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マクドのポテトの魔法っていつ解けるか知ってる?

マクドナルドのポテトは美味しい
あの細長い形状と油分の比率が絶妙な食感と食べ応えを実現しているのだ。

しかし1点だけ、マクドのポテトにはとても残念な弱点がある。
きっと、ドライブスルーやお持ち帰りでマクドのポテトを食べたことのある人ならわかってくれるだろう。
そう……

アツアツできたてのポテトは申し分なく美味しい。
だけど、家に持って帰っただけで、どこか味わいが失われている気がする。
ポテトの魔法はどこかのタイミングで解けてしまうのだ。
この現象は、特にマクドナルドのポテトで顕著な気がする。気がするだけだけど。

とはいえ、おそらくこのポテトの味が落ちるタイミングをちゃんと把握できている人は少ないと思われる。所詮は「あるある」の範疇だ。
そこで、今回私はその「魔法が解ける時間」を実験により算出し、テイクアウトでも品質が保たれるギリギリを割り出すことにする。

実験器具

「おいしさ」というのはあくまでヒトの主観的な評価に過ぎないため、「魔法が解ける時間」を正確に求める要素としては、これだけだと心許ない。

そこで私は、ポテトの「温度」「水分量」「硬さ」の3要素を、定量的に算出することができる「おいしさ」の指標として取り入れることにした。

まず、できたての「温度」が損なわれると、大抵の料理はその食体験の醍醐味を失う。きっとポテトの魔法にも大きく関係しているはずだ。

そして、ポテトを美味しいと感じる重要な要素が食感だ。できたてのサクサク感は「水分量の少なさ」と「適度な硬さ」があってこそ。時間が経ってふにゃふにゃしなしなになったポテトに魔法など宿っていないのは一目瞭然だ。

そして、これらの値を測定するための実験器具が以下である。

赤い銃のような機械が「赤外線温度計」。非接触式の温度計で、フライパンなどの熱さを見るのに使われるものを用意した。

ポテトは約10 cmの距離から赤外線を当てて測定する

黒いストップウォッチのような機械は「硬度計」。主にタイヤなどの硬さを測るためのものを本実験に転用した。

ためしに太ももを測ってみると、かなりやわらかかった

そして、下に写った黄色く長い機器が「含水率計」。食品中に含まれる水分量を測定することができる機械だ。
2本の電極の間に、測りたい食品をはさんで用いる。

ポテトならこうやって橋をかけるようにして測定できる

実験手法

実験は12連で実施する。
つまり、ポテトを12個購入し、各タイムポイントで1パックから1本のポテトを抜き取って、「温度」「水分量」「硬さ」を計測するのだ。

「ポテト1パックから12本抜けばいいじゃないか」……そうおっしゃる方もいるかも知れない。しかし、今回の条件とは正確性がまるで違う

ポテトの温度を正確に測る場合、紙袋からパックを取り出さないといけないが、その際にポテトは外気に触れて熱を失い、水分を得てしまう

つまり、魔法が解けるリアルな時間を求めるためには、なるべくポテトを袋から出さないように実験条件を組まないといけないのだ。

1パックから12本のポテトを取り出すとき、ポテトを12回も外気にさらすことになり、通常時のポテトの条件を反映しているとはいいがたい。
また、1パックから12本もポテトを抜くとパックがスカスカになってより冷めやすくなってしまう

一方、12パックから1本ずつ抜く方法なら、ポテトの過剰冷却をかなり抑えることができるのだ。

購入して席についた時に食べたポテトを0時点とし、5分ごとに「温度」「水分量」「硬さ」を計測する。
温度はパック全体の温度を、水分量及び硬さはは各パック3本ずつ取り出して測定し、その平均値をパックとしての値とする。ばらつきの影響をうけないようにする配慮だ。

そして、ちゃんと各ポテトの「」も確かめ、こちらは100点満点で点数をつける。これについては0時点(実験開始直後)のポテトを100点として相対的に評価する。
60点を下回ると「魔法が解けた」といっていいだろう。そのタイミングで各パラメータがどのような値になっているのかを確認したいところである。
味はかなり主観的な評価になるが、食品の味に関する実験で官能試験はつきものだ。
ヒトがうまいと感じるかどうかも重要な評価要素なのである。

0時点と12連なので、合計13パックもマクドのポテトを買うことになる。
ちなみに、今回は予算も考慮してMサイズを実験に供する。

あとはこの通り実験を遂行し、「魔法が解ける時間」を求めるだけだ。

実験開始

最寄りのマクドに到着し、さっそくポテトのMサイズを13個注文する。

長い戦いになるため、デカいコーラとナゲットも購入する

そして、ほどなくしてポテトが焼きあがる。
さすがはマクドナルド、迅速かつ的確なサービスだ。

跪くがいい。この「圧力」に。

中を覗くとアツアツチンチンに揚がったポテトがつめこまれている。
袋を少し開いただけで熱気が上がってくるのがわかる。完璧な状態だ。

テーブルに着席直後、さっそく0時点としてのパラメータを収集する。
パックの温度を測り、含水率を計測し、硬度を……

硬度を……

……あれ?

やわらっっっけ!!!!

太ももの11倍やわらかい!!

おそらく、今回購入した硬度計で測ることができるのは「ある程度弾力があるもの」だけなのだろう。
太ももやゴムなど、「やわらかいけどしっかりしている」ものなら計測可能だが、ポテトなどの「もろいもの」では先にモノの方が崩れてしまい正しい硬度が図れないのだ。

……と、いう真実に気づくまで約15秒、すぐさま硬度パラメータの棄却を決断する。
実験はすでに始まっている。当初の予定にしたがって5分ごとに各数値を計測するには、こんなハプニングで足踏みするわけにはいかないのだ。

もとより硬度は扱いが難しそうな数値だった。どうせ計測に成功していたところで持て余していたに違いない。そうにきまってる!

……そうにきまってるさ……!

というわけで、計測する数値は「温度」「含水率」で十分。
つまり、0時点での評価は残すところ味のみ!

では、可及的速やかに実食!!

Perfect……

さすがは購入直後、完璧の状態といってもさしつかえないだろう。

多パック買いした影響か、普段よりもポテトの温度が上がっており、味も数段上がっているような気すらする。

文句なしの100点をつけることにしよう。

さて、ここからは5分おきにポテトを計測しちょびっとずつ試食するというのを繰り返す作業。
ほとんど全部のポテトを冷めさせることになりますがやむをえません。だって、そういう実験なのだから。

そんなこんなで以降は特にハプニングもなく実験は完了し、1時間ポテトを評価し続けた結果を以下の表にまとめた。

以上の各結果をまとめたグラフは下のようになります。

まず、10分から20分にかけて温度の急激な低下含水率の大きな上昇が見られ、それに伴い味の点数も一気に下がっているのがわかる。

そこから徐々にポテトは味を落としていき、ボーダーラインとなる味60点が並んだのが35分時点だった
この35分から、温度は微減、含水率は微増を続け、1時間で31点の味でフィニッシュとなった。

途中のハプニングで硬さを計測することはできなかったが、おおむね温度と含水率が味に影響しているのではないかと考察できる結果となった。

まとめると、マクドで買ってきたポテトは大体35分で魔法が解けてしまうし、1時間もたつと体感1/3くらいの味になってしまうが、保温と乾燥に気を配れば寿命を延ばすことができるかもしれない、というわけである。

また1つ、世界の心理が解き明かされた。

遠くのマクドから家までドライブスルーする機会があったら、魔法瓶なんかを持ち込んでみてはいかがだろう?
まぁ、どれだけ効果があるかはわからないが……。というか、検証したらぜひ私に教えていただきたい。

寒い年の瀬となりますので、皆様どうかお体にお気を付けを。

それでは。

(終)

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