親愛なる、みうらじゅん様へ
2018.12.29
拝啓 年の瀬になり2018年も平成さえも終わりが近づいて参りました。みうらじゅん先生におかれましては、峨眉山ブームに引き続き、ますますのマイブームを仕込んでおられることと存じます。
さて、この度は勝手ながら1ファンとして、あなたに焦がれるものとして手紙をしたためさせていただきます。
届くことない想いかもしれませんが、今日書かずにはいられないのです。
まずは簡単な自己紹介からさせてください。
私は岡勇樹(おか ゆうき)と申します。
1995年に大阪の吹田市という土地に生まれ、岡本太郎先生が作られた「太陽の塔」のふもとで育ちました。(写真とは関係ありません)
今はソーシャルゲームの運営・開発をおこなう会社に勤めており、今年で新卒2年目になります。
プロジェクトマネージャー(PM)という仕事に就いており、100人規模の大きなチームでスケジュールの管理や組織の改善などに従事しています。
ですが、その会社を12/28に退職いたしました。
理由は「みうらじゅんになりたいから」です。
少し私の話をさせてください。
私は子供の頃からお笑いが大好きでした。
母が好きで録画していた漫才のビデオを毎日のように繰り返し見ていて、学校でも漫才を披露し、小学生ながら「面白いが全てだ」と思っていました。
中でも島田紳助さんや千原ジュニアさんなど、話の上手い人が大好きで、寝るときには必ず「松本人志の放送室」や「ナイナイのANN」を聴いています。
それは今でも変わっていません。
そんな私が初めてあなたを知ったのは大学生の時です。
ワイドナショーという番組に突如現れた「みうらじゅん」という男は、得体の知れない風貌と経歴で私は画面に釘付けになりました。
ニュースで「小学生のお受験問題」が取り上げられた時、茂木さんが「フロー状態が…」と説明した後に、話を振られたあなたはとんでもないことを言いました。
「旗が縦だからダメなんですよ。」
東野さん、松本さん、茂木さんはポカンとしてしまい、自分も驚いて声が出ませんでした。
そしてその瞬間には惚れていました。一言惚れ(ひとことぼれ)です。
なんてトンチンカンなことを言う人なんだ。
なんて身勝手で面白い人なんだ。
この人は一体何なんだ、と。
それまで見てきたどんな芸人とも一線を画す面白さ。
「この人は生き方そのものがエンタメなんだ」と思いました。
そこから私はあなたの本を読み漁り、あなたの哲学に触れました。
そのどれもが海よりも深く、難解で、私はズブズブと沈んでいきました。
そして数年後、私は今の会社へ入社しました。
名刺の二つ名には「みうらじゅん絶賛敬愛中」と入れました。
しかし、そこから仕事に打ち込んでいくにつれ、私のマインドは徐々に「まとも」になっていきます。
最初こそ苦しんだ時期もありましたが、次第に成果も出てきました。
ついにはPMという大きな役割を任せてもらえるようにまで。
仕事はとても上手くいっていました。
やればやるだけ評価されるし、周りから信頼してもらって、お給料もたくさんもいただいていました。
多分、向いていたんです。
全てが順調。
全てが完璧。
そう思っていました。
ですが、「PM」として評価されるほど「MJ」からは遠のいて行く気がしました。
・「DT」ではなく「IT」の知識が深まる
・「クソゲー」ではなく「ソシャゲ」をプレイする
・「マイブーム」より「アジャイル」だよね
そんなモヤモヤを抱えたまま、私はある日Twitterのタイムラインでこんな投稿を見つけます。
「行かなければならない、みうらじゅんが俺を呼んでいる」
私は翌日の予定を全て取りやめて、高円寺へ向かいました。
そして3時間ロビーに並んで無事に当日券を手に入れ、私はお二人のトークショーを見ました。
圧巻でした。
「SIXPADを新幹線の座席に貼り付けてみたんだ」
「この山ガビってる(峨眉山みたい)でしょ」
どこから本気で、どこからふざけているのかまるで分からない。
というより「本気でふざけている」といったほうが適切かもしれません。
とにかく面白かったのです。
楽しかったのです。
そしてほんの少し悔しくもありました。
このおじさん達は何一つ「正しいこと」を言っていない。
でも、どれ一つとっても「楽しいこと」しか言っていない。
ズルい。
カッコ良すぎる。
今まで真面目に考えて「正しい答え」を探すことにコミットしてきた自分は何だ。
何も面白くない、キモい。
「みうらじゅんが全て」
「俺はみうらじゅんになる」
その日そう確信しました。
私はその日から一切のビジネス書を読まなくなりました。
NewsPicksも購読を辞めました。
そして昨日、会社を辞めました。
これからは、誰からも「求められてない仕事」をやっていきます。
恥ずかしい思いをたくさんします。
そして、それらがあたかも「真っ当」であるかのように見せてやる。
そんな屁理屈をこねて行きたい。
いつか、みうらじゅん賞をいただけるその日まで。
岡勇樹