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斉藤龍一郎を悼む 《Dr.本田徹のひとりごと(79)2020.12.23》
さようなら斉藤さん、
あなたは温かくて、とにかく面白く、まためっぽう人を面白がらせる人でした。
上野・丸幸ビルの玄関でたまさか会うと、いま読んでいる本のことなど、
熱っぽく、すこしはにかんで、でもノンシャランに、話してくれました。
「年会費を払うことも忘れずに」と、いたずらっぽいタメ口で。
最後のメールでは、熊野純彦『マルクス 資本論の哲学』という本を紹介しつつ、
今はこれをしっかり勉強している、とおっしゃっていた。
斉藤さん、
お送りした山谷の卵せんべいがうまかったと言ってくれたあなたからの、
最後のメッセージは、ほとんど私には了解不能なレベルの、
詰屈な長い引用がしてありました。
「おっと。これはちゃんと本を読んでから、ご返事しよう」と思っているうちに、
あなたは先に逝ってしまった。
あなたとは、アフリカのトマト缶やケチャップの工場が、
いかに世界的なヘゲモニーの戰爭と、つながっているかについて、
ルモンドの記事をめぐっても、やりとりをしたのでした。
そして、たしか2004年立岩真也さんの『不動の身体、息する機械』が出たとき、
真っ先に「絶対読みなよ」と勧めてくれたのもあなたでした。
この本をもう半年早く読めていたら、ある在宅ALS患者への、
私のかかわり方も変わっていたかもしれないと、あとでホゾを噛んだのでした。
希代の読書家で、思いやり深かったあなたに、
満腔の感謝を捧げつつ、さようなら。
いまはどうか、にぎやかに、彼岸で、
楽しい座談をしながら、天使たちを抱腹させつつ、
ゆっくりおやすみください。
注1)斉藤龍一郎さんは、元アフリカ日本協議会(AJF)の事務局長で、12月19日肝細胞がんのため逝去されました。シェアと同じ東上野の丸幸ビルに事務所があり、本田とは時々意見を交わす仲でした。
注2)ALSは、筋萎縮性側索硬化症という神経難病の英語略称。
(2020.12.22 ほんだ とおる)