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3度目の北海道一周 〜その1〜 【新千歳-札幌-留萌-旭川】

最初の記事にも書いた通りnoteを始めたのは勢いだ。則ち、このnoteという場で何を書いていくか、そんな物は決めていなかった。

初めての自転車旅から順を追って書いていく事も考えたが、それではいつまで経っても「今」にたどり着きそうもない。
かと言っていきなりマダガスカルの話から始めるのも釈然としない。

そんなわけで僕の旅が明確に変化した最初の旅であり、現在の海外自転車旅のプロローグにあたる旅の話でも書こうかと思う。

海外自転車旅の練習

なぜこの旅が現在の旅へと繋がるのか。それは妻のこころ(当時は彼女)にとって初めての自転車旅であり、海外自転車旅の「練習」と銘打っていたから。
2019年の3月をもってこころが教職を退職してから、12月に出国するまでの間に「リゾバ」「自転車旅の練習」「長期縦走登山」を行うことを予定していた。

7月上旬に自転車旅の練習を行うこととなり、こころは念願であった旅館での中居の仕事を石川県で。僕は自然学校の指導補助員の仕事をしつつ、以前からお世話になっている神戸の自転車屋Rideworksに依頼し、こころの自転車を組み立てて貰っていた。

新千歳-札幌-留萌-旭川

恐怖のドロップハンドル

神戸空港から新千歳空港へはSKYMARK。運賃がお手頃なのはもちろん、荷物の超過料金が10kg毎に1,000円と安くて素晴らしい。

ハンドルをフレームと平行に固定し、ペダルを取り外し、タイヤの空気を抜いた上で業務用のラップでぐるぐる巻きに。

ラップで梱包するとこんな感じになる。

神戸空港での保安検査でなぜかこの日は大型のX線検査機が故障しており、「ラップの中が自転車のみか確認できないので開封してください」と言われる。ラップを使い切っていた上、再度梱包していたら搭乗時間に間に合わない。危機的状況に陥るも、ラップの一部に穴を開け内部を確認してもらい、テープで貼って事なきを得た。それにしても自転車旅は走り出す前から色々起こる。

新千歳空港着。外はもう薄暗い。

一悶着あったものの、快適なフライトを経て新千歳にたどり着いたのは日没間際。到着ロビーの外に出て、邪魔にならない場所で大慌てで自転車を組み立てる。

2時間少々かけて準備を終えてついに始まった自転車旅。すっかり暗闇の新千歳空港から走り始めた刹那、こころがぼそっと「このハンドル何?めっちゃ怖い」と溢した。

「わたし昔から自転車得意やから!」

旅が始まるまではそんな風に威勢の良かったこころも、初めてのドロップハンドルは体勢が怖いらしい。どことなく表情も強張っている。

恐る恐る空港の敷地を抜け、夜風の涼しい国道36号を慎重に千歳の街まで走り抜ける。そこから少し路地を走ってセイコーマートにたどり着くと、ホッとしたのか笑みが零れていた。

セイコーマートで購入した初日の夜ご飯。

旅のはじまり

千歳の道の駅で目覚めた朝。初めての連続にワクワクするこころを横目にテントを片付ける。ついに本格走行開始!まずは札幌まで。少し遠回りではあるものの、青々とした木々の美しい自転車道を行く。

旧千歳線の廃線跡を活用した自転車道。気持ちの良い道。

久々の自転車旅に浮かれてる間に札幌に着くと、車で日本一周中の友人カップルと合流。この後2週間にわたって、車とチャリなのに合流しては別れてを繰り返す。この2人がいたからこころが頑張って走れたのだ。

チャリダーのガソリンスタンド「セイコーマート」

札幌からは日本海側へと抜けて海沿いを走る。思いの外アップダウンがあり風も強い。初自転車旅のこころは体力も気力も削られて時々泣き言を漏らしていた。交通量は少ないとはいえ大型車が行き交う、長い長いキロ単位のトンネルも中々堪えたのだろう。

平そうなイメージの北海道も
場所によってはアップダウンがある。
トンネルでは背後から迫るトラックの轟音は怖い。

そんな中で心の支えとなったのがセイコーマート。
そのまま食べても美味しい「食パン」
120円前後で食べられる「チキンペペロンチーノ」
80円前後の「カップ麺」
豊富牛乳を使った「とよとみミルクコーヒー」
種類豊富な「アイスクリーム」
そしてたまのご褒美で食べる「ホットシェフ」

ホットシェフのカツ丼はめちゃくちゃうまい。
キムチ好きのこころがよく食べていたラーメン。
食べかけで汚くてすみません…
テント内での食事もセイコーマート。
人気No.1らしい。

心も身体も満たしてくれるセイコーマートは、チャリダーの最強の味方!

最北の酒蔵と入場券が縁起物だった駅

日本海に面した増毛という町に「国稀酒造」の酒蔵がある。ここは日本最北の酒蔵で、ちょっとした蔵見学や試飲が楽しめる。

「国稀」というお酒は以前の北海道を訪れた際に飲んだ思い出のお酒。しかしながら3度目の北海道一周と言いつつこのエリアは初めて。目的だったお猪口と升を手に入れることが出来、満足。

趣のある酒器が並んでいる。
北の酒場。

酒蔵のすぐ近くには2016年まで営業していた留萌本線の「増毛駅」がある。
かつてはその駅名から入場券が一部で「縁起物」になっていた。
今は(2019年当時)駅名標が残る観光地となっていたので、頭皮の健康を祈ってきた。

旅人は果てっぽいところに行きがち。
ふさふさやないか。

人生初の胸焼けになった町

増毛から少し北に留萌という町がある。北海道の北部日本海側では比較的大きな町だ。この町にはちょっとした、忘れられない思い出がある。

それは初めての北海道自転車旅でのこと。
留萌にある「みつばちハウス留萌」というライダーハウスで知り合った方から、「めちゃくちゃデカくてめちゃくちゃ安いかき揚げ丼があるらしい」という話を耳にした。なんでも、カウンタータイプの寿司屋のメニューにも関わらず、デカ盛りで1000円払うとお釣りが返ってくる金額だとのこと。常にお腹を空かせたチャリダーがそんな美味い話に飛びつかないわけがない。

そんなわけでライダーハウスで出会った旅人と共に噂の寿司屋へ。辿り着いた「漁師の店 富丸」はデカ盛りが出てくるような雰囲気の店ではなく、ちょっと良さそうなお寿司やさんといった雰囲気だった。他のメニューには目もくれず、お目当ての「かきあげ丼」を注文。そんなに待たされる事もなく提供された瞬間に「これ…デカすぎん?」と思わず笑ってしまった。

寿司ネタの切れ端なんかが入っていてとても美味しかったのだが、油物でこの量は規格外。箸休めのご飯も油を吸っていて逃げ場がない。強いて言うなら汁物が唯一の拠り所。なんとか食べた後は、ライダーハウスへと戻るだけで精一杯だった。

「あぁー、もうあかん!」

そういいながらライダーハウスの布団に崩れるように横たわったのもいい思い出。最近では歳を重ねたせいか、胸焼けが身近になってきたが、忘れられない胸焼けは何かと聞かれれば間違いなく留萌での胸焼けと答えるだろう。

寿司屋のかき揚げとあってとても美味しかった。
残念ながらかき揚げ丼は現在販売していないらしい。

そんな昔話はそこそこに、今回は少し軽めのご当地グルメを食べることに。
その名も「大判焼」というお店の名物ぶたちゃん焼」
豚をかたどった皮にカレー味の餡が入っていてとても美味。
7月でも曇り空では肌寒い北海道の気候にぴったりな食べ物やった。

それ、店名にしてまうんやなっていう店名。
特別な金型で焼き上げる豚ちゃん焼き。
留萌の市場。
新鮮な魚介類がいっぱい。
こんなお安かったのになぜ食べなかったのか。

7年前に走った道。

最初に北海道を走ったのは2012年のこと。苫小牧から襟裳岬を経て納沙布岬へ。摩周湖の脇を抜け網走からはオホーツク海に沿って宗谷岬。礼文島と利尻島を巡ってオロロンラインから留萌まで南下。そこから内陸の旭川へと向かい美瑛、富良野を経て札幌と小樽に立ち寄り、苫小牧へ。

留萌から先、旭川へはこの時に走った道と同じ道だ。

国道223号は深川留萌自動車道とJR留萌本線と並ぶように内陸へと向かって行く。自動車道は伸びる一方で、留萌本線は廃線の時が近づいていた。

変わらない景色もあれば移ろっていくものもあり。それは目の前の景色に対する僕自身の感じ方もまた然り。1人で走っていたあの時と2人で走る今でもまた違う。同じ道でも全く違う道のように感じながら旭川を目指したのであった。

つづく。

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Kazuki Matsuoka
ご支援ありがとうございます。細く長く旅先でのことや、ニッチな情報を発信していけたらと思っていますので、今後ともよろしくお願いします!