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#03 仕事どうするか問題②|上海帯同

どうも、上海アラサー駐在妻です。
結婚2年目、子供はいません。


さて、前回からの続きです。



半強制的にキャリアを見直せる特権


自分のこれからのキャリアをぐるぐると悩み続ける中、ある人からの一言で、またも私の中にはなかった発想に出会うことができました。

それは、この2年間一緒に新規部門の立ち上げに尽力してきた同僚に、現在の自分の状況を打ち明けた時のことです。
その人は私より10歳以上も年上の男性社員でしたが、同じように営業経験もあり、社内でいくつも新しいことにチャレンジしている、とても尊敬できる方でした。

せっかく事業が軌道に乗ってきたタイミングで、私がチームから抜けなければならないことには、私自身後ろ髪を引かれる思いでしたし、周りに迷惑をかけてしまうことを責められても仕方がないと思っていました。

しかしその同僚は、まずは私が結婚したいと思えるほど大切な人と出会えたことを、心から祝福してくれました。
そして、同じチームのメンバーとしてでなく、一人の友人として、会社のことは二の次でいい、私が悔いのない選択をするべきだと、言ってくれました。


そして、話をする中で何気なくこんな話もしてくれました。

「僕たち男性は、退職や転職するにしても、自分の自発的な行動でしかキャリアをやり直したり、方向転換することってほとんどないじゃない? でも女性は、結婚や出産で一度立ち止まって考えてみたり、思いっきり道を変更したりする機会が、半強制的にやってくる。もちろんそれは制限を伴うし、人によってはハンデに感じてしまうこともある。 でも、僕はちょっと羨ましいとも思ってしまうんだよなぁ・・・」


その同僚はすでに結婚して二人のお子さんにも恵まれ、上の子は中学受験を控える年齢になっていました。
たしかに、その状況で新しいことに挑戦してみたいと思っても、守るものが大きすぎて、なかなか一歩を踏み出せないでしょう。その同僚も、新卒以降同じ会社で働き続けていることに後悔はないものの、もし半強制的にキャリアを見直す機会があったら、自分はどんな選択をするのか、少し興味が沸いたのかもしれません。


私は「たしかに、捉え方によっては、これは良い機会なのかもしれない」と思うと同時に、身体を壊さない限り、永遠に走り続けなければならない男性側のプレッシャーを、少しだけ垣間見ることができました。

今の自分にとって、必要なもの

それから約4か月、私の気持ちは次第に「一旦キャリアをリセットしてみること」に傾いていきました。

今の会社は大好きですし、大きな不満もありません。育ててもらった恩を返したいという気持ちもありましたし、こんなタイミングが来るまでは、自分は一生この会社で働き続けるのだろうと思っていました。

しかし、「いずれはマーケティングに携わりたい」という気持ちを芯に頑張り続けてきた私にとって、それが叶った今、目標を見失ったような状況であることも確かでした。
いままで培った知識や経験を活かせている一方、ある意味カルチャーショックを受けるような、新しいインプットが不足していることにも、心のどこかで危機感を感じていました。

入社10年目前後というと、徐々に実力をつけて最先端で活躍しつつ、上司や後輩からも頼られ、非常に有能な”中堅戦士”へと成長している方も多いと思います。
しかしその一方で、少しずつ会社の悪い部分が見えてきたり、自分の待遇に不満を持ったりして、居酒屋で「これだからうちの会社はダメなんだ」とか「最近の若者はまったく・・・」とか「使えないおじさんたちが居座っているせいで自分たちは・・・」とか、会社の愚痴をつまみにダラダラと飲むことも増えてくるのではないでしょうか。


私は、自分にも少しずつ、そんな”驕り”が芽生えてきていることが、怖かった。

このままここにいたら、自分がすべて正しいと勘違いしているような”裸の王様”になってしまうのではないか。
せっかく新しい世界で、自分の常識では計り知れない経験ができるかもしれないのに、仕事があることで安心して、そのチャンスを存分に生かさないまま、日本に帰ってくることになるのではないか。


仕事を失うことは、怖い。

いままで纏ってきたすべての衣服を剥ぎ取られ、”ただの人間”になることが怖い。
時間を持て余し、周囲からの承認を失い、自分のちっぽけなプライドが、少しずつ傷ついていく日々を生きるのは、とても怖い。


だけど、今の自分にとっては、それが必要な気がする。

自分のありのままを認めること。
そして、一度地に落ちたとしても、そこから開き直ってあらためて行動してみること。
そうやって、本当に自分にとって大切なものを見極めること。


上海帯同を決めてから約4か月後、私はようやく直属の上司に相談する決心がつきました。


結果


私は上司に時間をとってもらい、今まで悩んできたことのすべてを打ち明けました。

結婚が決まったこと、その相手が海外駐在になったため一緒についていきたいということ、キャリアを継続したい思いもあるが、現地の仕事にはフルコミットできる自信がないこと、どうにか今の仕事に携われる方法がないかも思案しているということ・・・


心の中ではほとんど退職する決心はついていましたが、もしかしたら自分の思いつかなかった方法があるかもしれないと思い、上司にはあえて相談ベースでお話ししました。

上司は概ねの意向を汲み取ってくれた上で、社内でどんな対応がとれるかを模索するため、一度持ち帰らせてほしいと言ってくれました。


それから約1か月。

上司の口から告げられた会社としての方針は、「私に働き続けたいという意思があるのなら、海外部門へ異動して上海法人へ出向させることはできる」というものでした。
いち社員の個人的な理由にもかかわらず、それだけ譲歩してくれただけでもありがたい限りです。人事部や海外営業部の知り合いからも個人的にメッセージをもらったりして、関係各所が動いてくれている様子も漏れ伝わってきていました。

しかし、上司からそれ以外の提案がなされなかった時点で、やはり今の仕事を継続する方法はなかったということになります。


私の心は決まりました。

一応表向きは「少し検討させてほしい」と言ってその場での回答は控えましたが、後日退職の意向を伝えました。



いま、上海にきて思うこと


こうして私は仕事を辞めて、上海に帯同してきたわけですが、今こうやって当時を振り返ってみても、気持ちはほとんど変わっていません。

もちろん、仕事をしていないことを負い目に感じたり、毎日出勤していく夫を少し羨ましく感じたりすることも、ゼロではありません。(そういう時はたいてい生理前か、中国語がうまくいっていないときです。笑)

しかし、なんだかんだで日中の時間は過ぎていきますし、心配していたメンタル面も、今のところ健全を保っています。


たとえ同じ結論だったとしても、やはりこの道を「自分で選んだのだ」と思える過程が、私には重要でした。

時間を自由に使えたことも、結果としてたいへん良かったと感じています。
上海に来る前、私は2か月間ほど実家で両親と生活することができましたが、仕事があったらそうもいかなかったと思いますから。

どこの会社も現地の日本人スタッフは少なく、駐在員は長期休暇を取るにも、なんとなく周囲と調整しながらタイミングを窺っています。夫婦一緒に一時帰国をするためにも、やはり片方が柔軟に対応できると何かと便利です。


しかし、何か次のキャリアにつながるような経験ができているかといえば、まだ何もできていないですし、中国語もまだまだ全然聞き取れません。笑
焦っても仕方ないので、そこは自分の精神状態とも相談しながら、興味のあることにひとつづつ挑戦できたらと思っています。
(このnoteもそのひとつです)


実は、私の会社にはジョブリターン制度というものがあって、退職5年以内であれば復職の権利が与えられます。
しかし、本帰国後に復職するかどうかは、またその時の私の気持ちと相談して、慎重に決めたいと思っています。

せっかくキャリアをリセットできる機会をいただいたのだから、この上海生活で起こる環境の変化や、自分自身の変化を楽しみたい。
自分にとって本当に必要なもの、これからの生き方の”核”となるもの、生きていく場所、そんなものに少しでも近づけたら、このリセット期間は大成功です。


そしてまた、時が来たら冷静に、しなやかに、生きる道を”自分で”決めたいと思います。



それでは。


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