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Dr.本田徹のひとりごと(41)2012.7.3
新版「文明の十字路から -
一医師のアラブ=チュニジア記」(連合出版刊)について
:プライマリ・ヘルス・ケアを考える小さな本
新版「文明の十字路から -
一医師のアラブ=チュニジア記」(連合出版刊)について
:プライマリ・ヘルス・ケアを考える小さな本
しばらく「ひとりごと」もお休みしていました。たいへん申し訳ないです。久しぶりに書かせていただく今日は、手前味噌の小さなお知らせとなります。
本田が32年前に、佐久病院で農村医学の研修をさせていただいていた時期に書き上げ、連合出版から出させていただいた、標記の本が今度「32年後に書き加える序章 - チュニジアのジャスミン革命とプライマリ・ヘルス・ケアの21世紀」と題する一章を付して再出版されました。(アマゾンから購入可能です)
本が再版されるきっかけとなったのは、台東区や墨田区のNPOや看護・介護・福祉・医療関係者らと、生活困窮者や社会的に困難な境遇に置かれた患者さんやクライエントに対するプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の視点からの、支援の在り方や地域包括ケアの勉強会を2-3年前に始めたことでした。そのへんの事情は「32年後に・・・」に書いてありますが、とくにあやめ診療所の伊藤憲祐さん(本田の個人アドバイザーでもあります)のお世話になりました。若い医師・看護職などに本書を薦めてくれた伊藤さんに改めて感謝です。実は、私にとって恩師である佐久病院の若月俊一先生が晩年に、若い医療者や学生に薦める一冊としてこの本を挙げてくださっていました。
日本におけるバイオエイシックスの優れた先駆者木村利人先生が喝破されているように、「キュアからケア」に向かう、21世紀のグローバルな保健・医療の潮流の中で、WHOなどの国際機関、途上国をはじめとする各国政府、なによりも草の根で暮らす人々、市民が改めて、「プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)」の今日的な意味と必要性を問い直そうとしています。大震災と原発事故に苦しみ、超高齢社会に突入し、少産多死の第4の健康転換(Health Transition)の時代を迎えた日本にとって、ほんとうのPHCの実現は、ことのほか切実な課題だと信じます。
折しも、チュニジアはじめ中東の国々では、痛みと苦難を伴う民主化の動きが滔々と、とどめがたく進んでいます。このことが、長期的にはより開かれ、圧政の頸木を免れた中東社会への道を開き、パレスチナの問題にも明るい解決の光が差し込むことにつながるよう、市民としての連帯を強めていきたいと願っています。
なおこの本の表紙のロバを描いてくれたのは、小生の従弟で画家の伊藤京介氏です。彼の優れた絵筆が捉えてくれた動物の深い表情が、今のチュニジアの人々の思いを象徴しているように思えてなりません。伊藤さんの名を本に記しそこなったことをお詫びしつつ、その伊藤さんを含めシェアを応援してくださってきた皆さまへの感謝を、改めて申し述べます。
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