創造の源泉は、感謝その5 ダンススクールオーディションを受けるまで(前編)
こんにちは!そろそろお仕事が始まっている方々もいらっしゃると思います。昨年は、ドラスティックな変化に満ちた年でした。働き方が変わったり、そのことで家族との関係性が変わったり、誰もが少なからず影響を受けたことと思われますし、今もその渦中にあるのですよね。これまで当たり前だったものがいつの間にかなくなっていたり、相当に大きな変化ですね。この波を皆で乗りこなしていけるよう、心から願うお正月です。
さて、夢を叶えていくまでの出会いのお話シリーズですが、ロンドンに行ってからのことを書きます。
こちらが目指す専門学校。大らかに一人一人の個性を育てる素晴らしい学校でした。
日本で、専門学校に関する平田氏の著書で知った後、なんとこの学校のことは、最初にお世話になったホストファミリーから紹介されたのです。これでもう疑いようもなく、そこに通うしかないとのメッセージ、決定的な出来事でした。
最初に、ロンドン北部、ハイゲートの近く、クラウチエンドのお宅にお世話になりました。(早朝空港からタクシーに乗り込むと、運転手に「トマトと言ってみて」と言われ、眠くて半ば無意識に「トメイトー」とアメリカ式に答えると、「違う!トマート!」と矯正され、わあこの面倒くささが...いい意味で、早速イギリスに来た感じと思ってしまいました。笑 眠そうに出迎えてくれたホストマザーのスーザンへの最初の挨拶は、「早速トマトの発音矯正されたんだけど。」意味不明なものになってしまいました。笑うスーザン!笑)
上は、与えられた可愛らしいピンクの壁紙の部屋の写真ですが、窓際にいるのはお気に入りのライオンのぬいぐるみ(これものちに続く話が)、そして、壁には何と!学生時代に個人的につるんでお世話になった研究室の先輩〜とうとうダンサーになる夢を打ち明けた時、心から応援してくれた!〜の自宅にもかけられていた、ボッティチェッリの「プリマベーラ」!!ここでがんばるのよと言われ、応援されているようで嬉しかったです。のちに、この絵画を飽かず眺めてダンスにしたという、かの偉大なイサドラ・ダンカンの残したテクニックを習うことになるとはこの頃はつゆ知らず。。。(この話もまたいずれ!)
ここで最初に語学学校に通いながら、(徒歩圏内とあったのに、実際に歩くと30分!東京で徒歩15分くらいしか歩いたことのない私。汗)夜になるとこの可愛らしい部屋で、東京でいつも聞いていた、私をインスパイアしたベリーダンサー、ナグワ・フォアードの「プリンセスオブカイロ」を踊り、
Princess of Cairo: Nagwa Fouad - Egyptian Belly Dance Music
次にはヨーヨー・マの演奏するカミーユ・サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」の中のいわゆる「瀕死の白鳥」を、バレエを真似て舞うのでした。笑 これがほとんど毎日!当時から分裂していたというか、今の多ジャンルに渡る創作スタイルの萌芽は、既にこの頃から。。。
ポートレイト ~ベスト・オブ・ヨーヨー・マ~
でもね!エジプトの大スターだったベリーダンサー、ナグワのどこにひかれたかというと、腕の動きなの。(いきなり話し言葉。笑)それは滑らかで妖艶で、本当は妖艶とかありきたりな言葉にしたくないんだけど、言葉が追いつかない感じね。今でも、東京のレッスンで(スタジオのこともまたいずれ!)初めて彼女の映像を見たときの衝撃が忘れられない!そしてね、瀕死の白鳥もまた、非常に腕の動きの美しいバレエ作品。どちらも腕の動きの美に特徴があるのよ。後年何年も経ってベリーダンサーになってから、シャーラの動きの特徴は、腕の動き(と目)だと言われるようになったのも、この頃にはその志向が生まれていたのね、きっと。
ホストマザーのアイリッシュの明るいスーザンと、愉快なシェアメイトたち。これほど楽しい日々はなかったように思えるのは、夢は叶えるまでのワクワクする冒険の日々が一番楽しいような気がするからですね。叶った後は、責任と重圧とが続くので、その前に神様がプレゼントしてくれるのかなと思います。
こうした友人たちとパブに行ったり、語学学校の友人たちとシティのクラブに出かけたり、ただコーヒーを飲むためにソーホーまで出かけたりしていた、大学卒業後4月8日に日本を経って以来1ヶ月ほど経ったある夜のこと。
ユーモアと慈愛に満ちたホストファザーのクレメントから、重々しく呼び出しを受けました。常々煙がモクモクと充満する部屋で、背中を向けてタバコを吸っていて、「何してるの?」と聞くと、「I'm killing myself...自分を殺してるとこ。」というようなブラックな感じで笑わせてくれていました。大好きです。
それがこの日は、「君はなぜロンドンに来たの?聞かせてもらえる?」と、いつになく真剣に問いかけてきました。ここでまた私は、未だ良く知らない謎めいた人物に対し覚悟を決め、クレメントになら話してもいいと打ち明け始めました。「実はプロのダンサーになりたいの。でもバレエの経験もなくて、正直今からでは遅いかもしれないと思っているの。あんまり人に話したこともなくて。」すると、クレメントの目の色が変わりました。「素晴らしい!ぜひやりなさい。なぜ遅すぎると思うの?遅すぎることなんて絶対にない。ダンススクールなら、ユーストンにとても良い学校があるよ。プレイスっていうんだ。そこのレッスンを、まずはビギナーで受けて通ってみたらどうかな?」
「!!!」
ああ、また私の命と真っ向から向き合ってくれる人に出会えた。
そのクレメントお勧めのダンススクールというのが、日本からここに入学したいと思い詰めてきた、「ロンドンコンテンポラリーダンススクール」通称「プレイス」なのでした。すごい偶然!!「クレメント!ありがとう。そこ知ってる。行きたい学校なの。私、やってみる。レッスンに通ってみる!」これほどの恩人もまたあったでしょうか。あの夜に問いかけられなかったら、また悶々としていたかな。来てみたものの、勇気が出せずに。
クレメントもスーザンも、オペラなどの芸術が好きで、私が唯一東京で見たことのあるワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」のことを聞いてきたり、そのステージは、有名なテナー歌手、ルネ・コロとソプラノ歌手、ギネス・ジョーンズという組み合わせだったので、「最高の歌手たちを最初に聴けて、君はなんてラッキーなんだ。よかったね。」と喜んでくれたり。「どのシーンが好きなの?」と聞かれ、「ストーリーも好きだけど、やっぱり前奏曲が好き。」と答えたり。どうしても、踊れるか踊れないかで音楽を聞いてしまう癖はその頃からあって、今でもこの美しい前奏曲を舞いたいという野望が。二人の未来を象徴する、悲しく美しい調べが頭を離れず。。。
リヒャルト・ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」[2DVDs]
見たのはこれ!ベルリンドイツオペラ、映像があった!奇跡的に。鳥肌が立ってきました。
こうして、なかなかオーディションを受けるところまで辿り着けませんけれども。笑
今日はここまでにして、また続きを書きますね。それではまた!
暖かくお過ごしくださいね。