【三島に訊け】#3 約束は破れ
諸君らは約束を守れる人間か?
まさか「はい、守れます!」なんて堂々と言わんでくれよ。
約束を守るのは、器の小さい人間がやることだ。
今の時代、酒を飲んで運転したら謝罪をし、酒を飲んで裸になれば謝罪をし、そっから禁酒までするらしいな。
「もう二度と酒は飲みません」と言っては、メンバーとお世話になった先輩に許してもらうまで5年間も飲まなかったとか。
なんて肝っ玉の小さい…。
昔はマリファナをパンツの中に隠し持ってるのがバレて、会見で「もうパンツは履きません」なんてぬかした大物もいたってのに。
そもそも約束ほど曖昧なものはない。
人間の細胞は数年でそっくりそのまま入れ替わるらしい。
そしたら「約束をした時の俺じゃあない」なんてことも言えるわけで。
また「明日、恵比寿に18時ね」と言ったところで。
1分後に事故って死ぬかもしれないし、富士山が噴火したら東京中の都市機能が壊滅するかもしれない。
つらつらと書いたが、つまる所約束なんてものが守られる保証はどこにもないのだ。
そのために裁判や法律はあるが、それらも守られなかった後の祭りでしかなく、『約束が守られる』なんてことは人間の「美しい幻想」でしかない。
一方で、約束が破られた時は悪いことばかりが起きるのではない。
例えば大手銀行が取次に不正などしようものなら経済は大混乱になるが、かつて幕府が徳政令と称して借金を踏み倒した時などは、民衆の支持を大きく勝ち得たものだ。
つまり、約束を守るということは健康状態を維持するだけのもので。
約束を破ることは「劇薬」を飲んで毒となるか、転じて薬となるかみたいなことである。
真面目な諸君らに、もう少し劇薬の効能を教えてやろう。
例えばこんなスケジュールがあるとする。
10:00 Aに千円返しに行く
15:00 企画会議に課長の代理で出席する
18:00 Bとデート
結論から言えば、全てすっぽかしていい。
まず10:00の「Aに千円返しに行く」だが、守らなくていい。
もし守らずにAが「あいつは千円返さなかった。あいつには金を貸すな」とでも言ったとしよう。
するとAは周りから「あいつはみみっちい奴だな」と思われるに違いない。
一方君は「豪快な奴だな」と思ってもらえることだろう。
次に15:00の「企画会議に課長の代理で出席する」だが、これも出なくて良い。
もしこれで会議に穴が空いてしまったとしたら、部長はカンカンに怒るだろう。
ただしそれは「課長に対して」だ。
そして課長の評価が下がれば、君の評価が相対的に上がるかもしれない。
最後に18:00の「Bとデート」だが、大いにすっぽかしなさい。
もちろん何日かは腹わたも煮え繰り返っていることだろう。
しかし、そこから粘り強く連絡を絶っていれば、向こうは「事故にでもあったのでは」と心配して警察にまで頼るかもしれない。
そのあとに君から連絡してやれば、彼女との愛は一層深まることだろう。
さあ、分かったなら明日の予定は全部キャンセルにしなさい。
空いた時間はパチンコにでも行けばよろしい。
サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。