#66 なぜ津軽海峡を中国・ロシアの軍艦が通れるのか?
2021年10月19日、津軽海峡を中国とロシアの軍艦が通過した。
その後も、2022年3月にはロシア軍、6月には中国軍の艦艇が津軽海峡を日本海から太平洋へ抜けている。
津軽海峡は北海道と青森県の距離はおよそ20㎞。他国の船が自由に航行できない領海が沿岸から12海里(約22㎞)なので、どう考えても領海侵犯となるのだが、自衛隊や海上保安庁の船ともめたというニュースはない。なぜなのか。
それは、津軽海峡が領海=12海里という取り決めの例外となる海域だからである。実は、日本は次の場所を「特定海域」として領海を3海里までとし、海峡を公海と同じように他国の船が自由に航行することができるとしている。
この「領海法」によって日本は本来持っていた領海を放棄して、他国の船が自由に航行できるようにしたということだ。なぜそのような日本にとって不利になるような法律をつくったのか。
それは、仮に5つの海峡が日本の領海にしてしまうと、「国際海峡」としてのルールが適用されてしまうからだ。国際海峡とは、海運上外国籍の船にとっても重要なルートとなる海峡で、国際法上「通過通航権」(=他国の船・航空機が自由に通行できる権利)が認められる。5つの海峡は国際海峡であるため、もし領海法のルールがなければ、海峡全域を外国籍の船や潜水艦、航空機が自由に航行できるようになってしまうのである。
さらに、領海としてしまうと、もし核兵器を搭載した潜水艦が海峡を通った場合、「核兵器を持ち込ませず」という非核三原則に違反してしまう。領海法が施行された1977年は冷戦中で、核兵器を搭載したアメリカ軍の潜水艦が太平洋から日本海に抜けるルートとして5つの海峡は重要だった。海峡をアメリカ軍の潜水艦が通って非核三原則違反では洒落にならない。そのため、海峡の中央部のみを公海として、非核三原則の適用外としたという事情もある。
とはいえ、中露の軍艦が自由に航行できるのは大問題であるため、領海法の見直しや国際海峡となった時の沿岸国の安全をどう守るかといった議論が必要である。
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