「NEIGHBORS. vol.2」 ①

話を今回の展示に戻そうと思います。

今回の「NEIGHBORS. vol.2」の展示をしている場所は、ポレポレ東中野の入り口の階段壁面です。いわゆる写真ギャラリーではないため、光量やスペースが非常に限られています。20cm x 60cm のフレーム4セットで計14枚の写真があります。1番大きいサイズが133mm x 100mmのため、写真展として見に来られるだけだとご期待に添えないかもしれません。 ですので、何度も言うようではございますが、映画と合わせてご覧になっていただきたいなと思います。

展示されている写真の構成は、それぞれ異なる状況のベトナム人労働者3組と、映画を見たあとに作成した在留カードを模写してプリントした《A proof of one, 2021》など新作を含めたものとなっています。

まずはこの新作を作ろうと思ったことなどを書いていきたいと思います。

画像1

 こちらのフレームの真ん中の作品は《A proof of one, 2021》と名前を付けました。在留カードを素材にし、それらが証明する情報を削ることでその意味をなくしています。

日本に住む外国人にとって命よりも重要視される物の一つが、在留カードです。日本で生活する上で身分証として常に携帯する必要があります。私自身、仮放免の方々の取材中に警察の方に呼び止められ、在留カードを確認する現場で、持っていないと語気が変わり高圧的な態度に変わる姿を何度か目の当たりにしたことがあったりしました。

「海辺の彼女たち」の劇中でも、腹痛で苦しむフォンがやっとの思いで病院に行くが、在留カードと保険証が無いために門前払いをされてしまうシーンがあります。

受付「在留カードと保険証はありますか?」
アン「見つけたら、持ってきます。 ーすぐ見てもらわないと困ります。」
受付「決まりですので。見つけたら、また来てください。」

「海辺の彼女たち」はセリフの少ない映画です。息遣い、言葉遣い、表情、環境音などさまざま表現で彼女たちの感情を表すなかで、このシーンは主人公の1人、フォンの諦めにも似た感情を感じられ、その後の重要なシーンに繋がっていくのです。そんな分岐点の一つが在留カードの有無にあると感じました。

法律上決められているため、直接的に特別扱いができないことは仕方ないことではあります。しかし、それが苦しむ人を見捨てて良い理由にはならないのではないでしょうか。法律を理解した上でどうしようもなくて頼りに来た彼女達に私だったら何ができたのだろうか。劇中の彼女たちが、実際の社会の中にいる事実を考えれば、避けては通れない疑問だと思っています。

今の社会のシステムでは、書類や身分証が、人の命よりも重くなってはいないでしょうか。だからこそ、見て見ぬふりをしてしまう。決められた書類に判断を任せた方がリスクを背負わずに済む。そう考えることは理解できます。私自身、社会人一年目で、やらなきゃいけない事が出来てなさすぎて、他のことに手がまわらない。そんななかで、他人に対して余裕が無さすぎる自分に嫌気がさします。 

映画や写真展を見に来てくださった皆さんのそれぞれの生活の中の「彼女たち」は必ずしもベトナム人技能実習生ではないのだと思います。同級生やパートナー、道端で出会っただけの他人かもしれない。周りに困っている人がいたら手を差し伸べる。それが当たり前にできるようになっていきたい。

そんな思いで展示をさせていただいています。


○ 来週の在廊予定。

7月11日 (日)  14時ごろ〜

7月15日  (木)18時ごろ〜 

7月16日 (金)19時ごろ〜 ※事前にご連絡があった場合

7月18日 (日)15時ごろ〜


○ 「海辺の彼女たち」上映スケジュール

16時20分〜17時55分



是非映画とあわせてご高覧いただきたいです。

よろしくお願い致します。

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