不覚にも満員電車に変えられたこと
今朝、駅に着き改札を抜け、僕が利用している側のホームを見た瞬間、嫌な予感がした。
人が溢れかえるほど渋滞していたのだ。まるで掃き溜めのように。
そして今一番聞きたくない声が聞こえてくる。
「2番線に到着予定の〇〇駅行きの電車ですが、現在隣の△△駅に停車しております。」
最悪だ。これでこれからの予定も泡として消える。晴れて遅刻だ。
絶望感に苛まれる。
ふざけるなと叫びたくなる声を喉の奥に押し込んで、ドミノ倒しの人間バージョンでもやるかのようにならんだ人の列に平然を装いながら並んだ。
仕事先に電話をかけ始める大人達を横目にスマホを操作していると電車が来る。
だがここで本日2度目の絶望を味わうことになる。
見るからに満員だったのだ。幼稚園児でも乗ったら窮屈だと理解出来そうなほど人が詰め込まれていた。
ここで乗らずにどこで乗ると覚悟を決め、真顔で突入した。
痴漢を疑われたりするのも面倒なので腕は組みながら、目的の駅に着くまで圧迫感に耐える我慢比べが始まる。
そんな中ため息が時折耳に響いてくる。沈黙の車内なのでとてもハッキリと。
困り顔やキレ気味な顔も目に入ってくる。
僕も同じ顔をしていたかもしれない。
そしてふと頭の中を自分の心の声がよぎった。
「まるで俺の脳内みたいだな」と。
僕は学生の身なので悩みや不安は多い時期だ。
自分を殺していなくなりたくなるくらい嫌なこともある。喉が擦り切れるくらい叫んで怒りを発散したいときもある。
常にそんなことが自分の頭の中に渦巻いている。この状況と酷似していた。
常にいっぱいいっぱいで抱えきれない思いが詰まっている頭と満員電車。
そして、ため息を吐いた人も、困り顔の人も、僕もみんな面倒臭さや不安を抱えてるのかと同時に思った。
僕はすぐ不安を感じる僕が嫌いで、他の人はそんなすぐには不安を感じないのにと勝手に想像していた。自分を許容出来ていなかった。
だがその考えがそのとき崩壊した。音を立てて崩れ落ちた。
あ、他の人も同じなんだと思い知らされた。かき氷を食べたときの頭痛みたいに頭に響く。
自分を許容できなかった理由であるひとつの枷が外れる要因となった。
自分を認め、許容してみようかと天秤を揺らすことが出来たのだ。
そんなことで自分を認められるなんておめでたい奴だなと思ってくれてもいい。
でもこれは僕にとってとても重大なことで、欲していたことで。
歩いてみるきっかけになり得ることなのだ。