言葉の力と中小企業診断士2次試験
社長Sくんの講演
高校同級生による、高校生に向けた講演を聴く機会がありました(息子が母校の高校に通っているため)。
とある音楽プロダクションの社長さん。彼の会社では才能を発掘して有名アーティストに育て、売り出してチャート上位を狙う、という事業をやっています。ミッションは感動を届けることだそう。デモテープの段階で若き才能を見出し、アーティストと一緒になって楽曲を制作して感動を届ける。彼自身が育成して、全国的に有名になったアーティストがたくさん。講演中にPCから曲を流してくれました。どれもすごく優しく響き、心がこもっていて、言葉が入ってきました。ヒット曲ばかりなのでこれまで何度も聞いたはずなのに、なぜか違う歌に聞こえる。なぜだろう?きっと彼のこれまでの苦労話や信念に心打たれたからなのだと思う。
熱い「想い」を持つ
社長のSくんは、高校2~3年で同級でした。やんちゃな男子ばかりのサッカー部の中で、とても優しい人柄でした。今回の講演で初耳だったのですが、小学校の1年間、難病でずっとベッドに寝かれ、テレビも読書も一切ダメ。許されたのはラジオで音楽を聴くことだけだったとか。中学でも運動禁止。高校に入学し初心者でサッカー部に入ったのだそう。まさか初心者だったとは・・・。
今は軽音が全国レベルの母校ですがその当時はまだなく、有志がバンドを結成して活動していて、Sくんもその一人。小学校での辛い体験から、音楽が彼の中で大きなものになっていたのでしょう。就職で音楽の道に進むことを決め、ずっと一筋で活躍し、多くのアーティストを輩出してきたすごい努力家。
翻って、自分は同じ高校にいたのに、同い年なのに、何をやってきて、何を成し遂げたのだろう・・・・(汗)まだ高校生の息子にはそうならないよう、しっかり成功者の話を聞いて日々の生活を送ってほしいものです。
「言葉」の力
Sくんがアーティストを発掘し育成する際に特に重視していたのは「歌詞」。伝える「言葉」があるからこそ、「感動」を届けられる。歌の歌詞ってずっと心に残りますものね。何度も聞いているから残るというより、自分の中で腹落ちしているから心に沁みつくのでしょうね。言葉がメロディーに乗って多くの人に伝わり、世代を超えて歌い継がれていく・・・素敵な仕事だなあ。Sくんは今は社長という立場になったので、現場でアーティストと曲作りをしたり、プロモーションをバリバリすることは少なくなっているかもしれない。でも会社を引っ張る社長さんの熱い想いは社員やアーティストのみなさんに伝わり、その結果多くの素晴らしい曲が生まれているのでしょう。
独りよがりにならない
「言葉」の大切さの他にSくんが繰り返し言っていたのは「独りよがりにならない」こと。自分が絶対いけると見込んだアーティストや曲が、良い結果にならなかったことも多かったそう・・・。それは自分の思い込みで突き進んではいけないということなのだと思う。そうそう、私も思い込みで客観的な判断ができなくなりがちなのでこれは心に刺さりました。
中小企業診断士として
最近は副業の活動で、診断士として中小企業様に新商品や新たなサービスの提案をすることがありがたいことに少しずつ増えてきました。わざわざ診断士にお金を払ってまで(駆け出しなので本当に少額ですが)、相談するということは、お客様にとって社運を賭けた大きな事業であるはずです。自分にとっては本業とは違う、知見のない業界。提案にあたっては業界の状況や特徴を理解する必要があります。なんとなくとか、思い付きの、独りよがりの提案するなんて、とんでもありません。経済・社会情勢や外部環境・内部環境分析(SWOTや3Cとか)や、お客様の想い、目指している姿、制約条件のヒアリング、さらにはネットやアンケート調査などを重ねて、ようやく客観的な説得力のある提案ができるのだと思います。まだまだ十分でないなあと、Sくんの話で、はっと気づかされました。初期仮説は思い付きやアイデアも大事ですが、それが納得できるものなのかどうか、根拠に基づくものなのか、成功に導くことができるものかどうか、検証を重ねることが大事ですね。
「言葉」で届ける
そしてSくんも重視する「言葉」。お客様への提案も、どのような言葉を選ぶかで全く説得力が変わりますし、もちろんお客様のお客様(消費者)とのコミュニケーションでも、「言葉」が大きく左右します。その「言葉」も表面的なものではなく、「想い」を込めることで伝わり方も違います。曲ならメロディー、プレゼンならプレゼンターの熱い想い。Sくんのプレゼンは音楽に対する想いがすごく伝わってくる、本当に素晴らしいものでした。
2次試験対策はコンサル現場に直結
中小企業診断士2次試験を前に、受験生の皆さんはこの2か月半は事例問題にたくさん取り組むのでしょうね。振り返ると8月の今頃は、何を書いたら全くわからずアタフタしていました。しかし、暗記力を問われる1次試験と異なり、事例を解くこと自体はとても楽しくなってきたものです。事例で登場する社長さんに感情移入して夢中で解いていたことを思い出します。自分は全然できていませんでしたが、事例問題もやはり客観性や説得力は大事ですね。2次試験では「与件文」と1次試験の知識が根拠になります。さらには、社長さんの想いを汲み取った、納得するものでないと社長さんは受け入れてくれません。2次試験においても、こうした「根拠」と「想い」に応える助言が点数につながる気がします。
そして事例問題で鍛えた分析力や提案力は、実際の中小企業支援でそのまま活きると思います。先日の提案でも、2次試験を通じて学んだ3C分析、SWOT分析、「だなどこ」のフレームワークをフル活用しました。受験生の皆さんは、2次試験対策は、受験だけではなく現場で使えるものであることを、ぜひ頭に入れて取り組んでほしいなあと思います。
「中小企業診断士として」夢中になって社長さんを助言してくださいね。きっと想いは通じます!受験生の皆さん、応援しています!!