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ドラッガー「マネジメント」から読み解く2020年不動産市場動向 その1

【概略】
2020年現在の国内の不動産市場動向についての分析結果概略と、ビルオーナー視点からのビル管理運営の実情と最適化について、顧客ヒアリング結果などを元にドラッガー著「マネジメント」による解析を行う事を本記事の趣旨とする。
・行政による土地区分
不動産市場には主に地理的区分、用途的区分として不動産登記情報に基づくものおよび、人口の流出入、増減による統計的な区分にて大別される。すなわち登記簿における
① 住居地域(第一種/第二種、低層/中層/中高層住居専用、田園住居、準住居)
② 工業専地域、工業地域、準工業地域
③ 商業地域、近隣商業地域
④ 農業地域、休耕地
という区分および、国交省の土地区画整理事業対象地であるかどうかによって区分される。また、従来の土地区分に加え、国道、県道、町村道、私道、農道に面している土地であるかや、道路の広さなどによっても土地の建蔽率規制や価値や運用方法が従前より行政の都市計画によって大きく変動する時代に差し掛かっている。これはすなわち戦後無秩序に行われた土地開発によるスプロール現象化した都市再整備及び、インフラの最適化を目標とするものである(国土交通省「土地区画整理事業の特徴と実績」による)
 さらに、東京都や大阪府といった人口密集地帯における再開発は自治体の意向も大きく絡むため、国交省の動向と複合的に勘案して都市再開発の動向を分析する必要がある。

・資産としての土地区分(都市部)
 我が国の都市部における不動産市場の複雑な点は、政府自治体や行政の動向に加え、民間による再開発計画や農水省などの他の行政府の意向が複雑に絡み合っている点、地方では地権者や地元住民、商業組合や観光組合などの政治的な影響力の強さが、土地が資産になるか負債になるかが決定する傾向が高い。都市部では戦後の混乱期による登記簿の消失や反社会勢力による実効支配による既得権益化が今なお繁華街を中心に残っており、建物より土地に重きを置く我が国の慣習と相まって都市部の再開発の障害となっているのが現状である。
 一方で、相続税・贈与税の税制改正大綱による相続困難な都心部の土地や、通勤通学困難地化した昭和のニュータウンなどの空き家問題や課税強化による土地相続放棄や売却が増加している現状を鑑みるに、都市部の大規模な再整備及びインフラの集約化が加速されるものと考えられる。(例)外苑西通りの品川延伸計画、高輪ゲートウェイ駅周辺開発
 これらの動向より、不確定さが増した不動産市場の現状に基づき、絶えず国交省や地方自治体、資産税関連の委員会などの関連文献を調査し続け、短いスパンで資産性としての土地区分がどのように入れ替わっていくかを絶えず観察する必要があると考えられる。

・資産としての土地区分(都市郊外部)
 昭和の時代に大量に建設された都心周辺のベッドタウンを都市郊外部とここでは定義する。これらベッドタウンの特徴として、世田谷区のようなスプロール現象が顕著なベッドタウンの反省を生かした計画的な大規模開発が同時に行われ、同世代の人間が一斉に入居するという、人口分布が非常に偏った形で始まった物である。このため都心部の住宅街と比べ、街の代謝能力が低く、人の流入流出が停滞しがちな傾向が見られる。多摩ニュータウンや高島平の団地群が現在老人タウンと化しており、完全に代謝が止まりゴーストタウン化ないし、神奈川県のいちょう団地のように中国系外国人の流入による人種構成の入れ替えが発生している。また、戸建て物件については日本の家屋は10年程度で建屋価格がほぼ無価値になるという日本特有の市場動向もあり、併せて店舗が大店法緩和による国道沿いの大規模店舗の影響で徒歩圏での買い物から車ありきの大規模店舗への買い出しにシフトしたことにより、幹線道路の渋滞が慢性化するといった副作用も発生している。

・資産としての土地区分(地方工業都市郊外部)
 地方工業都市周辺の住宅、商業ビルの分布は都心と異なり、住宅の密集度が低く、幹線道路の整備と幹線道路沿いに商業施設が発達している場合が多い、ただし、旧城下町を抱える地方工業都市は、繁華街や商業施設が旧城下町に集中する傾向が高い。なお衰退の度合いが高いのは後者の城下町タイプの都市が多い。車社会であるのに商業地域が旧城下町の防御区画整備の負の遺産に阻害されて再開発が進んでいないパターンが散見される。このため、郊外の幹線道路沿いの大規模商業施設と車社会とのマッチングが高く、旧城下町の商店街がシャッター商店街化しているパターンが顕著である。これは旧城下町エリアの地主の既得権益や意見の統一が困難な点が阻害している要因と推察される。また、城下町エリアと鉄道の連携が悪いのも負のスパイラルを増加させている要因となっている。アクセシビリティの改善による観光都市としての再生しか旧城下町の生き残る術は無いのが実情であり、ある意味最も再開発が困難なエリアと言える。

・資産としての土地区分(地方小規模都市)
 高齢化が進み駅前がゴーストタウン化してシャッター商店街化いるパターンがよく見られる。地主の既得権益に対するこだわりや、土地への執着が非常に高く排他的な文化性が都市の更新が困難であるのが現状である。ただし、城下町地帯と比較し、地主の高齢化と廃業が進んでいるために、再開発の難易度は相対的に低いと考えられる。また、珍しい特徴として、地元の大学の学生が古民家を借りてシェアハウスにて5-6人単位で生活しているパターンが急増している(例:山梨県上野原)投資先としては潜在的な能力がある土地であるが、都市部の人間が入り込んで事業を開始するには非常に難易度が高いという欠点がある。下名は知り合いのつてで相対取引を行い、地元に溶け込む努力を2年に渡って続けたが、その点も難易度の高い土地といえる。ハイリスクハイリターンという意味では魅了があるが、かなりの根回しと調査が必要な区域であることは否めない。

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