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頼むから静かにしてくれ~読書記録291~
『頼むから静かにしてくれ』(たのむからしずかにしてくれ、原題:Will You Please Be Quiet, Please?)は、アメリカの小説家レイモンド・カーヴァーが最初に著した短編小説集。1976年3月9日、マグロー・ヒル社から刊行された。
アメリカ文学界に衝撃を与えたカーヴァーの処女短篇集。
本書は1977年、全米図書賞の小説部門の候補作に選ばれた。
名状しがたい人生への不安とささやかな温もり……最初の数行でその世界は完璧に提示される??全米図書賞候補となった処女短篇集から表題作を含む22篇(2冊合わせて)と、訳者による作品解説収録。
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2006年、中央公論社から村上春樹翻訳ライブラリーの1つとして出版されている。
アメリカ人の作者には申し訳ないのだが、村上春樹を通さないと、この本を読むことはなかっただろうと思う。他の人が訳したのでは、多分、こんなに面白くならなかったのではないだろうか。
言い回しが村上春樹なのだ。
例えば、何度も「肯いた」(うなずいた)という表現が出て来る。
これは、IQ84でも村上春樹はこの漢字を使ってるし、好きだなあ、と思ったのだ。
他の翻訳者ならば、違う表現になっただろう。
僕は彼女の声と同じくらい小さく肯いた。(ねじまき鳥と火曜日の女たち)
僕は肯いた。そしてたっぷり三十秒ばかり、二人は黙って光線の中で揺れる煙草の煙をあてもなく眺めた。「プラットフォームの端から端まで犬がいつも散歩してるのよ。そんな駅。わかるでしょ?」 僕は肯いた。(1973年のピンボール)
他にもあるが、省略する。
語学が出来る人なら山ほどいる。英文科を出て、商社勤務などの人だっている。だが、翻訳者は、単に語学が出来るだけではなく、いかに日本語にした時に、読まれる本になるかが出来ないとダメなのだろう。村岡花子は意訳だ、誤訳だと騒ぐ人もいるが、赤毛のアンの完全訳なんぞより、村岡花子の意訳の方が断然読む価値がある。
そんなこんなで、村上春樹の日本語の堪能さが、作品を面白くさせたような気もしてならないのだ。
さてさて、村上春樹論は置いて、この作者の描くそれは、アメリカンドリームに敗れた労働者の姿という気がする。
子どもがいる夫婦が生活の為に必死で働く。その手の話ばかりだった。子供を夫に預け、夜に働く妻、などなど。
完全な資本主義の結果がこれなんだろうなと思うのだ。
そして、日本人には理解出来ない(私だけ?か!)のが、アメリカ人の夫婦は必ず同じベッドで寝なければならない。そのストレスってないのだろうか。
どちらかが寒かったとする。毛布を取られる。寝返りも打てない、鼾が酷いパートナーだと寝られないし、気まずくなっても同じベッド。
ベッドでスマホや読書なんかムリだろうな。
割と、子どもが出来た後の日本人は、子どもと一緒に寝るから、熱々で、常に抱き合っていなくても離婚なんぞに至らないのかもしれない。などと思うのだ。
夜の描写を読みながら、アメリカ人でなくて良かったと思うのだった。
結婚して子どもが出来たらもう性交渉は要らないかなの人間なので。
何はともあれ、面白い話が多かった。