の狭間を埋めていくしかありません。
行政同士も同じで「なぜ、縦割りなの!?」と、役所同士で憤ることもよくある話です。
大阪を例にすると「府が」「国が」と、階層ごとに壁があるのも「あるある」です。
こども家庭庁は、縦割り・階層の壁を壊す役割を期待されています。
根本にある考え方を全機関で共有することができれば、自ずとやるべきこと・必要なことは定まっていきます。
一人でも多くの方が笑顔になれるように。
安心・安全な毎日を過ごせるように。
私たちもがんばります。
それぞれの持ち場で、みんなで知恵を出し合って、人と人が当たり前に助け合える社会をつくっていきます。
お世話になった皆さま、ありがとうございました(#^^#)♡
大阪の見てほしい現場を沢山見てもらいました。
国の政策に活かされますように!