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風と稲穂の指定席へ座るプレイリスト

夏の終わりに聴きたい曲を集めた「過ぎ去った夏が作り出したプレイリスト」(記事)に続き、秋に聴きたい曲でプレイリストを。そもそも、イベントも少ないし、描く事象も少ないからかホントに季節の中で一番扱われてないのが秋かと。あと、9月とか11月とか月指定のも入れればもっとあるけど、今回は全秋対応曲のみで。

1. Base Ball Bear「(LIKE A)TRANSFER GIRL」[AM1:00]
平凡な日々に現れた突然の転校生のような、あの頃のときめきを呼び寄せる会社の同僚との逢瀬を描いた1曲。秋のプレイリストなのに初っ端から粉雪が出てきてしまうのだけど。秋〜冬に吹く風を想起させる流麗なメロディーが降り注ぐ。「息を潜めた街」というシーンにぴったりな、ダンサンブルだけどクールな聞き心地。ラストの押韻も見事にキマッてる。

2.きのこ帝国「金木犀の夜」[AM2:00]
少しいなたく懐かしいサビがこのバンドには新鮮なポップソング。「会いたい 会いたくない いつの間にか随分遠くまで来たな」と引き返せぬ日々の思い出がプルースト効果の如く金木犀の香りで蘇ってくる様を描いた気恥ずかしくも普遍的な世界観が素敵だ。しかしソングライターの佐藤千亜妃は金木犀の香りを知らずにこれを書いたという。想像力のバケモンかよ。

3.KEYTALK「フォーマルハウト」[AM3:00]
今でこそ、夏フェス熱狂請負人のポジションを確立した彼らだけど、メジャーデビュー寸前の1stフルアルバム『ONE SHOT WONDER』には、首藤義勝の物憂げな歌声が光る繊細な名曲も。伸びやかなギターが夜空に溶けていくよう。フォーマルハウトとは、夏の大三角形の下方にあるみずのうお座の恒星のこと。だから歌詞中に「四辺形」が出てくるんですね~。

4.シナリオアート「サヨナラムーンタウン」[AM4:00]
秋曲不足を補うべく、月夜の歌は何でも候補に挙げてたけど、流石に節操ないのでこれのみを。性急な疾走感で、別れのその時を演出するドラマチックなロックナンバー。ツインボーカルだから、こういうテーマにおいて強靭な物語性を帯びる。派手なアレンジも得意とするバンドだけど、削ぎ落したこういう曲も感情直結型な感じで良いのだ。

5.ACIDMAN「降る秋」[AM5:00]
秋めくとACIDMANが聴きたくなるの、きっと大木伸夫の声が寄与してるところが大きいと思う。しかしこの曲はいわゆるその秋に聴きたい渋さというよりも、彼らのハードコアサイドが露わとなった剥き身の激情がダダ漏れのナンバー。歌詞も、きっと語感重視なんだろうけど、歌い出しでさっそく「月の砂」が登場してて、宇宙との因果関係がどこまでもあるなぁ、と。

6.吉澤嘉代子「残ってる」[AM6:00]
2010年代に生まれた秋の名曲として語り継がれそうな予感がある。ディテールにまで魂が行き届いた詞世界は、ファンタジーを得意とする彼女にしては珍しく極めて“生活”の延長な女の子の姿という趣。上擦った声を活かしきり、爆発寸前の思慕がまざまざと刻まれてる。どこまでもリアルな描写だけど、不思議と性的なアクを感じさせないのも彼女の作家性の高さゆえか。

7.ART-SCHOOL「ダニー・ボーイ」[AM7:00]
一転して、どんなに純粋な気持ちを綴れども、性的なアクを一切消しきれないバンドの曲。アコギの音色が印象的、寂しげ(なのはいつものことだけど)な様子に拍車を掛けている。ART-SCHOOLはジャケット写真とかに秋を感じることが多いバンドな気がする。あと、「シャーロット」も負けず劣らずの秋の名曲ですが、朝7時、寝起きのイメージでこちらに。

8.チームしゃちほこ「夢でもいいの」[AM8:00]
同じ年にリリースされた春のシングル「Cherie!」と対になる秋の曲。作詞作曲はJ-POP界のどセンターSAKRA氏で、編曲に元電気グルーヴのCMJK氏を迎えたエッジとポピュラリティが見事に共生した楽曲。ネオアイドル歌謡とも呼べるような先進的なのに親しみやすくてキュートなメロディに、ガーリーに振り切った歌声が乗っかる。とろけます。

9.Sugar’s Campaign「いたみどめ」[AM9:00]
2人のトラックメイカーによるポップスユニット。アルバム『ママゴト』は、家族をテーマにした市井に生きる人々を切り取った楽曲が並ぶ。幼き子の冒険心をそっと見守る親心のようでもあり、自分自身の新しい冒険の始まりのようでもある。循環し合う世界の摂理が、歌のお兄さんのようなボーカリストあきおの声で、高揚するトラックの上で展開されていく。

10.9mm Parabellum Bullet「コスモス」[AM10:00]
狂暴かつエクストリームなバンドだけど、ヘヴィなメッセージ性からは距離を置き、詩情を抱き寄せたようなこういう曲もまた良い。こちらも、雪国が舞台だから雪が降っちゃうのですが。コスモスって、秋の象徴だけど意外とロックバンドは扱ってなく、この曲も歌謡曲を9mmでやるならば、という志向が垣間見れる。優しげに揺れる一面の花畑が目に浮かぶ。

11.南波志帆「セピア」[AM11:00]
NHK-FMのおしゃべりお姉さんであり、渋谷系を2010年代へと継承するガールズポップシンガー。レーベルを立ち上げ、自身で作詞作曲も一部担当するようになってからの1曲は、10代の頃は歌えなかった心情にもタッチしている。どこから来たの?というような、異次元でハイファイなコットンボイスも、温かで大人びた音像にフィットする円熟味を持つように。

12.ELLEGARDEN「The Autumn Song」[PM0:00]
歌い出しから「夏が終わってさみしいね」である。そして「雪の降る季節を待っている」と続く。秋の中間管理職的な立ち位置を的確にさらっと表現してあるのが面白い。サウンドはカラッとしつつ、やはりどこかメランコリーな気分にもなるメロディ。散々その理由を探しといて、後半に「きみのくれた手紙」の存在を思い出す、とても情けなく、男っぽい曲。

13.ストレイテナー「Sunny Suicide」[PM1:00]
日々に現れた、得も言われぬ神秘の瞬間に畏怖を思う、幻想的なナンバー。最初のバースは夜の描写なのだけど、そこには目をつぶれるくらい、2バースの「金色に染まる秋の雨上がり」という場面がぴったり似合う。揺蕩うようなアレンジを施されたグルーヴィーな演奏でロマンチックなメロディを支える。ステップを踏むようなリズムも印象的だ。

14.ASIAN KUNG-FU GENERATION「君の街まで」[PM2:00]
エルレ、テナー、アジカンが並ぶこのゾーン、とても気に入ってる。アルペジオNo.1のフレーズだと思うイントロ、青春感をほのかに残しつつ、日本語パワーポップの極みに到達してるような名曲。「2時をさす影」という明確な時刻指定がありがたい。風景描写と心情描写の混ざり方とか、改めてアジカンの確立した詞世界の影響ってのちの世代に及びすぎである。

15.アルカラ「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」[PM3:00]
ロック界の奇行師を自称しながら、こんなどストレートな別離の歌を初期から歌い継いできてるわけだから、ずるい。こちらも歌い出しで「午後3時起床」、ありがたい。残された男が、果たされなかった未来と続いていく世界に思いを乗せた楽曲。ライブでは終盤に演奏されることが多く、破壊的なエモーションでトドメを刺す様にどうしようもなく胸が熱くなる。

16.パスピエ「あきの日」[PM4:00]
初期パスピエが持っていた匿名性が少し怪しげな雰囲気として機能してる1曲。唱歌のような歌い回しで、昔ながらの思春期問答が展開されていく。和風×レゲエ調なギターフレーズはフジファブリックフォロワーとしての面目躍如だ。この曲も歌い出しで「PM4:00だった」と明示。どこかけだるげで所在ない、秋の昼下がりの気分が見事に音楽に代わって再現されている。

17.おいしくるメロンパン「あの秋とスクールデイズ」[PM5:00]
3分間をキュッと駆け抜ける爽快さとともに、ぐらぐら動く気持ちまでも緩急自在な演奏で表現する、コンパクトながらアイデア豊富な1曲。気が狂ったように「情けない」を繰り返すBメロ、微病み。少年性の強い歌声で、瞬時に放課後の教室へと場面を切り替えてくれる。つるっとした聴き触りの言葉の中で、突然「鈍痛」とか「心臓」がグサッと飛び込んでくる。

18.チャラン・ポ・ランタン「プレゼント」[PM6:00]
軽やかなアコーディオンが哀愁たっぷりな、こちらも別れの歌。秋の曲にそういうテーマが多いのか、単に選者の好みで偏りが出て来てるのかは分からない。サーカス音楽のような絢爛なものも得意とする彼女たちだけど、こちらは最低限の音で、夕暮れに吹き荒ぶ木枯らしのようなアレンジ。少女性を僅かに見せながらも、ローの強めな歌声に情念のようなものも溢れる。

19.GOING UNDER GROUND「トワイライト」[PM7:00]
このプレイリストのタイトルはこの曲の歌詞から。ロックシーンを代表する秋の歌かと。一行ずつ丁寧に書き写したくなる歌詞の美しさもさることながら、そこまでブチ上げて血圧は大丈夫なのか、というBメロからサビへのの飛翔っぷりがとんでもない。アレンジも、キーボードの表現の最上まで行ってる。常に涙目なボーイミーツガールバンドの、象徴的な1曲。

20.フジファブリック「赤黄色の金木犀」[PM8:00]
メジャーデビュー時点で、四季盤と銘打ったシングルを出すほどに、彼らの音楽性と季節の移り変わりの親和性は誰の目にも文句なしだったというわけで。中でも、この最低限の言葉数で圧倒的な「ひとり」を表現した秋盤の完璧な仕上がり。胸を締め付け続けるメロディは永遠。細やかなイントロのリフレインがそっと余韻を残す、徹底されたセンチメンタリズム。

21.くるり「宿はなし」[PM9:00]
ノスタルジーを誘うアコーディオンの音色が楽曲を引っ張る、名盤『図鑑』の終曲。岸田繁による、拳の効いた歌声はさながら浪曲のよう。日暮れの川べりで立ち尽くしたその目に映るタイムラプス写真のような詞世界で、癒しと赦しに向かっていく曲展開は圧巻。歌詞に出てくる「べんがら格子」は、京町の民家で昔から用いられてる格子戸のこと。その町を背に、と。

22.サカナクション「ライトダンス」[PM10:00]
宿がないなら踊ってしまえばええじゃないかという曲順になってしまってる。サカナクション特有の勇ましい合唱と、何につけても「でも明日が見えなくて」と繰り返す異様なサビなギャップが良い違和感。純日本語でありながら造語と言い回しを駆使した滑らかな言葉運びが気持ち良い。出世作『シンシロ』の中核を担う、キャッチーなド派手なダンスロック。

23.東京事変「今夜はから騒ぎ」[PM11:00]
椎名林檎も東京事変も、秋と歌詞中に出てくる曲は結構多いけど、一番そういうノリではない曲を入れてみた。浮雲a.k.a長岡亮介がふらりふらりと歌い出し、濃厚なグルーヴと外連味が渦巻く大人のパーティーチューン。世界観は、野蛮で浮世離れしてるけど、聴きながら中洲の街を歩くと自然と気持ちが上がってくるっていう、妙な洗脳効果もあって楽しい。

24.小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」[AM0:00]
オザケンの秋の歌なら「いちょう並木のセレナーデ」だろと言われかねないけど、この曲にも「人気のない秋の渚」が登場するから。何にせよ、クライマックスに相応しい、旅立ちのアンセム。「誰もみな手を振ってはしばし別れる」って、最初聴いた時はピンと来てなかったけど、歳を取るにつれて、あぁこのことか、と妙にしっくり来たり。人生を照らし続ける1曲。

「風と稲穂の指定席へ座るプレイリスト」
1.(LIKE A)TRANSFER GIRL/Base Ball Bear
2.金木犀の夜/きのこ帝国
3.フォーマルハウト/KEYTALK
4.サヨナラムーンタウン/シナリオアート
5.降る秋/ACIDMAN
6.残ってる/吉澤嘉代子
7.ダニー・ボーイ/ART-SCHOOL
8.夢でもいいの/チームしゃちほこ
9.いたみどめ/Sugar’s Campaign
10.コスモス/9mm Parabellum Bullet
11.セピア/南波志帆
12.The Autumn Song/ELLEGARDEN
13.Sunny Suiside/ストレイテナー
14.君の街まで/ASIAN KUNG-FU GENERATION
15.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト/アルカラ
16.あきの日/パスピエ
17.あの秋とスクールデイズ/おいしくるメロンパン
18.プレゼント/チャラン・ポ・ランタン
19.トワイライト/GOING UNDER GROUND
20.赤黄色の金木犀/フジファブリック
21.宿はなし/くるり
22.ライトダンス/サカナクション
23.今夜はから騒ぎ/東京事変
24.ぼくらが旅に出る理由/小沢健二

また冬に、、、、

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