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ミチルさん、今日も上機嫌

読書は好きだが、集中して読むことが少なくなった。少し歯ごたえのある内容だと、細切れでは理解が進まず中年女子ありがちな「過去に読んだ本を読み返す」と一点張りとなってしまい・・・あぁ、すでの回想法の対象者かよ、と自己ツッコミをしている。
そんな中。久しぶりに本を購入した。
原田ひ香の「ミチルさん、今日も上機嫌」

著者である原田ひ香はワタシより2つ年下。ミチルさんは私より設定年齢が2つ上。作品の設定が10年前くらい。
そのミチルさんは離婚・無職の45歳、色々なしがらみから解き放たれて、昔、縁があった男性に連絡を取り過去の答え合わせをしてゆく。過去に自分に向き合いながら現在の自分のあり方を考えると言う内容。ありがちな「人生、捨てたもんじゃないよ」という結末だけれど、読後感はとても爽やか。同年代だから少しひいき目な視点もあるし、自分の過去と照らし合わせて「あぁ、当時はそんな時代だった」と振り返る部分もあるので、身に染みるというか・・・これもまた回想法と言えばそうなんだけれど、純粋に面白かった。

私は日本が豊かだった時とバブルがはじけて「失われた10年」と言われた年代を社会人として過ごしてきた。今から思えば「勘違いしていたなぁ」と思う事も当時は当たり前に享受していたし、バブルがはじけて組織で働くにはIT必須と言われた時代を何とかやってきた。(ちなみに大学卒業時にPCは一般的に使われるツールではなかった。)
このころの年代は微妙で、2年年上だと社会に対する目線が全く異なる。私が就職活動をしていた大学4年の夏は、この本に書かれているような今では常識外れというような就職活動をしていたが、半年後の卒業の時には、特に金融業界だったが自宅待機という措置を取って企業もあった。
本の主人公であるミチルさんはバブルを享受した最後の年代だろう。まして「若い女性」というのが大きな意味を持つ時代でもあった。

不景気しか知らない年代も大変だろうが、私たちの年代は価値観のアップデートが大変だったという実感がある。
それでもこの本のタイトルにあるように、時代の象徴として描かれているミチルさんは上機嫌だし、私もおかげさまで基本的に上機嫌で暮らしている。

おそらくこの本は読むとミチルさんの苦労を「そんなの調子に乗った時代を勘違いして過ごしてきたんだから自業自得だろ」と思う人もあると思う。でもミチルさんは若い時に培ったスキルを武器に自身の信じる道を進んでいく。そこにある種の普遍性を感じて、この年代に自信をもたらしてくれる。

ミチルさんも私も、所謂「初老」と言われる年齢だ。自分はこの年になって新たな環境に身を投じ、18歳までという若いクライエントと接し、それから自分の子どもと同年代の先輩職員と仕事をして価値観の違いを感じて戸惑う事を多かったが、私は私で良いという自信を貰ったような気がする。

内容は小難しくなく、サクサク読めるのでお風呂読書にちょうど良い。明日への活力にするべく風呂場に常駐させるとしよう。