マハーバーラタ/3-18.ドゥルヨーダナのラージャスーヤ
3-18.ドゥルヨーダナのラージャスーヤ
翌朝再びラーデーヤがやってきて説得した。
「ドゥルヨーダナよ。パーンダヴァ達はこれまでの苦い経験の全てを忘れたりはしないでしょう。あなたを許したとは考えてはなりません。
しかし、それでもあなたは将来を恐れる必要はありません。
私がアルジュナを殺します。あなたはビーマを殺すでしょう。他の三人は誰かに任せましょう。
さあ、立ち上がってください。新たな太陽が昇りました。新しい希望が私の胸に立ち昇っています。それはあなたが私の願いを拒まないという希望です」
ラーデーヤの言葉と昨晩の夢が一緒になって、ドゥルヨーダナに新たな命を吹き込んだ。
彼は微笑みながら立ち上がった。ラーデーヤの手を握りしめた。
「あなたの言うことは正しい。自殺なんて馬鹿げたことだった。
敵であるパーンダヴァと戦う為に生きる。
彼らは私の兄弟ではない。彼らを倒し、この世界を支配する、それができなければ、クシャットリヤらしく戦って天界へ行く。私の決意は固い。さあ帰ろう!」
ハスティナープラでは先に森での出来事のニュースが伝わっていた。
ビーシュマはドゥルヨーダナに言った。
「森での話は聞いた。ガンダルヴァに負けたそうだな。あなたの愛するラーデーヤがいても勝てなかったと。
パーンダヴァ達は気高き者で、あなたの友人よりも優れた戦士だったのだ。
彼らと仲直りして平和を求めてはどうだ? それがこのゴーシャヤートラーの結末としてふさわしかろう」
ドゥルヨーダナは声高に笑って集会ホールから出ていった。
ビーシュマも嫌気がさして出ていった。
ドゥルヨーダナはラーデーヤに相談した。
「ユディシュティラが行ったラージャスーヤ。あれを見てから、自分でもあれがしたいとずっと思っていた。手伝ってくれないか? あなたの力があればできると思うんだ」
「もちろん手伝いましょう。準備を進めてください。私は周囲の国々を回り、あなたに反抗する気のある王達を征服してきましょう」
ドゥルヨーダナは司祭を呼んだ。
「私はラージャスーヤを行いたい。準備せよ」
「ドゥルヨーダナ様、お言葉を返すようですが、ラージャスーヤを既に行ったユディシュティラ様はまだ生きており、あなたのお父様が王としてご存命であるうちにそれを執り行うのは適切ではありません。
しかしあなた様がどうしてもというなら、しなければなりません。
場所を決め、あなた自身の手で土地を耕してください。
そしてラージャスーヤの為のホールを用意しなければなりません。
あなたに反抗しそうな王達を事前に征服しておく必要があります」
ドゥルヨーダナは全ての条件に同意した。
ラーデーヤは遠征に出発した。
彼が戻るまでにその他の準備が大急ぎで進められた。
準備が整い、クル王ドゥルヨーダナによるラージャスーヤに参加するよう全ての王達に伝令が送られた。
ドゥッシャーサナはドヴァイタヴァナへ伝令を送った。
「パーンダヴァ兄弟の所へ行き、彼ら全員をラージャスーヤに招待してきなさい」
伝令がパーンダヴァ達の元へ到着した。
「我らがカウラヴァ王ドゥルヨーダナがラージャスーヤを執り行います。その儀式にあなた達が招待されました。それを知らせに参りました」
ユディシュティラが答えた。
「ドゥルヨーダナがラージャスーヤを行うことは喜ばしいことです。
ですが、私達は追放の身、約束の13年間が終わるまでハスティナープラの町に入ることができないのです」
ビーマが言った。
「そうだ。13年が終わったら町に入る。
そしてあなたの王や罪深い子分達を捧げ物のヤギとして儀式を行ってやるさ。そう伝えるんだ」
伝令はハスティナープラへ戻り、彼らの返事を伝えた。
ラージャスーヤが華やかに執り行われた。
カウラヴァ一族に味方するたくさんの王やラーデーヤの遠征によって征服された者達が参加した。
ドゥリタラーシュトラは息子がラージャスーヤを執り行ったことに幸せを感じていた。
しかし、中にはユディシュティラのラージャスーヤと比較する者もいた。
「まあ、素晴らしい儀式だが、インドラプラスタで行われたものほどではない。偉大さが感じられない。ユディシュティラのラージャスーヤの方がはるかに印象的だったな」
それでもほとんどの参加者は素晴らしいと感じ、ドゥリタラーシュトラやドゥルヨーダナにそう伝えた。
全ての儀式が終えられ、ドゥルヨーダナは長老達に挨拶をして部屋に帰った。ラーデーヤを抱きしめた。
「ラーデーヤ、あなたのおかげで無事にラージャスーヤを執り行うことができました。そしてあなたの助けでパーンダヴァ兄弟を排除し、ライバルのいない世界を統治することになります」
「その通りです。何度も言ってきましたが、もう一度言わせてください。
私がアルジュナを殺すことを誓います。どうかそれを成し遂げるまで待っていてください。私はこの誓いが成し遂げられるまで、足を洗わず、肉やワインも口にしません」
ドゥルヨーダナは彼の献身にとても喜んだ。
「私が偉大なラーデーヤを拠り所とする時、どうすれば将来に対する不安を持つことができるでしょうか。パーンダヴァ兄弟はもはや既に死んだも同然です」