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フタの上で温めてください

召し上がる直前に入れてください。

そう注意書きがある液体スープが入っているタイプの
カップラーメンがある。 

だいたいそこには、フタの上で温めてください、とも書いてある。

僕はたまに職場の休憩室で
カップラーメンを食べるが、
あれをやるのは少し勇気がいる。

あの、おままごと感が少し恥ずかしい。

カップラーメンという名の小さなキッチンで、
お湯の温度を使って液体スープを温めるという、
おままごと感が。

だから僕は、そのタイプのカップラーメンの時は、
思考を変える。

フタの上で温めているんじゃない、
蒸気でフタが浮くのを防ぐために、
この液体スープで抑えているのだ、と。

もちろんそれは自意識過剰で、
そんなことは誰も気にしてない。
気にするわけがない。

それ以前に、
フタの上で液体スープを温めることは、
商品側面の作り方の説明欄に記載されており、
さらには、液体スープの袋にも大きな文字で書いてあるのだ。

だから、説明書通りの行為に違和感を持つ人などいない。

でも恥ずかしいものは恥ずかしい。
こればかりはどうしようもない。

だから、他の人がフタの上で液体スープを
温めているときは、それを見るのが恥ずかしいし、

「うわー、あの人フタの上に液体スープ置いてるよ」

と思う。

つまり、この行為を恥ずかしいと思ってる人がいるとしたら、
僕がフタの上で液体スープを温めているところを見て、
同じようなことを思っているのではないだろうか。

そんなことを考えていると、
自意識過剰なだけだと言い聞かせ抑え込んでいたはずの
恥ずかしさがまた蘇ってくる。

でも大丈夫だ。

僕がやっているのは、
カップラーメンという名の小さなキッチンの上で
液体スープを温めているのではなく、
蒸気でフタが浮くのを防ぐために、
たまたまそこにあった液体スープを置いているだけなのだから。

気がつくと、5分経っていた。

まだ麺が硬かった。
フタに大きく熱湯5分と書かれているのに。

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