虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会UNIT LIVE! ~A・ZU・NA LAGOON~DAY1&DAY2
○はじめに
2023年2月4日/5日に東京ガーデンシアターで開催されたA・ZU・NA LAGOONに参加した。DAY1は現地、DAY2は配信である。
○江ノ島へ
ライブへ向かう足取りは重かった。今回のライブは楠木ともりさんの、せつ菜役として最後のステージだからだ。
不安を紛らわすため、女性声優の残滓を追って江ノ島へ向かった。
透明なポリマーを敷いて、穴の中にいる状態のチンアナゴを観察できる展示があった。結構キモい。
江ノ島水族館を出て、腹ごしらえにクアアイナ片瀬江ノ島店へ。
さすがミア・テイラー御用達のバーガーチェーン。うまかった。
○ライブへ
1Fバルコニー席だった。隣のブロックに恐らくキャストの親族の方々のための関係者席があり、リアルMELODY(せつ菜が両親に宛てた曲)じゃん…と感慨深くなった。が、Happy Nyan Days(ラブライブ界のはっぴぃにゅうにゃあ)では声出し解禁によってオタクたちのにゃんにゃんコールが響き渡り、この世の地獄が顕現。ご家族の皆さまに申し訳なくなった。
○かおり
前田のMCなー、お前それは言っちゃ駄目だろ前田…ともりの決意や覚悟、気配りを台無しにしかねない。はっきり言ってダサいぞ。でもそんなダサいことして許されるのは前田の人徳なんだよな。
あの日のともりはあんなにもせつ菜そのものだったのに、前田のMCに「その話すんな」って突っかかる瞬間、変身が解けて「楠木ともり」に戻った気がした。
最後にどうしても、「優木せつ菜」じゃなくて「楠木ともり」に会いたかった。かおりがいなかったら、ともりは「優木せつ菜」であることを貫いてライブを終えたかもしれない。あの日のともりはそれくらい神懸かりだった。どこまでもせつ菜たらんとする彼女から「楠木ともり」を引きずり出せたのは、大女優の演技を忘れたみっともない涙だけだった。
ありがとう、かおり。
○あぐり
ただ、このまま最後湿っぽくなるとともりの本懐に対して申し訳ないし、かおりが咎を負ってしまう。それは嫌だ。しかし虹ヶ咲にはあぐりがいる。あぐりのMCに対するともりの「まかせる」という言葉、良かったなあ。そうだ、彼女に任せとけば大丈夫なんだ。あぐりはともりの信頼に応えた。しんみりし過ぎないように、おちゃらけ過ぎないように、会場の空気のバランスをとってくれた。彼女のファインプレーに支えられたライブだった。あぐり、昔は他グループのリーダーオブザリーダーってオーラを放つオレンジ色組に比べて頼りなく見えたんだがな。こんなに立派な座長になりやがって…ありがとう、あぐり。
あぐりのMCを聞くと気持ちが明るくなる。どんな物語もハッピーエンドにしてくれる。Love U my friendsが人の姿になったような女性だ。MCの締めに彼女がいてくれる限り、虹ヶ咲のライブはいつだって明るく楽しいライブであり続けるだろう。
だからこそ、最後の最後にそれまで気丈に振る舞っていた彼女が決壊した時は耐えられなかった。その涙を見て、このライブが終わったら変わってしまうものの重みが、一気に実感を伴ってのしかかってきた。
ああクソ…こいつらをもっと見ていたかったな…これからもっとすごいことになるんだよこいつらは…ずっと追いかけていたかった…悔しいなあ…
○ともり
だが腐ってる場合じゃない。アンコールの最後ではトキランが披露された。TOKIMEKI Runners、虹ヶ咲の始まりの曲。その最後のフレーズで、彼女は「始まれ」と歌ってステージに幕を引いた。これは終わりではなく始まりなのだと。
振り返れば、彼女たちに与えてもらってばかりのライブだった。最後のステージを湿っぽい「楠木ともりの卒業ライブ」にはしないという矜持。ともりはもちろん、あぐりもかおりも、みんなが気を遣ってくれていた。賑やかで楽しい、いつも通りのAZUNAのライブになるように。
俺たちはともりのラストライブを見送るつもりだったのに、彼女たちはもっと先の未来を見ていた。MCでともりは何度も話していた。これからもニジガクを、AZUNAをよろしくお願いしますと。我々は彼女から未来を託された。「始まれ」と命じられた。
CHASEのシャウトを歌い終えたともりの笑顔が今も脳裏から離れない。私はやり切ったんだ、と言うような満面の笑顔。あの笑顔はともりから私たち、そしてこれからせつ菜を演じるキャストへの「次はあなたの番」だったのかもしれない。
せつ菜が同好会を閉じる終わりの曲だったCHASEは、歩夢と高咲の心に火を灯し、新たな同好会の始まりの曲になった。あのライブでだってそうさ。彼女の後任も、必ずあのパフォーマンスを目にする。ともりの渾身のCHASEを。何なら、もうあの会場で見ていたのかもしれない。
ともりの歌も新しいキャストの灯火になる。せつ菜の歌が歩夢を導いたように。でも、あんなに素敵な女性の後釜は、不安や苦労もたくさんあるだろうな。俺たちが応援しなくては。高咲が歩夢の背中を押したように。彼女が灯してくれた火を未来へ繋いでいくために。
あの日、あの場所で、終わってしまったものは何一つない。ともりも、俺たちも、虹ヶ咲も、AZUNAも、せつ菜も、ここからまた始まるんだ。
彼女は全てをやり遂げ、一つも悔いを残さずステージを降りていった。
次は俺たちの番だ。
○アルバム
楠木ともりさん、本当に、本当にありがとうございました。