#197 小皇帝と無戸籍児
中国では、増え続ける人口を抑制するために、1970年代から一人っ子政策をとってきた。一人っ子政策とは、1組の夫婦がもうける子供の数を1人に制限する政策である。具体的には、夫婦が2人目以降の子供を出産すると、「社会扶養費」という名目で罰金を支払わなければならない。2人目だと100万円程度だが、3人目以降だと金額が上がる。都市や年収によって金額に差はあるが、8人の子供をもった夫婦に対し4700万円が請求された例もあるという(後に一人っ子政策が廃止され大幅に減額)。
一人っ子政策の結果、中国の人口増加は抑制され、2023年にはインドが人口世界一となり、中国は急激な少子高齢化が進むと予想されている。中国政府は2016年に一人っ子政策を廃止し、すべての夫婦に2人目の子供の出産を認めた。2021年には3人目の子供の出産を認め、育児コストの軽減を目指すなど、政府は少子化対策に乗り出している。
一人っ子政策は少子高齢化以外にもさまざまな社会のひずみを生んだ。
それが「小皇帝」と「無戸籍児」である。
都市部の裕福な家庭の子供は、2人の両親と4人の祖父母から愛情やお金を一手に受けて何不自由なく育てられる。その結果、家庭の中で自由気ままにふるまうようになる「小皇帝」とよばれる一人っ子があらわれるようになった。
一方、貧しい農村の家庭では、2人目以降の子供が生まれると罰金が支払えないため、出生を届けずに密かに育てられる「無戸籍児」が増加したと言われている。こうした子どもたちは「黒孩子(ヘイハイズ)(ブラックチルドレン)」や「闇っ子」とよばれる場合もある。
無戸籍児は文字通り戸籍がないため、一般的な医療や教育を受けるのが困難で、人身売買の温床になっているとも言われている。こうした無戸籍児は中国政府が把握しているだけでも1300万人以上で、実際の数は数千万とも言われている。
【目次】
【参考】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?