恋愛っぽくない話
ハードディスクの容量が逼迫してきて、
好きだったテレビ番組の毎週録画をやめようとした。
8年前に買ったテレビのハードディスクの中には、
未視聴の番組がズラリと並ぶ。
いつの日からか観なくなったあの番組は、
ハードディスクの容量をジリジリと埋め尽くしていくだけの、ただの電子データとなってしまっている。
自分が変わってしまったのか、
好きだったあの番組が変わってしまったのかはもう覚えてない。
またいつか観るかもしれないという
昔好きだったあの人とのいい思い出を抽出しただけの
無駄な期待をもつことへの息苦しさを感じる。
異性の友人が、
互いに恋愛感情が無いことをアピールするための
立ち振る舞いをしている時のような、
そんな立ち振る舞いをすればするほど、
裏を返せば意識しているように見えてしまう時のような。
互いの本心はどうであれ、
そういった、恋愛っぽくて恋愛っぽくない感情を思い出す。
そして、毎週録画をやめようと決意するが、
やり方がわからず断念する。
少し調べればすぐにわかることだが、
そこまではしない。
そこまでするほどの決意では無い。
もうおそらく観ることはないだろう。
ただ、少し調べて、
録画をやめるほどのことでもない。
本棚に並ぶ古い本たちを、
引っ越しのたびに一緒に連れていくかのように、
無くても困らないが、あったら少し困る。
だけど、それでいい。
全くもって合理的ではない判断を下し、
これまでの時間を全て無駄にした。
好きなら好きと伝えればいいという
人間的なようで機械的なアドバイスを
素直に受け入れられなかった、
恋愛っぽくて恋愛っぽくない感情に
答えを導き出すことができなかった、
あったら少し困る、
恥ずかしいあの頃の感情を思い出した。
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